異世界・野獣暴れ旅 ~スローライフに憧れて~

送り狼

文字の大きさ
82 / 84
第5章 新興勢力

第106話 司祭

しおりを挟む
「辻褄は合うな。流れは?」

「司祭に引き返しすように使いを出した。ムリして来ればクロだな。その場合は村に引き留め時間を稼ぐ。おそらく襲撃のタイミングは司祭の選別を伝えられた日の夜半過ぎ」

「つまり、選別するまでハンターは動かないと?」

 エランが頷く。

「判った。出来るだけ司祭を帰さないコトと、選別の結果をハンターに伝えさせないの二つでいいな?」

「それまで盗賊団に狙われている村を演じる」

「よし。今晩はディオンの家に詰めていよう」

「それは俺が」

 ディオンは弟の名前だ。エランは自分の責任として、ハンターの襲撃が予想される弟の家で姪を守護するつもりだった。

「そりゃ不自然だろう。わしが泊まる分にはおかしくあるまいが」

 確かに父親が息子の家に泊まることに不自然はない。しかし、父親には自分の家族を守ってほしいとエランは考えていた。

「司祭を引き留められれば用心で済む。お前は司祭に繋ぎを取らせるな」

 明日には救援もあろうと、父親はエランの肩を叩いて笑った。さ

 その時、村が騒がしくなったコトに気付いた。

 どうやら司祭が来たらしい。

「クロ・・・だな」

 エランと父親は頷き合い、何事もなかったように騒ぎの中心に向かう。

「ようこそお出で頂きありがとうございます。ですが、宜しかったのですか?」

「もちろんです。洗礼の儀は何ものにも代えがたい、大切な事ですので、盗賊ごときで二の足を踏んでは司祭の名が廃ります」

 村長と和やかに歓談している司祭に、エランは遠慮がちに声をかけた。

 すかさず村長がエランを司祭に紹介する。

「おや、貴方が?ご心配頂きましたが、多少の障害など、我らには試練ですよ」

「危険をおして来て頂いたのです。感謝のしようもありません」

 あくまでも司祭の心配と安堵を演出し、エランは頭を下げて歓迎する振りをした。

「早速洗礼の儀を執り行いましょう。今日中に戻らねばなりませんからね」

「そんな!せっかく足を運んで頂いたのに、歓待させていただけないとは。村周辺の状況のコトもあります。本日はお泊まり頂き、明日村の自警団が護衛して御送り致します」

 エランは大袈裟に驚き、村長に目配せする。

「まさに。何もない村ですが、精一杯歓待致しますゆえ、今宵はごゆるりとお過ごしください」

「小さな村ですので、聖句の一節なりとご教授いただければ幸いです」

 周囲を囲われるような歓迎に、司祭は一瞬、苦虫を噛んだような表情を見せるが、すぐに取り繕って困ったような顔をする。

「これこれ、そんなに詰め寄られたのでは司祭様がご迷惑します」

 村長の声に、司祭は安堵のため息を洩らす。

「儀式が終了して帰ると、途中で暗くなってしまいます。遠慮なさらず、今日はお泊まりください」

「貴方は?」

「今日、洗礼の儀を施して頂く娘の祖父です。どうか宜しくお願い致します」

 

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

無能妃候補は辞退したい

水綴(ミツヅリ)
ファンタジー
貴族の嗜み・教養がとにかく身に付かず、社交会にも出してもらえない無能侯爵令嬢メイヴィス・ラングラーは、死んだ姉の代わりに15歳で王太子妃候補として王宮へ迎え入れられる。 しかし王太子サイラスには周囲から正妃最有力候補と囁かれる公爵令嬢クリスタがおり、王太子妃候補とは名ばかりの茶番レース。 帰る場所のないメイヴィスは、サイラスとクリスタが正式に婚約を発表する3年後までひっそりと王宮で過ごすことに。 誰もが不出来な自分を見下す中、誰とも関わりたくないメイヴィスはサイラスとも他の王太子妃候補たちとも距離を取るが……。 果たしてメイヴィスは王宮を出られるのか? 誰にも愛されないひとりぼっちの無気力令嬢が愛を得るまでの話。 この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

最弱攻撃力スキルが実は最兇だったところで俺が戦いたくないのは変わらない

だんぞう
ファンタジー
2025年8月8日――今思えばあの日が人類の分岐点だった。たくさんの出会いも、別れも、今は全て遠い向こう側。

50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく

かわさきはっく
ファンタジー
就職氷河期を生き抜き、数々の職を転々とした末に無職となった50代の俺。 ある日、病で倒れ、気づけば異世界のエルフの賢者に転生していた!? 俺が転生したのは、高位エルフの秘術の失敗によって魂が取り込まれた賢者の肉体。 第二の人生をやり直そうと思ったのも束の間、俺の周囲は大騒ぎだ。 「導き手の復活か!?」「賢者を語る偽物か!?」 信仰派と保守派が入り乱れ、エルフの社会はざわつき始める。 賢者の力を示すため、次々と課される困難な試練。 様々な事件に巻き込まれながらも、俺は異世界で無双する! 異世界ざわつき転生譚、ここに開幕! ※話数は多いですが、一話ごとのボリュームは少なめです。 ※「小説家になろう」「カクヨム」「Caita」にも掲載しています。

悪役令嬢まさかの『家出』

にとこん。
恋愛
王国の侯爵令嬢ルゥナ=フェリシェは、些細なすれ違いから突発的に家出をする。本人にとっては軽いお散歩のつもりだったが、方向音痴の彼女はそのまま隣国の帝国に迷い込み、なぜか牢獄に収監される羽目に。しかし無自覚な怪力と天然ぶりで脱獄してしまい、道に迷うたびに騒動を巻き起こす。 一方、婚約破棄を告げようとした王子レオニスは、当日にルゥナが失踪したことで騒然。王宮も侯爵家も大混乱となり、レオニス自身が捜索に出るが、恐らく最後まで彼女とは一度も出会えない。 ルゥナは道に迷っただけなのに、なぜか人助けを繰り返し、帝国の各地で英雄視されていく。そして気づけば彼女を慕う男たちが集まり始め、逆ハーレムの中心に。だが本人は一切自覚がなく、むしろ全員の好意に対して煙たがっている。 帰るつもりもなく、目的もなく、ただ好奇心のままに彷徨う“無害で最強な天然令嬢”による、帝国大騒動ギャグ恋愛コメディ、ここに開幕!

覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―

Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

処理中です...