友達のお兄ちゃん

送り狼

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風早由奈という少女

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面白い女の子です。

 風早由奈ちゃん。

 小学生と見間違うばかりの身長と、第二次性徴を置き去りにしたような体型。陽の加減で赤毛に見えるサラサラのショートヘアと、そしてアホ毛。

 佇まいは儚く、口数は少なく、表情に乏しい。

 最初は口下手で大人しい美少女って感じでしたが・・・とんでもない誤解でした。

 話しかけても反応が鈍いのは、対応が面倒だから。しかし話しかけられるのが嫌いなワケじゃない。必要があればちゃんと返事してくれるし・・・一言居士だけど。

 馴れると甘えたがりだし、気を付けて見ればちゃんと笑ってたりします・・・微かに。

 そう。

 風早由奈ちゃんという美少女は、マイペースで面倒臭がりな残念美少女だったのです。

 多分、クラスメートの人たちは誤解しているのだろうと思います。

 由奈ちゃんは、ちゃんと見ればスゴく感情豊かなんです・・・特にアホ毛が。

 由奈ちゃんは、スゴくスゴく可愛い残念美少女なんです。




「ねぇ、神田さん」

「はい、何でしょう・・・?」

 休み時間、お手洗いに向かう私に、クラスメートの・・・・・・・・・・・・・

「依子。河南依子よ」

 河南依子さんが話しかけてくれました。

「はい、河南さん。どうかしました?」

「・・・いや、その、どうかしたってワケじゃないんだけど、大丈夫かなって思って・・・」

 ビミョーな表情で歯切れの悪い質問に、私は首を傾げます。

「大丈夫・・・とは?」

「いや、さ、ほら、神田さん、勇者とよく一緒にいるから・・・」

『いいか、なづな。人ってのは後ろめたい時は真っ直ぐ相手を見れないもんだ。騙そうとしているか、隠そうとしているか・・・まぁどっちにしても良かぁねぇわな』

 お爺ちゃんがふんぞり返り、腕組みをして言ってた言葉が、頭の中でリフレインです。

 河南さんの挙動不審は置いといて、度々聞こえるフレーズに、私は訝しげに聞き返します。

「勇者?」

「そ。勇者。風早由奈」

 由奈ちゃんのあだ名ってコトみたいです。

「由奈ちゃんが何故、勇者なのでしょうか?」

「いや、風早由奈が勇者なんじゃなくて・・・」

「勇者じゃないのに勇者って言われているのです?」

 意味が分からない河南さんの言葉に、私はちょっとムッとしました。そんな私の苛立ちに慌てたのか、河南さんが説明してくれました。

「元々は【勇者の妹】だったんだけど、いつの間にか短く勇者って言うようになったんだよ」

「・・・はぁ。それで、由奈ちゃんの何が大丈夫なのでしょうか?」

 やっぱり意味が分からない説明に、私は呆れて質問の先を促しました。

 まだお手洗いに行ってないし、休み時間は短いのです。

「いや、アイツ、だんまりだし、根暗だろ?人の話聞いてないし、神田さんが苦労しているんじゃないかって思ってさ」

 私が苦労している?どういうコトですか?
 
「由奈ちゃん、根暗じないですよ?私の話もちゃんと聞いてくれますし、見ていて飽きないくらい面白い子ですが・・・」

 私を心配しているように話していますが、ようは由奈ちゃんの悪口じゃないですか。

 口調にちょっとトゲを含ませ、私は河南さんの言葉を否定する。

「ウソ。しゃべってるの、いつも神田さんだけじゃん」

「ちゃんと返事してくれてますよ。モノグサってのはありますけど」

 まったく、もう。見るならもっときちんと見て下さい。

 けっきょくお手洗いに行けないまま、私は教室に戻るコトになった。




 てくてくと、私と由奈ちゃんは帰宅の途のつく。

 由奈ちゃんの家は、私の家の5ブロックほど先にあるマンションで、私の家からも一応見える。

 だからか、由奈ちゃんは学校の行き帰りは必ず私の家に寄り、お婆ちゃんに会うのが日課だった。

 由奈ちゃん曰く、最高に可愛いお婆ちゃんってコトらしい。

 当然お婆ちゃんになつき、お婆ちゃんも由奈ちゃんを可愛がっていた。

 最近は私より孫らしい由奈ちゃんに対し、友人というよりお姉ちゃんって気がしないでもない。

 お姉ちゃん・・・良い響きです。

 もういっそのコト、家の子になっちゃいなさい。

 そんな由奈ちゃんを見ているのだから、河南さんの人物評の底の浅さに多少憤ったりした。

 勇者の意味は分からないけど、由奈ちゃんの可愛いらしさを見もせず、偏見と憶測で由奈ちゃんを仲間外れにするなんて。

 しかも私にそれを植え付けようとするなんて。

 確かに友達がいっぱい出来れば良いなとは思っていたけど、由奈ちゃんを疎外して手に入れる友人より、そんな安っぽい友人より、私は由奈ちゃんがいれば良い。

 お婆ちゃんの膝枕で幸せそうに眠った由奈ちゃんを眺める私に、

「怖い顔してまぁ」

 由奈ちゃんの頭を撫でながら、お婆ちゃんが話しかけてきた。

 私は河南さんの話と、由奈ちゃんの現状をお婆ちゃんに話してあげた。

 もちろん、由奈ちゃんがお婆ちゃんの膝枕に名残を惜しみつつ、帰宅した後のコトです。

「それで、なづなはその河南さんたちから由奈ちゃんを守りたいって?」

「うん。だって酷いんだもん。私に由奈ちゃんの悪口を言わせようとするんだよ?」

「ほらまた、怖い顔になってる」

 だんだん口調が荒くなってきた私をからかうように、お婆ちゃんがニッコリと笑う。

 ホンに大樹にそっくりだわと付け加えて。

 大樹は私のお父さんの名前で、私はよくお爺ちゃんに、お母さんの皮を被ったお父さんだとからかわれている。

 いや、それはイイんですけど。

 ともあれ、私はお婆ちゃんの言葉と表情にクールダウンしていた。

「なづなが由奈ちゃんを守るために河南さんたちと険悪になるのは正しいコト?」

 しかし、意外な言葉が、お婆ちゃんの口をつく。

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