異世界・野獣暴れ旅 ~スローライフに憧れて~

送り狼

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第4章 冒険者

第93話 受付嬢

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「二階層で新路開通があった。ゴブリンがけっこうな数溢れたよ。私たちは事前情報無しで対処するしかなかった。ギルドは予兆を把握してなかったのか?」

 依頼書と地図を見比べ、ミーシャさんは表情を青くする。

「ちょっと失礼します」

 ミーシャさんが席を立ち、処理済みの依頼書の確認のため奥の部屋に入って行った。

 しばらくして依頼書と地図を持って戻ってくる。

 依頼書の裏には持ち込まれた魔石の数と種類が書き込まれ、処理印が捺されていた。

 過去十件の依頼書を確認し、ミーシャは討伐数の減少を読み取る。

「申し訳ありません。こちらのミスでご迷惑をお掛けしてしまいました」

「情報の有り無しで対応が違うのは分かっているだろう?ギルドがそんなんじゃ、安心して依頼も受けらんねぇよ」

「はい。改めて謝罪致します。申し訳ございませんでした」

 再び頭を深く下げるミーシャさんに、ビアンカはため息を吐いた。

「分かったから。今回の処理を頼むよ」

「ありがとうございます。それでは受け付け致します。今回は依頼報告と魔石買い取りで宜しかったでしょうか?」

「あぁ、依頼はまだ継続中さね。討伐証明部位と魔石の買い取りを頼む」

 ビアンカはパンパンに膨れた革袋を二つ、カウンターの上に置いた。

 期間依頼の場合、依頼報酬は完了後となるが、経過報告と魔石買い取りは常時受け付けてもらえる。

 僕のような貧乏人に優しいシステムである。

 また、魔石以外にも、素材の買い取りもしてもらえ、討伐証明部位も規定金額で換金してもらえる。

 ゴブリンの証明部位は安く、微々たるもんだが、有ると無いとでは違うものだ。

「-っ!?こ、これ・・・は?」

「討伐証明部位と魔石」

 ミーシャさんの笑顔がひきつる。

「今日一日、お二人で・・・?」

「いや、討伐はシチロー一人さね。私は証明部位を切って魔石を拾っただけ」

 肩をすくめて笑うビアンカに、ミーシャは喫茶スペースで溶けている僕を見て、声もなく笑っていた。

「し、少々お時間を頂きます・・・」

 トレイに革袋を載せ、担当部所に引き渡すと、ミーシャはビアンカに木札を手渡した。

「手続きが完了次第お呼び致しますので、その時お渡しください」

 ビアンカはミーシャに礼を言い、僕の所へやってきた。

 視線の先で、ミーシャが件の受付嬢を誘い、奥の部屋に連れて行ったのが見えた。

 程なくして、スパコーンと軽い音がギルド内に響き渡る。

 あぁ、あの受付嬢が処理していたんだなと、僕は何とはなしに思った。
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