異世界・野獣暴れ旅 ~スローライフに憧れて~

送り狼

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第4章 冒険者

第95話 昇格

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 依頼達成困難の申請がすんなり通ったのは、ダンジョンの精密探索の依頼がのべつまくなしの状態で許可させたからである。

 あの受付嬢がまたやってくれたのだと、ミーシャさんがぼやいていた。

 何の確認も調整もせず、ポンポンと許可していたらしい。

 僕たちにしてみれば、ギルドに依頼達成の邪魔をされているって感じになるし、只でさえ依頼受注時のギルドの不手際も絡み、中途解約もやむ無しとギルドが判断した結果である。

 もっともギルドは、状況と功績を加味し、と言葉を取り繕っていたが。

 ミーシャさんはすごく珍しい事態だと言い、その原因に乾いた笑いを浮かべた。

 教育係を任されているのだろうか?気苦労が絶えないんだろうな。

 僕は心の中で静かに手を合わせた。

「で、これからどうする?」

 喫茶スペースのテーブルに着き、僕は石札を弄ぶ。

 依頼は達成困難の申請をしたにも関わらず、僕は何故か昇格してしまった。

 通常の昇格は、ギルドへの貢献と本人の実力、指導者の推薦などを包括的に考慮して行われる。

 依頼の受注回数や内容、達成率、クレームの有無がギルドの貢献度となり、昇格試験として指導役冒険者と手合わせし、実力を測るのだ。

 指導役の推薦は昇格試験の免除くらいの役には立つらしい。

 僕の場合、新通路発見と魔物溢れの処理が評価され、ビアンカが昇格問題無しを進言してくれたからの昇格だった。

 とはいえ、石である。

 木と比べ、鉱石って意味ではマシになったんだろうけど、石である。

 木札なんて蔑称を言われるコトもなくなるだろうけど、石である。

 ランクはE。

 新人から駆け出し冒険者になっただけ。

 ちなみに、新人と駆け出しの違いは、単に経験の問題でしかない。

 ランクFの冒険者も駆け出しである。

 その中で経験も無く、ギルドに入ったばかりの冒険者を新人と言うに過ぎない。

 ランクFのまま一年も経てば、誰でも新人から脱け出すものだ。

 もっとも入って一年もランクが上がらないヤツは、冒険者として先はないのだろうけど。

 僕はかなり早い昇格となったけど、運が良かったんだろうな。

 次は鉄。金属カード。

 先は長い。

 まぁ一生懸命ランク上げするつもりもないけどね。

 あくまでこの世界に慣れるための冒険者稼業で、僕の本質は兵法家(見習い)であり、傍観者だ。

 ぶっちゃけ冒険者をする必要もないくらいだ。

 でも昨日はちょっと楽しかった。

 冒険者、頑張ってみようかな?

 
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