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第1章 推参!
第8話 サザビー辺境伯
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あれこれ回って見たソドリームという街は、スローライフに適した街であるようだ。
適度な人口に立地、規模、そして領主の評価。物流や治安も申し分ない。
そして、そのいずれにも、クレイの存在は大きいらしい。
サザビー辺境伯当主のエルビン・トール・サザビーはクレイの友人であり、治安維持の兵士はクレイが鍛え上げ、物流の基礎である流通網の整備はクレイを中心に成された。
街の開拓はクレイの進言に依るものらしく、それ以前はまったくの新開地だったわけだ。
その意味は、最初から作った方が気持ちいいかららしい。
街割りや建築基準の浸透を考えると、その方が良いのは間違いないが、建設費用や開拓費用はサザビー辺境伯の持ち出しである。
それでもサザビー辺境伯はそれを諾とし、街を作り上げた。
それはもう嬉々として治水や農地改革、安全管理に尽力し、その費用を自腹を切って整備した。
クレイはクレイで、冒険者ギルドの立ち上げと環境整備に奔走し、体系化させた。
この街は、サザビー辺境伯の領地であると同時に、クレイの街でもあったのだ。
ここで僕はサザビー辺境伯とクレイの出会いに興味を持った。
クレイはエルフで、転生者である。しかも生粋の兵法者でもある。
なまなかな出会いでクレイを友人足らしめるコトは、不可能に思えた。
僕はその疑問をサクラに尋ねてみた。
「クレイ様のお話しでは、初見で斬り合ったらしいですよ?」
「斬り合った!?」
一瞥即抜刀だったらしい。
どんだけ兵法バカだよ。て言うか、よくついていけたな、サザビー辺境伯!
普通は目を合わせた瞬間に剣を抜かないし、斬り合わない。
ついていけたというコトは、クレイに負けず劣らず、サザビー辺境伯は兵法バカってコトだ。
おそらく、場所も状況も考慮しなかったハズだ。
しかも、原因が睨んできたと、双方が主張する脳筋振りだったらしい。
サザビー辺境伯自身はドワーフという種族で、ドワーフは一般的に陽気だがカッとなり易く、プライドが高く真面目なエルフとは反りが合わないと言われているようだ。
顔を合わせれば罵り合い、貶し合うのが二種族の運命であるとさえ揶揄されるほど周知のコトだが、見ただけで斬り合うのは常軌を逸していた。
しかし、クレイは元よりエルフの規範から外れたような存在である。
一瞥即抜刀の事態は、サザビー辺境伯にも意外だったのだろう。
いや、この場合は斬撃に応えられたクレイの力量をというべきか。
サザビー辺境伯がクレイに興味を持ったのも、ある意味当然の流れだったろうし、クレイが自分の打ち込みを真っ向から受けた相手に、興味を引かれたのも間違いない。
クレイがそういう男らしいのは、ここ暫くの付き合いでも判る。
一度打ち解けてしまえば人族より寿命が長いドワーフは、クレイとしても付き合い易かったのかも知れない。
「さて、かかって来い」
翌朝、クレイに呼び出されて道場に向かい、対面した途端に掛けられた言葉がこれだ。
「まてまてまて!何がさてだ!何がかかって来いだ!?」
クレイは不思議そうに僕を見て、首を傾げる。
「あ、言うておらんかったか」
「何も聞いてないし、意味もわからん」
「うむ。転生者の特徴として、何らかの能力があるハズなんだが、シチローにその徴候がないでな、技術的なものかも知れんと、それを確認しようと考えていた」
転生者の特徴的な能力?
それはあれか?いわゆるチートってヤツか!?
クレイの話に、僕はちょっと興奮した。
ここに来てファンタジー展開か!
「転生とは想いの力ではないかと、オレは考えている」
「想いの力?」
「オレの場合は兵法の極みだな。鍛練半ばで倒れたオレは、満足するコトなく強い想いが残ったのだろう。この世界で前世の記憶を残し、鍛練の続きを始められた。しかも、短命の人族より寿命が長い、エルフとしてな」
「クレイの想いが前世の記憶を引き継ぎ、種族を替えて転生を促したと?」
僕の言葉に、クレイは頷く。
「それだと、僕って存在はあてはまらないんだけど」
「お前以外の転生者はそうなんだよ。シチローのように、転生する前の姿で、おそらく前世を継続して転生した例はない」
例がないってコトは、クレイが出会った転生者は生まれ変わりばかりってコトなんだろうな。
僕は何となくそう思った。
何人の転生者と出会ったかは知らないけど、クレイがそう判断出来る程には、統計が出ているのだろう。
クレイの場合、短命が原因で長命の種族に生まれ変わり、兵法を極めたいという想いが記憶の継続に繋がったってコトか。
僕の転生がクレイが知る転生と外れているなら、そこに何らかの原因があるのだろう。
「この世界にどれだけの転生者がいる?」
「死者を含めて百八十ってトコか」
「そんなに居んの!?」
スルッと告げるクレイに、僕は驚いた。
この数字が、クレイが生まれから出会った人の数だとして、それが多いのか少ないのか、ちょっと判断が出来なかった。
「うち八人はオレが斬った」
「だからサラッと言うな!!」
貴重な転生者を、しかも確認した転生者を自分が斬るとか、何言ってんの、この人は!?
「まぁ犯罪に手を染めたヤツらだからな。オレたち転生者が始末を着けるのは当然だろう?」
そう言われ、僕は頷くことしか出来なかった。
そりゃ前世の記憶を持ったまま、人にない能力なんて手に入れて未開の地に生まれたら、勘違いしてヒャッハーするバカが出るのも想像出来る。
「それに、ここ二十年は人族以外に転生する案件も増えてきた」
適度な人口に立地、規模、そして領主の評価。物流や治安も申し分ない。
そして、そのいずれにも、クレイの存在は大きいらしい。
サザビー辺境伯当主のエルビン・トール・サザビーはクレイの友人であり、治安維持の兵士はクレイが鍛え上げ、物流の基礎である流通網の整備はクレイを中心に成された。
街の開拓はクレイの進言に依るものらしく、それ以前はまったくの新開地だったわけだ。
その意味は、最初から作った方が気持ちいいかららしい。
街割りや建築基準の浸透を考えると、その方が良いのは間違いないが、建設費用や開拓費用はサザビー辺境伯の持ち出しである。
それでもサザビー辺境伯はそれを諾とし、街を作り上げた。
それはもう嬉々として治水や農地改革、安全管理に尽力し、その費用を自腹を切って整備した。
クレイはクレイで、冒険者ギルドの立ち上げと環境整備に奔走し、体系化させた。
この街は、サザビー辺境伯の領地であると同時に、クレイの街でもあったのだ。
ここで僕はサザビー辺境伯とクレイの出会いに興味を持った。
クレイはエルフで、転生者である。しかも生粋の兵法者でもある。
なまなかな出会いでクレイを友人足らしめるコトは、不可能に思えた。
僕はその疑問をサクラに尋ねてみた。
「クレイ様のお話しでは、初見で斬り合ったらしいですよ?」
「斬り合った!?」
一瞥即抜刀だったらしい。
どんだけ兵法バカだよ。て言うか、よくついていけたな、サザビー辺境伯!
普通は目を合わせた瞬間に剣を抜かないし、斬り合わない。
ついていけたというコトは、クレイに負けず劣らず、サザビー辺境伯は兵法バカってコトだ。
おそらく、場所も状況も考慮しなかったハズだ。
しかも、原因が睨んできたと、双方が主張する脳筋振りだったらしい。
サザビー辺境伯自身はドワーフという種族で、ドワーフは一般的に陽気だがカッとなり易く、プライドが高く真面目なエルフとは反りが合わないと言われているようだ。
顔を合わせれば罵り合い、貶し合うのが二種族の運命であるとさえ揶揄されるほど周知のコトだが、見ただけで斬り合うのは常軌を逸していた。
しかし、クレイは元よりエルフの規範から外れたような存在である。
一瞥即抜刀の事態は、サザビー辺境伯にも意外だったのだろう。
いや、この場合は斬撃に応えられたクレイの力量をというべきか。
サザビー辺境伯がクレイに興味を持ったのも、ある意味当然の流れだったろうし、クレイが自分の打ち込みを真っ向から受けた相手に、興味を引かれたのも間違いない。
クレイがそういう男らしいのは、ここ暫くの付き合いでも判る。
一度打ち解けてしまえば人族より寿命が長いドワーフは、クレイとしても付き合い易かったのかも知れない。
「さて、かかって来い」
翌朝、クレイに呼び出されて道場に向かい、対面した途端に掛けられた言葉がこれだ。
「まてまてまて!何がさてだ!何がかかって来いだ!?」
クレイは不思議そうに僕を見て、首を傾げる。
「あ、言うておらんかったか」
「何も聞いてないし、意味もわからん」
「うむ。転生者の特徴として、何らかの能力があるハズなんだが、シチローにその徴候がないでな、技術的なものかも知れんと、それを確認しようと考えていた」
転生者の特徴的な能力?
それはあれか?いわゆるチートってヤツか!?
クレイの話に、僕はちょっと興奮した。
ここに来てファンタジー展開か!
「転生とは想いの力ではないかと、オレは考えている」
「想いの力?」
「オレの場合は兵法の極みだな。鍛練半ばで倒れたオレは、満足するコトなく強い想いが残ったのだろう。この世界で前世の記憶を残し、鍛練の続きを始められた。しかも、短命の人族より寿命が長い、エルフとしてな」
「クレイの想いが前世の記憶を引き継ぎ、種族を替えて転生を促したと?」
僕の言葉に、クレイは頷く。
「それだと、僕って存在はあてはまらないんだけど」
「お前以外の転生者はそうなんだよ。シチローのように、転生する前の姿で、おそらく前世を継続して転生した例はない」
例がないってコトは、クレイが出会った転生者は生まれ変わりばかりってコトなんだろうな。
僕は何となくそう思った。
何人の転生者と出会ったかは知らないけど、クレイがそう判断出来る程には、統計が出ているのだろう。
クレイの場合、短命が原因で長命の種族に生まれ変わり、兵法を極めたいという想いが記憶の継続に繋がったってコトか。
僕の転生がクレイが知る転生と外れているなら、そこに何らかの原因があるのだろう。
「この世界にどれだけの転生者がいる?」
「死者を含めて百八十ってトコか」
「そんなに居んの!?」
スルッと告げるクレイに、僕は驚いた。
この数字が、クレイが生まれから出会った人の数だとして、それが多いのか少ないのか、ちょっと判断が出来なかった。
「うち八人はオレが斬った」
「だからサラッと言うな!!」
貴重な転生者を、しかも確認した転生者を自分が斬るとか、何言ってんの、この人は!?
「まぁ犯罪に手を染めたヤツらだからな。オレたち転生者が始末を着けるのは当然だろう?」
そう言われ、僕は頷くことしか出来なかった。
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