異世界・野獣暴れ旅 ~スローライフに憧れて~

送り狼

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第4章 冒険者

第84話 ダンジョン一階

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「気を付けてな」

 連絡通路の先、鉄格子の扉を開けて、兵士がそう声を掛けてきた。

 魔物の氾濫を防ぐ、最初の関門であるこの場所は、常時鍵を掛けて閉ざされている。

 異変が起きても対処するためだが、その時はダンジョン内部に潜った冒険者は見捨てられる。

 もしくは門衛が軍を呼んで対応するまで、自力で生き延びるコトを義務付けされる。

「ダンジョンに潜る冒険者にはそうしたコストもあるわけだ」

 ビアンカの話に一つ頷き、僕は鉄格子をくぐり抜けた。

 後ろで扉が閉められた音が微妙に響く。

「あまり良い気持ちはしないものだな」

 と呟くと、ビアンカは、

「そのうち慣れるよ」

 と笑った。

 そりゃそうだろうがと続けようとしたが、僕は黙り込んだ。

 言っても詮ないコトだから。

 しばらくはダンジョン一階を路なりに歩いていたが、何も無い一本道で、興味をそそるものすらなかった。

 ダンジョンに潜る冒険者がすべてこの道を通るため、地面は磨耗して平らになっていた。

 ビアンカは僕を手招きで呼んで、地図を広げる。

「もうすぐ階段があるから、そこから調査を始めるね」

 二階へ降りる階段は、その一ヵ所だけらしい。

 二階以降は入り組んだ迷宮となり、階下へ降りる階段はあちこちにあるという。

 魔物が徘徊しているのも二階以降で、ここからがダンジョン探索の本番となる。

「意識は常に周囲に向け、小さな異変や疑問も無視しない。特に違和感や直感は大事にね」

 ビアンカはすぐにダンジョンの歩き方のレクチャーを始めた。

 現場でないと教え難いコトが中心のようだ。

「微かな風の流れや臭い、皮膚感覚も重要さ」

「ただ歩くんじゃなくてさ、歩数や足音に注意するんだよ」

「罠は地面だけじゃなくて、壁とか天井にもあるからね」

「魔物は色んな所から生まれるんだ。後ろにも気を付けて。今までいなかったからって、これからもいないとは限らないよ」

「水分はこまめに取って。食事は『部屋』で、安全を確保してから」

「排泄はちゃんと穴を掘るんだよ。あと、あまり離れないコト。女性がしてる時は見ない、聞かない、嗅がないがルールだからね」

 大切なコトだけど!

 ホントに大切なコトだけど!!

 女性冒険者が男性冒険者に人気が無いのはコレが原因か!

 そりゃダンジョン内は危険だから、なるべく離れない方が良いに決まっている。

 だからトイレも、ってのも分かる。

 分かるよ!?

 分かるけどさ!

「大丈夫さ。信用してる」

「大丈夫じゃねぇよ!」

 主に僕の精神衛生上!

 場違いなほど爽やかな笑顔のビアンカに、僕は思わずツッコんだ。
 
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