2 / 84
第1章 推参!
第1話 マジ勘弁してください
しおりを挟む
鬼の血も赤いんだ。
などと益体もなく考えていると、崩れ落ちた鬼の身体の向こうに、誰かが佇んでいるのが見えた。
長い金髪をポニテにした、スラリと背が高い・・・おぉう、エルフだ。
多分、エルフだろう。
耳も長くて尖ってるし。
エルフはやっぱり美形だった。
男か女かも判断できない。
とりあえず胸はぺったんこである。
いやいや、そうじゃなくってさ!
そのエルフさんは、右手に持った刀を血振りして肩に担ぎ、訝しげに僕を見た。
「・・・楽しそうだな」
は?
指で頬を掻きながらの第一声である。
この声でエルフさんが男と判明。
て言うか、何言ってんだ、この人?
鬼の血を頭から被って怯える人を見て、言うことがソレか?
・・・ん?
ていうか、日本語!?
「日本人・・・ですか?」
落ち着いて観察すると、エルフさんは浴衣っぽい着物を着ていた。
腰には黒塗りの刀の鞘を差し、左手を懐に入れ、ポリポリと掻いている。
ポリポリと・・・。
あぁ、これはあれだ。やっぱり夢だ。
現実に鬼が存在するハズがないし、エルフな侍がいるハズない。ましてや風情も緊張感もなくポリポリする訳がない。
僕の趣味が融合してこんなイミフな夢を作りあげたのだろう。
太秦で自分が侍になったと信じている外国人を見ているような、そんな残ね・・・違和感がハンパない。
ということは、僕は死なずに済んでるってコトだな。
「はぁ? 日本人? お前も日本人なのか?」
「当たり前じゃないですか」
自分の中で納得がいったコトから、僕には余裕が出ていた。
にこやかにエルフさんに応える。
「そうか。何が当たり前かは知らんが・・・まぁ頑張れ」
エルフさんは刀を鞘に差し戻し、一言残して歩き出した。
あからさまに厄介事から離れようとしている態度に、ちょっとカチンときた。
「僕が日本人だったら何なんですか」
「・・・」
僕はエルフさんの後を追って話しかけるが、エルフさんが歩みを止めるコトはなかった。
「ちょっと待ってください、エルフさん」
「・・・」
むしろ歩く速度が上がりやがった!
「エールーフーさーん!!」
「うるせーよ!!」
エルフさんがしびれを切らせて振り返る。
「無視するコトはないじゃないですか」
「寄るな。ヘンタイが移る」
ビシッと僕を指差し、エルフさんがのたまう。
「はぁ?誰がヘンタイだ!」
「股関に粗末な逸物を晒しながら、ヘンタイではないと言い張るかよ? ソレがオレのなら、恥ずかしくて真っ先に隠すがな」
エルフさんの差した指が下に曲がり、口の端が弛む。
僕は曲がった指先を目で追い、ソレを見付けた。
詳しくは描写出来ないアレを・・・。
「・・・おぉう」
マジ勘弁してください。
「佐野七郎ってのか」
インベントリから服と下着を借り、僕はようやく落ち着いた。
服は和服、下着は褌だが、マッパよりはマシだ。
ブレないね、僕の夢は。
鬼やエルフがいるファンタジーの世界で和服で日本刀とか。
起きたら彼女に教えてあげよう。臨死体験はファンタジーですって。
彼女がいい具合に作品にしてくれるかも知れないからね。
彼女は自分で書いてたりするから。
あぁ、ラノベと言えばインベントリです。サラッと流したけど。
何でも入る、いくらでも入る、ファンタジー作品御用達の、時間固定に空間隔離のあのインベントリ(無限収納)です。
いちいち驚くのも疲れるので、そういう異世界あるあるは、すべて受け入れる方向で妥協しまくりました。
とりあえず自己紹介をして、お互いに歩み寄ろうとなった訳だが、何だか僕の名前にえらく食い付くエルフさんだった。
日本人の名前が珍しいのか?
「佐野が苗字で七郎が名前にな・・・」
「知ってる」
親切で教えてあげようとしたのに、間髪入れずに打ち捨てられてしまった。
「いや、すまんな。佐野の名は古い馴染みの名でな。しかも七郎。これはオレの小さい時の名前であった。つい懐かしくてな」
エルフさんは小さく笑うと、
「今はクレイユ・エムリス・アリハザルト・コーダと名乗っている。親しい者はクレイと呼んでいる」
「それじゃクレイ・・・」
長ぇよ!ってツッコミは喉の奥に押し込め、僕はクレイの言葉の意味を問おうとしたが、
「親しい者は、だ」
と、愛称での呼称をソッコー拒否られた。
「んじゃコーダ」
イラッとしても僕のせいじゃないだろう。
「年上に対する礼儀すら持てないのか?」
年上どころか、すでに老害レベルの難癖である。
「話が進まないだろ、元七郎」
「ほぉう」
立ち止まり、ゆっくりと振り向く元七郎のクレイが刀を抜く。
僕はその所作を目の端に捉えながら、まっすぐ元七郎のクレイの目を睨み付けた。
夢の中だと大胆になれるのだ。
ムスッとしていた元七郎のクレイが、不意にニヤリと笑う。
元七郎のクレイの刀の切っ先が、いつの間にか首筋に当てられていた。
まったく見えなかったんですけど・・・。
「豪胆なものよ」
刀を引くと、鞘に納めながらカラカラと笑う。
いやいや、見えなかったんだって。
再びすたすたと歩き始めた元七郎のクレイの後を追・・・うコトが出来なかった。
膝が笑うどころか、絶賛爆笑中で、立てているコトすら奇跡の範ある。
夢の中でも怖いモンは怖いわっ!
「どうした、七郎・・・」
十歩ほど先で、元七郎のクレイが踵を返す。
しばし僕を見ると、それはもう楽しそうに歩き出した。
豪胆さの正体があっさりバレた感じ?
などと益体もなく考えていると、崩れ落ちた鬼の身体の向こうに、誰かが佇んでいるのが見えた。
長い金髪をポニテにした、スラリと背が高い・・・おぉう、エルフだ。
多分、エルフだろう。
耳も長くて尖ってるし。
エルフはやっぱり美形だった。
男か女かも判断できない。
とりあえず胸はぺったんこである。
いやいや、そうじゃなくってさ!
そのエルフさんは、右手に持った刀を血振りして肩に担ぎ、訝しげに僕を見た。
「・・・楽しそうだな」
は?
指で頬を掻きながらの第一声である。
この声でエルフさんが男と判明。
て言うか、何言ってんだ、この人?
鬼の血を頭から被って怯える人を見て、言うことがソレか?
・・・ん?
ていうか、日本語!?
「日本人・・・ですか?」
落ち着いて観察すると、エルフさんは浴衣っぽい着物を着ていた。
腰には黒塗りの刀の鞘を差し、左手を懐に入れ、ポリポリと掻いている。
ポリポリと・・・。
あぁ、これはあれだ。やっぱり夢だ。
現実に鬼が存在するハズがないし、エルフな侍がいるハズない。ましてや風情も緊張感もなくポリポリする訳がない。
僕の趣味が融合してこんなイミフな夢を作りあげたのだろう。
太秦で自分が侍になったと信じている外国人を見ているような、そんな残ね・・・違和感がハンパない。
ということは、僕は死なずに済んでるってコトだな。
「はぁ? 日本人? お前も日本人なのか?」
「当たり前じゃないですか」
自分の中で納得がいったコトから、僕には余裕が出ていた。
にこやかにエルフさんに応える。
「そうか。何が当たり前かは知らんが・・・まぁ頑張れ」
エルフさんは刀を鞘に差し戻し、一言残して歩き出した。
あからさまに厄介事から離れようとしている態度に、ちょっとカチンときた。
「僕が日本人だったら何なんですか」
「・・・」
僕はエルフさんの後を追って話しかけるが、エルフさんが歩みを止めるコトはなかった。
「ちょっと待ってください、エルフさん」
「・・・」
むしろ歩く速度が上がりやがった!
「エールーフーさーん!!」
「うるせーよ!!」
エルフさんがしびれを切らせて振り返る。
「無視するコトはないじゃないですか」
「寄るな。ヘンタイが移る」
ビシッと僕を指差し、エルフさんがのたまう。
「はぁ?誰がヘンタイだ!」
「股関に粗末な逸物を晒しながら、ヘンタイではないと言い張るかよ? ソレがオレのなら、恥ずかしくて真っ先に隠すがな」
エルフさんの差した指が下に曲がり、口の端が弛む。
僕は曲がった指先を目で追い、ソレを見付けた。
詳しくは描写出来ないアレを・・・。
「・・・おぉう」
マジ勘弁してください。
「佐野七郎ってのか」
インベントリから服と下着を借り、僕はようやく落ち着いた。
服は和服、下着は褌だが、マッパよりはマシだ。
ブレないね、僕の夢は。
鬼やエルフがいるファンタジーの世界で和服で日本刀とか。
起きたら彼女に教えてあげよう。臨死体験はファンタジーですって。
彼女がいい具合に作品にしてくれるかも知れないからね。
彼女は自分で書いてたりするから。
あぁ、ラノベと言えばインベントリです。サラッと流したけど。
何でも入る、いくらでも入る、ファンタジー作品御用達の、時間固定に空間隔離のあのインベントリ(無限収納)です。
いちいち驚くのも疲れるので、そういう異世界あるあるは、すべて受け入れる方向で妥協しまくりました。
とりあえず自己紹介をして、お互いに歩み寄ろうとなった訳だが、何だか僕の名前にえらく食い付くエルフさんだった。
日本人の名前が珍しいのか?
「佐野が苗字で七郎が名前にな・・・」
「知ってる」
親切で教えてあげようとしたのに、間髪入れずに打ち捨てられてしまった。
「いや、すまんな。佐野の名は古い馴染みの名でな。しかも七郎。これはオレの小さい時の名前であった。つい懐かしくてな」
エルフさんは小さく笑うと、
「今はクレイユ・エムリス・アリハザルト・コーダと名乗っている。親しい者はクレイと呼んでいる」
「それじゃクレイ・・・」
長ぇよ!ってツッコミは喉の奥に押し込め、僕はクレイの言葉の意味を問おうとしたが、
「親しい者は、だ」
と、愛称での呼称をソッコー拒否られた。
「んじゃコーダ」
イラッとしても僕のせいじゃないだろう。
「年上に対する礼儀すら持てないのか?」
年上どころか、すでに老害レベルの難癖である。
「話が進まないだろ、元七郎」
「ほぉう」
立ち止まり、ゆっくりと振り向く元七郎のクレイが刀を抜く。
僕はその所作を目の端に捉えながら、まっすぐ元七郎のクレイの目を睨み付けた。
夢の中だと大胆になれるのだ。
ムスッとしていた元七郎のクレイが、不意にニヤリと笑う。
元七郎のクレイの刀の切っ先が、いつの間にか首筋に当てられていた。
まったく見えなかったんですけど・・・。
「豪胆なものよ」
刀を引くと、鞘に納めながらカラカラと笑う。
いやいや、見えなかったんだって。
再びすたすたと歩き始めた元七郎のクレイの後を追・・・うコトが出来なかった。
膝が笑うどころか、絶賛爆笑中で、立てているコトすら奇跡の範ある。
夢の中でも怖いモンは怖いわっ!
「どうした、七郎・・・」
十歩ほど先で、元七郎のクレイが踵を返す。
しばし僕を見ると、それはもう楽しそうに歩き出した。
豪胆さの正体があっさりバレた感じ?
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる