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第1章 推参!
第4話 冒険者ギルド
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僕はクレイに促され、噴水正面の建物に入っていく。
建物は木造三階で、一階は地面より一段高くなっており、建物中心の入り口の前はテラス仕様となっていた。
まんま西部劇の酒場じゃねーか。
そこが冒険者ギルドだと分かったのは、スウィングドアを開けた瞬間に突き刺さる、視線に晒されたからだ。
全員が「なんだコイツ」と、無言で語っていた。
街の冒険者ギルドであれば、登録者はほぼ顔見知りなのだろう。少なくとも何度か見掛けたヤツって認識で、特別注目していない限り興味を引くコトはない。
初見なら流れて来た冒険者か、初登録の子供って認識になる。
当然、僕は後者だろう。
自分で言うのも何だが、どう見ても流れてくる程の力がある冒険者には見えない。
建物入り口の正面に受け付けカウンターがあり、綺麗どころのお姉さんたちがにこやかに冒険者の列を捌いている。
カウンターの奥は木製のデスクが並び、どこぞの役所って感じで職員が忙しなく働いている。
建物の正面からは分からなかったけど、けっこう広い敷地面積だ。
左側には掲示板があり、幾つかの机が設置され、何組かのパーティーが話しをしていた。
そこそこ上級の冒険者なのだろう。雰囲気に落ち着いたものがあるし、装備や武器が高価そう。
その他の低級冒険者たちは、右側にある喫茶室のようなスペースで、左側より大きな掲示板に貼られた依頼を見たり、各々テーブルに腰掛けたりして駄弁っている。
こちらの掲示板は低級や中級の依頼が張り出されているのだろう。
人種もそれぞれで、威嚇に特化した世紀末にヒャッハーしそうな人族から、ネコ耳ウサ耳イヌ耳をピコピコさせる亜人種のお姉さんたち。あとは普通の冒険者たち。
不躾な視線のほとんどは、主にコチラの方から飛んでくる。
その値踏みするような視線は、続いて入って来たクレイを認めてピリッと緊張する。
心なしか建物全体の雰囲気が明るくなった気がするのは、クレイの存在そのものの評価だろう。
特に左側の冒険者たちや、正面のカウンターのお姉さんたちの反応の切り替わりは尋常ではなかった。
無関心から一気にハイテンションだ。
クレイは入り口で立ち尽くす僕の背中を押すように、カウンターの一つに寄っていく。
三つある受け付けカウンターのうち、一番列が短かった左側だ。真ん中と右側のお姉さんが舌打ちしていた。
「クエスト終了の手続きと、新人の登録を頼む」
クレイはインベントリから鬼の角と依頼書を出し、カウンターの上に置く。
「もう討伐されたのですか?」
驚きを隠すコトなく、お姉さんはクレイを見た。
蕩けそうな笑顔で、だ。
肩辺りで切り揃えたピンク色の髪。併せの部分がレースに飾られた白いシャツに紺色の細いネクタイを締め、紺色のベストを着ているが、ギルドの制服なのだろう。他の職員も同じ出で立ちだった。
「手間はなかったな」
お姉さんに応えたクレイの発言に、左側の冒険者たちから感嘆の声が上がる。
鬼――オーガというらしい――は、一人で討伐するような魔物ではないのだろう。
クレイはギルドからの指名を受けて討伐を行ったらしく、その条件はすべてクレイに任せるといったものだった。
冒険者ギルドとしては、パーティーの内容はクレイの判断に任せるといった意味だったのだろうが、クレイは拡大解釈で一人でも構わないと受け取った。
クレイとクエストが出来るかもと胸を高鳴らせたものの、クレイが一人で討伐に向かったと知り、落胆した冒険者も多かったようだ。
この街で、クレイは有名人なのだろう。
「その子は・・・?」
カウンターにクエストの報酬が入った革袋を出しながら、お姉さんが僕に目を止めた。
一瞬恐れを含んだ声音に、お姉さんが僕がクレイの子供という、冗談のような推測をしたのだと判った。
「シチローだ。クエストの途中で拾って弟子にした。登録を頼む」
クレイの発言に、建物全体がざわめく。
すごく居心地が悪い。
視線も「なんだコイツ」から「なにもんだテメェ」にグレードアップしている。
特に左側の冒険者たち。
そんなドヨッた空気も意に介さず、クレイはニヤニヤと僕を見る。
遊んでやがる。
僕はそれらすべてをマルっと無視して、お姉さんに会釈で挨拶をした。
「シチロー・サノです。宜しくお願いします」
「あ、はい。宜しくお願いします。私はミーシャと言います」
お姉さんは安堵するように、輝かんばかりの笑顔で応えてくれた。
・・・解せない。
それから登録の手続きを始め、クレイの進言もあってランクが決定する。
最低のFらしい。まぁそうだろうな。
冒険者たちからはお約束の侮る野次や、絡まれるってイベントは起こらなかった。
クレイがいるせいだろうな。
ランクが最低でも、クレイが弟子として育てるのだ。興味はどれだけ速くランクアップするかに集約する。
まったく面倒で仕方ない。
建物は木造三階で、一階は地面より一段高くなっており、建物中心の入り口の前はテラス仕様となっていた。
まんま西部劇の酒場じゃねーか。
そこが冒険者ギルドだと分かったのは、スウィングドアを開けた瞬間に突き刺さる、視線に晒されたからだ。
全員が「なんだコイツ」と、無言で語っていた。
街の冒険者ギルドであれば、登録者はほぼ顔見知りなのだろう。少なくとも何度か見掛けたヤツって認識で、特別注目していない限り興味を引くコトはない。
初見なら流れて来た冒険者か、初登録の子供って認識になる。
当然、僕は後者だろう。
自分で言うのも何だが、どう見ても流れてくる程の力がある冒険者には見えない。
建物入り口の正面に受け付けカウンターがあり、綺麗どころのお姉さんたちがにこやかに冒険者の列を捌いている。
カウンターの奥は木製のデスクが並び、どこぞの役所って感じで職員が忙しなく働いている。
建物の正面からは分からなかったけど、けっこう広い敷地面積だ。
左側には掲示板があり、幾つかの机が設置され、何組かのパーティーが話しをしていた。
そこそこ上級の冒険者なのだろう。雰囲気に落ち着いたものがあるし、装備や武器が高価そう。
その他の低級冒険者たちは、右側にある喫茶室のようなスペースで、左側より大きな掲示板に貼られた依頼を見たり、各々テーブルに腰掛けたりして駄弁っている。
こちらの掲示板は低級や中級の依頼が張り出されているのだろう。
人種もそれぞれで、威嚇に特化した世紀末にヒャッハーしそうな人族から、ネコ耳ウサ耳イヌ耳をピコピコさせる亜人種のお姉さんたち。あとは普通の冒険者たち。
不躾な視線のほとんどは、主にコチラの方から飛んでくる。
その値踏みするような視線は、続いて入って来たクレイを認めてピリッと緊張する。
心なしか建物全体の雰囲気が明るくなった気がするのは、クレイの存在そのものの評価だろう。
特に左側の冒険者たちや、正面のカウンターのお姉さんたちの反応の切り替わりは尋常ではなかった。
無関心から一気にハイテンションだ。
クレイは入り口で立ち尽くす僕の背中を押すように、カウンターの一つに寄っていく。
三つある受け付けカウンターのうち、一番列が短かった左側だ。真ん中と右側のお姉さんが舌打ちしていた。
「クエスト終了の手続きと、新人の登録を頼む」
クレイはインベントリから鬼の角と依頼書を出し、カウンターの上に置く。
「もう討伐されたのですか?」
驚きを隠すコトなく、お姉さんはクレイを見た。
蕩けそうな笑顔で、だ。
肩辺りで切り揃えたピンク色の髪。併せの部分がレースに飾られた白いシャツに紺色の細いネクタイを締め、紺色のベストを着ているが、ギルドの制服なのだろう。他の職員も同じ出で立ちだった。
「手間はなかったな」
お姉さんに応えたクレイの発言に、左側の冒険者たちから感嘆の声が上がる。
鬼――オーガというらしい――は、一人で討伐するような魔物ではないのだろう。
クレイはギルドからの指名を受けて討伐を行ったらしく、その条件はすべてクレイに任せるといったものだった。
冒険者ギルドとしては、パーティーの内容はクレイの判断に任せるといった意味だったのだろうが、クレイは拡大解釈で一人でも構わないと受け取った。
クレイとクエストが出来るかもと胸を高鳴らせたものの、クレイが一人で討伐に向かったと知り、落胆した冒険者も多かったようだ。
この街で、クレイは有名人なのだろう。
「その子は・・・?」
カウンターにクエストの報酬が入った革袋を出しながら、お姉さんが僕に目を止めた。
一瞬恐れを含んだ声音に、お姉さんが僕がクレイの子供という、冗談のような推測をしたのだと判った。
「シチローだ。クエストの途中で拾って弟子にした。登録を頼む」
クレイの発言に、建物全体がざわめく。
すごく居心地が悪い。
視線も「なんだコイツ」から「なにもんだテメェ」にグレードアップしている。
特に左側の冒険者たち。
そんなドヨッた空気も意に介さず、クレイはニヤニヤと僕を見る。
遊んでやがる。
僕はそれらすべてをマルっと無視して、お姉さんに会釈で挨拶をした。
「シチロー・サノです。宜しくお願いします」
「あ、はい。宜しくお願いします。私はミーシャと言います」
お姉さんは安堵するように、輝かんばかりの笑顔で応えてくれた。
・・・解せない。
それから登録の手続きを始め、クレイの進言もあってランクが決定する。
最低のFらしい。まぁそうだろうな。
冒険者たちからはお約束の侮る野次や、絡まれるってイベントは起こらなかった。
クレイがいるせいだろうな。
ランクが最低でも、クレイが弟子として育てるのだ。興味はどれだけ速くランクアップするかに集約する。
まったく面倒で仕方ない。
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