異世界・野獣暴れ旅 ~スローライフに憧れて~

送り狼

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第1章 推参!

第2話 状況把握

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 なんのかんの言って、僕はクレイに気に入られたらしい。

 近くの町まで案内してくれるようだ。

 歩いて二日の距離をテクテクと。

 ざけんな。現代日本人の脚力を過大評価すんなよ。二日間も歩きっぱって何の拷問だよ。

 ちなみに、クレイの脚力で二日な。

 すぐにバテるは、血豆が破れるは、乳酸たまりまくりですわ。

 しかも基本的にクレイは鬼で、僕の有り様をニマニマと観察するだけで、一切の手出しをしないし、僕自身も助けてとは言わなかった。

 悔しいから!

 合間合間の休憩の暇潰しに、僕の身の上を語っただけで、クレイはこの世界の常識と自身のコトを教えてくれた。

 クレイはエルフには珍しい剣術家で、都合が良いという理由で冒険者として活動しているらしい。

 僕と出会ったのは、依頼として追っていた鬼を屠った直後になる。

 元々日本人の転生者だとアッサリ告げられのは驚いたが、納得もしてしまった。

 ただし、時代が僕とは違うようで、話が噛み合わない事も多かった。

 明治時代以降、日本は急速に近代化したため、それ以前とは価値観も常識も環境も、まったくの別物になった弊害であろう。

 明治以前にお亡くなりになった人が、明治以降に生まれ変わって記憶が残っていれば、日本人は外国人に見えるだろうな。

 しかし、

「今の将軍は何代目だ?」

 の質問には笑ってしまった。

 ちなみに、クレイが言う将軍は徳川家のコトで、クレイの前世は三代目家光の頃だったらしい。

 おぉう、歴史が目の前にいる。

 クレイは僕以外の元日本人にも会ったコトがあるらしいが、その人らは歴史にはそれほど詳しくなかったようだ。

 話を聞いてみれば、本当に日本人かと疑ってしまいたくなるくらい、歴史を知らないヤツもいたらしい。

 僕はむしろ、歴史に興味がない日本人は多いからと納得したんだが、クレイに取って歴史とは、自身の先祖の話が基本だと言う。

 先祖の誰それが将軍の旗下で活躍したとか、どこそこを賜ったとか、これこれこういうコトを成し遂げたとか、つまりは先祖自慢だな。

 逆にそれすらも知らずに何故自分を誇れるのかと驚いていた。

 誇りとは先祖自慢に準拠するものらしい。

 あぁ、そうか。自分の能力と環境のみがアイデンティティーだから、現代日本人は存在が歪になってきているのか。

 妙に納得してしまった。

 その後、この世界の通貨価値と歴史日本との通貨比較を通し、現代日本の通貨比較をするという、訳のわからないコトをやったり、通貨変換の歴史と素材と価値に盛り上がったりしながら、僕たちは町を目指した。

 目指す街の名前は【ソドリーム】。

 アルハンム王国サザビー辺境伯領の二級都市である。

 アルハンム王国は大陸の西南部に位置する新興王国で、元々は大陸中央の神聖メリザーク帝国の一地域だったらしい。

 それが帝国の継承問題で独立し、帝国のいちゃもんを跳ね返し現在に至る。
 



 
 正直な話、クレイは半端なく強かった。

 移動しながら、ひょいと右手を振ると、角があるウサギに小柄が命中してたり、緑色の斑で豹っぽい、空気を読めない魔物の首を、刀の一振りで屠ったり、突然行き手を遮った三人の汚いオッサンたちを、側を通り抜けながら抜き手も見せずに斬り捨てたりしていた。

 僕はクレイが行動をするまで、いや、結果を理解するまで、何も分からなかった。

 角のウサギと斑の豹は、野宿の時美味しくいただきました。オッサン三人は食えないので、そのまま捨て置きました。

 僕のファンタジー脳が、アンデッドを心配するが、

「首斬ってるから大丈夫」

 と流されてしまった。

 盗賊の類いは懸賞金がかかっている場合もあるので、通常は首を持って関係機関に報告するらしいが、クレイは面倒だからと捨て去っていた。

 殺伐とした世界だと呟くと、「そうか? オレの時代もそんなもんだったぞ?」と嘯く。

 ちなみに、クレイの前世は戦国の世醒めやらぬ時代であるが、詳しい話はまだしてくれない。

 人のコトは根掘り葉掘り聞いてたのにな!

 そうやって暇潰しの会話の内容とか、道すがら漏れ聞く話しを纏めると、そういうコトらしい。

 自分からは名乗らないものの、クレイは多分、あの人の生まれ変わりなんだろうと推測する。

 僕は空気を読める人だから、本人が喋らないコトを詳しく聞かないし、得意げに推論は語らない。特に周囲に誰も居ない場所ではね。

 そういうのはもう少しクレイの人となりが分かるか、街に入ってからでいい。

 少なくとも、今斬り捨てられたら、誰も僕の存在は知らないまま消し去られるだけだからね。

 あと、この三日間で、僕は現在の状況が夢ではなく、転移なり転生であると結論付けていた。

 転移にしては死んだ感覚は拭えず、転生にしては死んだ年齢のままってのが不可解ではあるが。

 ましてや白い部屋だの神様を自称する幼女だのに会ったコトもない。

 何から何まで情報が少なすぎだろ、この世界ってヤツは。

 とりあえずクレイの庇護下に入ったコトで、速死亡のクソゲー展開は回避出来た。

 ていうか、クレイがいなければ、間違いないなくクソゲー展開に突入していたな。

「見えたぞ」

 クレイにそう言われ、僕は視線を上げた。

 遠くにちんまりと、茶色い何かが見えた。

 遠すぎて分かんねぇよ!

 クレイにソドリームだと教えられて半日。

 僕はようやく、それが壁に囲まれた城塞都市だと理解出来た。

 そこからまた二時間かけて、僕たちは城門の前に立つコトが出来た。

 日は暮れ、門は閉じていたが。

 街を目の前に、今日も野宿が確定した。

 
 
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