異世界・野獣暴れ旅 ~スローライフに憧れて~

送り狼

文字の大きさ
36 / 84
第3章 鍛練

第60話 ビアンカ・ヨーステン

しおりを挟む
「ビアンカ・ヨーステンってんだ」

 どうしようもないくらいイイ笑顔で女冒険者は自己紹介を始めた。

「ビアンカ・・・さん?」

「ビィでいい」

「仲間入りは断ったんだけど?」

「あんなヤツらと一緒にすんな」

 僕の言葉にやや被せ気味に回答し、少し頬を膨らませて主張する。

 こんな表情もするんだ。

 精悍な雰囲気がコケティッシュなものに変わる。

「・・・では?」

 何故近付くんだと言外に含ませる。

 そんな僕の心情を無視して、カラリとした笑顔で、

「依頼を受けるならソロよりパーティーの方が良いからな」

 と宣った。
 
「誰ともパーティー組む予定は無いんですがね?」

 僕はため息を吐き、腰に手を当ててビアンカを見やる。

 実際、誰かと連れ立って活動する予定はないのだ。

 鍛練のコトもあるし、自身のランクのコトもある。

 だいたいランク最下位をパーティーに誘うとか、どれだけ博愛精神に溢れてるんだ。

 少なくともビアンカに、僕を騙して利用しようと言う裏はなさそうだけど、だからこそ理由が判らない。

「ツれねぇコト言うなよ」

 ガシッと僕の首をロックするように肩を組んでくるビアンカ。

 筋肉質に見えて、ちょっと柔らかいってのは、やっぱり女性だからなんだろうか。

 革鎧で胸の柔らかさは解らないが、やっぱり柔らかいのだと思った。

 ただ、汗臭い。

「そんなコト言われても」

 女性なんだから匂いは気にしろよと思わなくもないが、気にしてどうにかなる職業でもないかと諦める。

「限定パーティーでいいさ」

 ビアンカの提案に、ちょっと興味が出る。

「限定・・・ねぇ」

 限定ってコトは、その時その時でパーティーを解消するってコトだろう。

 自分の都合で活動出来るし、ソロではやれないコトも出来るってのは、実際有難い話だよな。

「そうそう。パーティーと言っても二人だけなんだけどね」

 前向きな僕の雰囲気を察してか、ビアンカが嬉しそうに僕の頭をワシワシと乱す。

「二人だけならペアなんじゃ?」

「二人以上はパーティーなんだよ」

「何で僕なんです?」

 当然であろう質問を、僕はビアンカにぶつける。

「気に入った・・・じゃダメか?」

 少しタメ、漠然とした回答が返ってきた。

 何となく予想出来る答えではあったが。

「ダメって言うか、気に入る要素が解りませんね」

 だからこそ、僕は僕を欲しがる理由が気になっている。

「パーティーを組むには大事な要素なんだけどな。理由は幾つかあるよ」

 あるのか!?いや、あるだろうな。

「教えてもらえます?」

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...