異世界・野獣暴れ旅 ~スローライフに憧れて~

送り狼

文字の大きさ
47 / 84
第3章 鍛練

第71話 世の無情

しおりを挟む
「さ、次、次」

 装備を揃えてご満悦な僕の背中を押して、ビアンカが次の店に案内する。

 店を出る時に、メリッサに手を振って挨拶していた。

 常連客というより、仲の良い友人といった感じだ。

「ハルルー、来たよ~」

 次の店のドアを開けるなり、ビアンカは大きな声で来店を告げた。

 そこはこじんまりとした古着屋だった。

 店の奥が作業場であるトコは他の店と変わらず、二階に住居があるらしい。

 呼ばれたハルルーは、やっぱりビアンカと同年齢の女性で、長い金髪は柔らかい色合いのなかなか綺麗なお姉さんだった。

 ふんわりした雰囲気が優しげに思わせ、見た人に好印象を与えているようだ。

 印象だけならナターシアさんを凌駕するだろうが、存在感とそれに比例しない母性は、ナターシアさんに軍配が上がると僕は見た。

 ビアンカ?

 面倒見の良さならメリッサに勝り、サクラに劣るかな。

 ナターシアさんやハルルーさんと同じ土俵で優劣を決めるなんて、二人に対して失礼だ。

 イイ線いっているとはいえ、ビアンカにそこまでのポテンシャルはない。

 職業柄必要と理解は出来るけど、それ以上を求めるのは欲であり、癖だ。

 個人的嗜好だが、ちっパイは神だが、中が筋肉だったらどうか?

 それはもう、ちっパイではなく、胸板だろう。

 それを望む女性は、すでに女性を棄てているのかも知れない。

 そう言えば、女性冒険者の男性化が社会問題・・・って言うか、冒険者社会問題化していると、風の噂で聞いたとか聞かないとか。

 そりゃ死ぬの生きるのってコトが日常茶飯事に起こる世界で、普通に生活しようなんて、頭の中がお花畑でなきゃ考えないだろう。僕みたいに。

 必然的に男性女性関係無しに、脳筋が育つ環境が整うってわけだ。

 しかし、そんな世界でも、ふわふわぽやぽやな女性もいるし、母性溢れる女性もいる。

 だとすれば、必要以上に筋肉を愛する女性は、やはり仕方ないでは済まされないくらいフェチであると言わざるを得ない。

 そして、女性冒険者の多くにフェチが顕在化しているのならば、それは男性冒険者の行動に起因している。

 つまり、バカで力自慢しか取り柄のない非リア充ブ男が、一緒に行動する女性冒険者を執拗に誘ったり、脅したり、挙げ句の果てに襲ったりするから、女性冒険者は男以上に戦闘力を求めるコトになる。

 自身の尊厳を守るため、お金を稼ぐために冒険者になりながら、冒険者の仲間に襲われお金を奪われ、尊厳を貶められ、下手をすれば殺されるなど、笑い話にもなりはしない。

 僕はビアンカとハルルーを見比べ、世の無情にため息を吐いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...