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第5章 新興勢力
第106話 司祭
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「辻褄は合うな。流れは?」
「司祭に引き返しすように使いを出した。ムリして来ればクロだな。その場合は村に引き留め時間を稼ぐ。おそらく襲撃のタイミングは司祭の選別を伝えられた日の夜半過ぎ」
「つまり、選別するまでハンターは動かないと?」
エランが頷く。
「判った。出来るだけ司祭を帰さないコトと、選別の結果をハンターに伝えさせないの二つでいいな?」
「それまで盗賊団に狙われている村を演じる」
「よし。今晩はディオンの家に詰めていよう」
「それは俺が」
ディオンは弟の名前だ。エランは自分の責任として、ハンターの襲撃が予想される弟の家で姪を守護するつもりだった。
「そりゃ不自然だろう。わしが泊まる分にはおかしくあるまいが」
確かに父親が息子の家に泊まることに不自然はない。しかし、父親には自分の家族を守ってほしいとエランは考えていた。
「司祭を引き留められれば用心で済む。お前は司祭に繋ぎを取らせるな」
明日には救援もあろうと、父親はエランの肩を叩いて笑った。さ
その時、村が騒がしくなったコトに気付いた。
どうやら司祭が来たらしい。
「クロ・・・だな」
エランと父親は頷き合い、何事もなかったように騒ぎの中心に向かう。
「ようこそお出で頂きありがとうございます。ですが、宜しかったのですか?」
「もちろんです。洗礼の儀は何ものにも代えがたい、大切な事ですので、盗賊ごときで二の足を踏んでは司祭の名が廃ります」
村長と和やかに歓談している司祭に、エランは遠慮がちに声をかけた。
すかさず村長がエランを司祭に紹介する。
「おや、貴方が?ご心配頂きましたが、多少の障害など、我らには試練ですよ」
「危険をおして来て頂いたのです。感謝のしようもありません」
あくまでも司祭の心配と安堵を演出し、エランは頭を下げて歓迎する振りをした。
「早速洗礼の儀を執り行いましょう。今日中に戻らねばなりませんからね」
「そんな!せっかく足を運んで頂いたのに、歓待させていただけないとは。村周辺の状況のコトもあります。本日はお泊まり頂き、明日村の自警団が護衛して御送り致します」
エランは大袈裟に驚き、村長に目配せする。
「まさに。何もない村ですが、精一杯歓待致しますゆえ、今宵はごゆるりとお過ごしください」
「小さな村ですので、聖句の一節なりとご教授いただければ幸いです」
周囲を囲われるような歓迎に、司祭は一瞬、苦虫を噛んだような表情を見せるが、すぐに取り繕って困ったような顔をする。
「これこれ、そんなに詰め寄られたのでは司祭様がご迷惑します」
村長の声に、司祭は安堵のため息を洩らす。
「儀式が終了して帰ると、途中で暗くなってしまいます。遠慮なさらず、今日はお泊まりください」
「貴方は?」
「今日、洗礼の儀を施して頂く娘の祖父です。どうか宜しくお願い致します」
「司祭に引き返しすように使いを出した。ムリして来ればクロだな。その場合は村に引き留め時間を稼ぐ。おそらく襲撃のタイミングは司祭の選別を伝えられた日の夜半過ぎ」
「つまり、選別するまでハンターは動かないと?」
エランが頷く。
「判った。出来るだけ司祭を帰さないコトと、選別の結果をハンターに伝えさせないの二つでいいな?」
「それまで盗賊団に狙われている村を演じる」
「よし。今晩はディオンの家に詰めていよう」
「それは俺が」
ディオンは弟の名前だ。エランは自分の責任として、ハンターの襲撃が予想される弟の家で姪を守護するつもりだった。
「そりゃ不自然だろう。わしが泊まる分にはおかしくあるまいが」
確かに父親が息子の家に泊まることに不自然はない。しかし、父親には自分の家族を守ってほしいとエランは考えていた。
「司祭を引き留められれば用心で済む。お前は司祭に繋ぎを取らせるな」
明日には救援もあろうと、父親はエランの肩を叩いて笑った。さ
その時、村が騒がしくなったコトに気付いた。
どうやら司祭が来たらしい。
「クロ・・・だな」
エランと父親は頷き合い、何事もなかったように騒ぎの中心に向かう。
「ようこそお出で頂きありがとうございます。ですが、宜しかったのですか?」
「もちろんです。洗礼の儀は何ものにも代えがたい、大切な事ですので、盗賊ごときで二の足を踏んでは司祭の名が廃ります」
村長と和やかに歓談している司祭に、エランは遠慮がちに声をかけた。
すかさず村長がエランを司祭に紹介する。
「おや、貴方が?ご心配頂きましたが、多少の障害など、我らには試練ですよ」
「危険をおして来て頂いたのです。感謝のしようもありません」
あくまでも司祭の心配と安堵を演出し、エランは頭を下げて歓迎する振りをした。
「早速洗礼の儀を執り行いましょう。今日中に戻らねばなりませんからね」
「そんな!せっかく足を運んで頂いたのに、歓待させていただけないとは。村周辺の状況のコトもあります。本日はお泊まり頂き、明日村の自警団が護衛して御送り致します」
エランは大袈裟に驚き、村長に目配せする。
「まさに。何もない村ですが、精一杯歓待致しますゆえ、今宵はごゆるりとお過ごしください」
「小さな村ですので、聖句の一節なりとご教授いただければ幸いです」
周囲を囲われるような歓迎に、司祭は一瞬、苦虫を噛んだような表情を見せるが、すぐに取り繕って困ったような顔をする。
「これこれ、そんなに詰め寄られたのでは司祭様がご迷惑します」
村長の声に、司祭は安堵のため息を洩らす。
「儀式が終了して帰ると、途中で暗くなってしまいます。遠慮なさらず、今日はお泊まりください」
「貴方は?」
「今日、洗礼の儀を施して頂く娘の祖父です。どうか宜しくお願い致します」
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