異世界・野獣暴れ旅 ~スローライフに憧れて~

送り狼

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第1章 推参!

第9話 転生の其々

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「人族以外?」

 クレイの言葉に、僕は何となく納得していた。

「種族の壁、なんだろう。少なくとも、これまで転生者は人族として生まれてきた。オレのようにエルフになるのは珍しいんだよ」

 クレイの場合は珍しいんじゃなく、必然だったと思う。

 本人はレアケースだと思っているみたいだけど、種族云々とか頭になく、長い寿命を望んだ結果、たまたまエルフになったんだろう。

 何故自分がエルフなのかを真剣に考えるクレイを、僕は生温かい目で見守る。

「しかも、どういう原理か、自分の力量を数値にして見られるらしい」

 首を捻りながら言葉を続けるクレイだが、僕にはその意味が朧気ながら判った。

「小説とかアニメとかマンガの影響・・・かな?」

「何だ、それは?」

「小説は・・・講談本?マンガは草子、アニメは動く草子?」

 僕はクレイでも理解出来そうな媒体に転化し、近代日本の文化を説明しようとしたが、講談が判らないらしい。

 講談の成立年なんか知らねぇよ。

「つまり、講談とは講釈ってコトか」

 クレイによると、講釈は神社や寺院で開かれる読み聞かせであり、軍記や経、漢詩などを題材にするらしい。

 基本的に俗な物語が多いと説明すると、浄瑠璃に近いのかと納得したようだ。

 それを踏まえて、僕はラノベのジャンルである異世界物やマンガの説明をする。

 ゲームは説明が面倒だし、説明のしようがないので最初から出さなかった。

「なるほど。物語の中では力量を数値化して解り易く説明するのか。とすれば、それが転生に影響して、力量の視覚化として定着したわけだ」

 多分、その解釈で間違いないと思う。

 判らないのは、僕にはその恩恵がないって点だ。

 さっきから、ラノベの主人公たちのように、ステータスを呼び出そうと頑張ってみたが、反応がまるでない。

 ちなみに、クレイにも反応はなかったから、ことさら凹む事態にはなってないのが救いではある。

 転生者に人族以外が増えたのも、同じ理由だろう。

 想いが転生に影響するなら、むしろ変な現象じゃない。

「文化の変革で選択肢が増えたってコトか」

「クレイのように、偶然エルフに転生するって方が稀なんじゃないの?ナターシアさんも人族だし、昔の転生者は今ほど選択肢がなかったみたいな」

 死亡から転生まで時間軸が繋がっていれば、選択肢の可能性は大きいと思う。

 逆に時間軸がランダムなら、前世で今日死んだ魂が、この世界の去年に転生していたなんて事態もあり得る話だ。

 前世からこの世界への転生は、シフトチェンジみたいなもんなんだろう。

 従業員の店舗移動って言えば解り易いか?

 つらつらと考えながら、僕はふと、気になったコトをクレイに聞いた。

「そういえば、クレイはこの街の領主と友人なんだよな?まさか、そのサザビー辺境伯も・・・?」

「ん?ああ、ヤツも転生者だな」

「え?誰?」

 クレイと斬り合った転生者、すっげー気になる。 

「・・・武蔵」

 事も無げに答えるクレイに、僕の目が点になる。

「・・・宮本?」

 漏れでた言葉に、クレイが頷く。

 何、その安直さ。

 転生者って言われてから、ある程度の予想は出来たが、そこまでストレートだとは思わなかった。

 なるほど。宮本武蔵なら、ドワーフって種族も納得出来るし、サザビー辺境伯がそうだとしても、違和感がない。

 要はクレイと同じなんだ。たまたまドワーフに生まれただけ。

 宮本武蔵は生涯望んで仕官出来ず、望まれて仕官しなかった人物だ。

 この世界でようやく仕官出来たってコトだな。

 しかし、伝説級の時代劇ヒーローが揃い踏みか。

 それも人物検証の評価が割れる二人だ。

 片や政府の要職を蹴って在野に降りた剣豪。

 片や在野にあって最強と目されながら、胡散臭さを否定し切れない剣豪。

 十兵衛は梟雄と言われ、武蔵は山師と揶揄される。

 その二人が揃ってこの世界に転生して友人同士とか、面白い。

 講談のエピソードとして、宮本武蔵は柳生家に他流試合を申し出、武蔵の力量を看破した十兵衛の父宗矩は、将軍家剣術指南役を理由に拒否してもしやの事態を回避したとある。

 また、武蔵は名古屋の地で兵法者と出会い、思わず「柳生兵庫助殿とお見受けいたす」と声をかけたところ、「お手前は宮本武蔵殿か」と返ってきたと言う。

 武蔵と言う媒体を通して、江戸柳生と尾張柳生の優位性を評した話だが、武蔵は稀代の剣豪として登場する。

 僕は剣豪ものが好きなんだな。

 この世界での十兵衛と武蔵の邂逅に、少なからずも興奮していた。

「・・・あ」

「どうした?」

 クレイが訝しむ。

 想いの力が転生に影響するなら、現在置かれた状況が想いの力の影響であるなら、僕が僕として想いを昇華させた結果が今だとするなら、僕は自分の立ち位置が理解出来た気がした。

「・・・クレイ。僕がクレイの考察に合わない理由が解ったかも・・・」

「何だ?」

「僕はさ、兵法とか剣豪とか流派ってのが好きなんだよ。強くなりたいとか、違う自分になりたいとか、この世界を楽しみたいとかじゃなく、ただ兵法や剣豪が好きなんだ」

 僕の言葉の意味が判らないのか、クレイはじっと僕の目を見詰めながら話を聞いていた。

「つまり、僕はこの世界の一部としての転生者ではなく、単なる傍観者ってコト」

「どういうコトだ?」

「僕は転生した兵法者を見るためだけに転生した人間ってコト」

 だから僕は、クレイが言う転生者の枠から外れた存在として、ここにいる。
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