3 / 84
第1章 推参!
第2話 状況把握
しおりを挟む
なんのかんの言って、僕はクレイに気に入られたらしい。
近くの町まで案内してくれるようだ。
歩いて二日の距離をテクテクと。
ざけんな。現代日本人の脚力を過大評価すんなよ。二日間も歩きっぱって何の拷問だよ。
ちなみに、クレイの脚力で二日な。
すぐにバテるは、血豆が破れるは、乳酸たまりまくりですわ。
しかも基本的にクレイは鬼で、僕の有り様をニマニマと観察するだけで、一切の手出しをしないし、僕自身も助けてとは言わなかった。
悔しいから!
合間合間の休憩の暇潰しに、僕の身の上を語っただけで、クレイはこの世界の常識と自身のコトを教えてくれた。
クレイはエルフには珍しい剣術家で、都合が良いという理由で冒険者として活動しているらしい。
僕と出会ったのは、依頼として追っていた鬼を屠った直後になる。
元々日本人の転生者だとアッサリ告げられのは驚いたが、納得もしてしまった。
ただし、時代が僕とは違うようで、話が噛み合わない事も多かった。
明治時代以降、日本は急速に近代化したため、それ以前とは価値観も常識も環境も、まったくの別物になった弊害であろう。
明治以前にお亡くなりになった人が、明治以降に生まれ変わって記憶が残っていれば、日本人は外国人に見えるだろうな。
しかし、
「今の将軍は何代目だ?」
の質問には笑ってしまった。
ちなみに、クレイが言う将軍は徳川家のコトで、クレイの前世は三代目家光の頃だったらしい。
おぉう、歴史が目の前にいる。
クレイは僕以外の元日本人にも会ったコトがあるらしいが、その人らは歴史にはそれほど詳しくなかったようだ。
話を聞いてみれば、本当に日本人かと疑ってしまいたくなるくらい、歴史を知らないヤツもいたらしい。
僕はむしろ、歴史に興味がない日本人は多いからと納得したんだが、クレイに取って歴史とは、自身の先祖の話が基本だと言う。
先祖の誰それが将軍の旗下で活躍したとか、どこそこを賜ったとか、これこれこういうコトを成し遂げたとか、つまりは先祖自慢だな。
逆にそれすらも知らずに何故自分を誇れるのかと驚いていた。
誇りとは先祖自慢に準拠するものらしい。
あぁ、そうか。自分の能力と環境のみがアイデンティティーだから、現代日本人は存在が歪になってきているのか。
妙に納得してしまった。
その後、この世界の通貨価値と歴史日本との通貨比較を通し、現代日本の通貨比較をするという、訳のわからないコトをやったり、通貨変換の歴史と素材と価値に盛り上がったりしながら、僕たちは町を目指した。
目指す街の名前は【ソドリーム】。
アルハンム王国サザビー辺境伯領の二級都市である。
アルハンム王国は大陸の西南部に位置する新興王国で、元々は大陸中央の神聖メリザーク帝国の一地域だったらしい。
それが帝国の継承問題で独立し、帝国のいちゃもんを跳ね返し現在に至る。
正直な話、クレイは半端なく強かった。
移動しながら、ひょいと右手を振ると、角があるウサギに小柄が命中してたり、緑色の斑で豹っぽい、空気を読めない魔物の首を、刀の一振りで屠ったり、突然行き手を遮った三人の汚いオッサンたちを、側を通り抜けながら抜き手も見せずに斬り捨てたりしていた。
僕はクレイが行動をするまで、いや、結果を理解するまで、何も分からなかった。
角のウサギと斑の豹は、野宿の時美味しくいただきました。オッサン三人は食えないので、そのまま捨て置きました。
僕のファンタジー脳が、アンデッドを心配するが、
「首斬ってるから大丈夫」
と流されてしまった。
盗賊の類いは懸賞金がかかっている場合もあるので、通常は首を持って関係機関に報告するらしいが、クレイは面倒だからと捨て去っていた。
殺伐とした世界だと呟くと、「そうか? オレの時代もそんなもんだったぞ?」と嘯く。
ちなみに、クレイの前世は戦国の世醒めやらぬ時代であるが、詳しい話はまだしてくれない。
人のコトは根掘り葉掘り聞いてたのにな!
そうやって暇潰しの会話の内容とか、道すがら漏れ聞く話しを纏めると、そういうコトらしい。
自分からは名乗らないものの、クレイは多分、あの人の生まれ変わりなんだろうと推測する。
僕は空気を読める人だから、本人が喋らないコトを詳しく聞かないし、得意げに推論は語らない。特に周囲に誰も居ない場所ではね。
そういうのはもう少しクレイの人となりが分かるか、街に入ってからでいい。
少なくとも、今斬り捨てられたら、誰も僕の存在は知らないまま消し去られるだけだからね。
あと、この三日間で、僕は現在の状況が夢ではなく、転移なり転生であると結論付けていた。
転移にしては死んだ感覚は拭えず、転生にしては死んだ年齢のままってのが不可解ではあるが。
ましてや白い部屋だの神様を自称する幼女だのに会ったコトもない。
何から何まで情報が少なすぎだろ、この世界ってヤツは。
とりあえずクレイの庇護下に入ったコトで、速死亡のクソゲー展開は回避出来た。
ていうか、クレイがいなければ、間違いないなくクソゲー展開に突入していたな。
「見えたぞ」
クレイにそう言われ、僕は視線を上げた。
遠くにちんまりと、茶色い何かが見えた。
遠すぎて分かんねぇよ!
クレイにソドリームだと教えられて半日。
僕はようやく、それが壁に囲まれた城塞都市だと理解出来た。
そこからまた二時間かけて、僕たちは城門の前に立つコトが出来た。
日は暮れ、門は閉じていたが。
街を目の前に、今日も野宿が確定した。
近くの町まで案内してくれるようだ。
歩いて二日の距離をテクテクと。
ざけんな。現代日本人の脚力を過大評価すんなよ。二日間も歩きっぱって何の拷問だよ。
ちなみに、クレイの脚力で二日な。
すぐにバテるは、血豆が破れるは、乳酸たまりまくりですわ。
しかも基本的にクレイは鬼で、僕の有り様をニマニマと観察するだけで、一切の手出しをしないし、僕自身も助けてとは言わなかった。
悔しいから!
合間合間の休憩の暇潰しに、僕の身の上を語っただけで、クレイはこの世界の常識と自身のコトを教えてくれた。
クレイはエルフには珍しい剣術家で、都合が良いという理由で冒険者として活動しているらしい。
僕と出会ったのは、依頼として追っていた鬼を屠った直後になる。
元々日本人の転生者だとアッサリ告げられのは驚いたが、納得もしてしまった。
ただし、時代が僕とは違うようで、話が噛み合わない事も多かった。
明治時代以降、日本は急速に近代化したため、それ以前とは価値観も常識も環境も、まったくの別物になった弊害であろう。
明治以前にお亡くなりになった人が、明治以降に生まれ変わって記憶が残っていれば、日本人は外国人に見えるだろうな。
しかし、
「今の将軍は何代目だ?」
の質問には笑ってしまった。
ちなみに、クレイが言う将軍は徳川家のコトで、クレイの前世は三代目家光の頃だったらしい。
おぉう、歴史が目の前にいる。
クレイは僕以外の元日本人にも会ったコトがあるらしいが、その人らは歴史にはそれほど詳しくなかったようだ。
話を聞いてみれば、本当に日本人かと疑ってしまいたくなるくらい、歴史を知らないヤツもいたらしい。
僕はむしろ、歴史に興味がない日本人は多いからと納得したんだが、クレイに取って歴史とは、自身の先祖の話が基本だと言う。
先祖の誰それが将軍の旗下で活躍したとか、どこそこを賜ったとか、これこれこういうコトを成し遂げたとか、つまりは先祖自慢だな。
逆にそれすらも知らずに何故自分を誇れるのかと驚いていた。
誇りとは先祖自慢に準拠するものらしい。
あぁ、そうか。自分の能力と環境のみがアイデンティティーだから、現代日本人は存在が歪になってきているのか。
妙に納得してしまった。
その後、この世界の通貨価値と歴史日本との通貨比較を通し、現代日本の通貨比較をするという、訳のわからないコトをやったり、通貨変換の歴史と素材と価値に盛り上がったりしながら、僕たちは町を目指した。
目指す街の名前は【ソドリーム】。
アルハンム王国サザビー辺境伯領の二級都市である。
アルハンム王国は大陸の西南部に位置する新興王国で、元々は大陸中央の神聖メリザーク帝国の一地域だったらしい。
それが帝国の継承問題で独立し、帝国のいちゃもんを跳ね返し現在に至る。
正直な話、クレイは半端なく強かった。
移動しながら、ひょいと右手を振ると、角があるウサギに小柄が命中してたり、緑色の斑で豹っぽい、空気を読めない魔物の首を、刀の一振りで屠ったり、突然行き手を遮った三人の汚いオッサンたちを、側を通り抜けながら抜き手も見せずに斬り捨てたりしていた。
僕はクレイが行動をするまで、いや、結果を理解するまで、何も分からなかった。
角のウサギと斑の豹は、野宿の時美味しくいただきました。オッサン三人は食えないので、そのまま捨て置きました。
僕のファンタジー脳が、アンデッドを心配するが、
「首斬ってるから大丈夫」
と流されてしまった。
盗賊の類いは懸賞金がかかっている場合もあるので、通常は首を持って関係機関に報告するらしいが、クレイは面倒だからと捨て去っていた。
殺伐とした世界だと呟くと、「そうか? オレの時代もそんなもんだったぞ?」と嘯く。
ちなみに、クレイの前世は戦国の世醒めやらぬ時代であるが、詳しい話はまだしてくれない。
人のコトは根掘り葉掘り聞いてたのにな!
そうやって暇潰しの会話の内容とか、道すがら漏れ聞く話しを纏めると、そういうコトらしい。
自分からは名乗らないものの、クレイは多分、あの人の生まれ変わりなんだろうと推測する。
僕は空気を読める人だから、本人が喋らないコトを詳しく聞かないし、得意げに推論は語らない。特に周囲に誰も居ない場所ではね。
そういうのはもう少しクレイの人となりが分かるか、街に入ってからでいい。
少なくとも、今斬り捨てられたら、誰も僕の存在は知らないまま消し去られるだけだからね。
あと、この三日間で、僕は現在の状況が夢ではなく、転移なり転生であると結論付けていた。
転移にしては死んだ感覚は拭えず、転生にしては死んだ年齢のままってのが不可解ではあるが。
ましてや白い部屋だの神様を自称する幼女だのに会ったコトもない。
何から何まで情報が少なすぎだろ、この世界ってヤツは。
とりあえずクレイの庇護下に入ったコトで、速死亡のクソゲー展開は回避出来た。
ていうか、クレイがいなければ、間違いないなくクソゲー展開に突入していたな。
「見えたぞ」
クレイにそう言われ、僕は視線を上げた。
遠くにちんまりと、茶色い何かが見えた。
遠すぎて分かんねぇよ!
クレイにソドリームだと教えられて半日。
僕はようやく、それが壁に囲まれた城塞都市だと理解出来た。
そこからまた二時間かけて、僕たちは城門の前に立つコトが出来た。
日は暮れ、門は閉じていたが。
街を目の前に、今日も野宿が確定した。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる