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私の存在意義
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どうしてお婆ちゃんがそんなコト言うの?
さっきまで由奈ちゃんの頭を優しく撫でてたのに、帰った途端に何でもなかったように、由奈ちゃんを見捨てなさいって言うの?
私と由奈ちゃんを比べたら、やっぱり本当の孫の方が可愛いってコト?
色んな思いや感情が頭の中でぐるぐる回り、涙が溢れた。
ニコニコ笑っている小さな可愛いお婆ちゃんが、急に腹黒く醜い老女に見えた。
私はお腹からせりあがってくる酸っぱいモノを我慢できず、何かを言う余裕もなくトイレに駆け込んだ。
心配そうなお婆ちゃんの声も、今の私の心には響かない。
『あらあら、ケンカはダメよ?』
お婆ちゃんならそう言うと思っていた。あるいは、
『あらまぁ、それじゃあなづなが由奈ちゃんを守んなきゃね』
そう言って私の頭を撫でると思っていた。
再び涙が溢れだし、私はトイレで泣いていた。
トントンと、誰かが部屋のドアをノックする。
私は枕に埋めた顔を少し上げ、暗い部屋のドアを伺う。
ドアの隙間から廊下の電気が洩れている。
トイレで一頻り泣いた後、私はトイレの前でオロオロするお婆ちゃんを振り切るように、逃げるように自分の部屋に閉じ籠った。
しばらくはお婆ちゃんが部屋の前で声をかけていたようだけど、私はベッドに飛び込むと布団を被って拒否した。
それからちょっと眠ったようで、ノックの音で目を覚ましたみたいです。
時計を見ると、いつの間にか10時になっていた。
「なづな、お爺ちゃんと話をしよう」
気遣わしげに声をかけて、お爺ちゃんがまたノックをする。
私はノロノロと身体を起こし、
「そばにお婆ちゃんもいる?」
ドア越しに返事をする。
「いや、いないぞ」
お爺ちゃんの返事を聞いたあと、しばらくしてカギを開け、ドアをちょっとだけ開いて廊下を伺った。
「何?」
「入っていいか?」
私の様子を呆れたように見ながら、お爺ちゃんは片眉を上げた。
外国の映画俳優のクセがカッコいいと、真似ている内にクセになったらしい。
私は身体を横にずらし、お爺ちゃんを部屋に入れてドアを閉めた。
部屋のカギを掛けた私に何も言わず、部屋の真ん中に立つお爺ちゃん。
私がベッドに腰掛けると、
「で、何があった?」
私の前で床に胡座をかいてそう言った。
「お婆ちゃんに聞いてないの?」
「事情が分からんからな。そういう時は両方から聞くもんだ」
武術で鍛え上げ、細いわりには厚い胸を反らして、お爺ちゃんはふんすと鼻息を強める。
私は少しづつ、今日あったコト、自分の決意、お婆ちゃんの言葉、裏切られた気持ちを、たどたどしく話していった。
お爺ちゃんはまんじりともせず、私の話を聞いていた。
「つまり、なづなは、仲間外れの由奈ちゃんを守ろうと思ったのに、仲間外れにしている河南さんと仲良くしなさいとお婆ちゃんに言われ、お婆ちゃんが信じられなくなった訳だな」
ゆっくりと、噛み締めるように話すお爺ちゃんに、私はコクンと頷いた。
「・・・なるほどな。なづな。人は見たいモノしか見ず、聞きたいコトしか聞かないもんだ」
説教でもするつもりかと、ちょっと身構えた私に、お爺ちゃんはニコリと笑う。
「どういうコト?」
「由奈ちゃんの話をしてお婆ちゃんの賛同が欲しかったなづなは、賛同じゃないお婆ちゃんの言葉にショックを受けて、目と耳を閉ざしてしまったってコトだ」
「お婆ちゃんは『由奈ちゃんを守るために河南さんと険悪になるのは正しいコトか』って、はっきり言ったモン」
お爺ちゃんは分かってないと、抗議のため口調を強めた私に、お爺ちゃんはやんわり諭すように頷く。
「そこだよ、なづな」
「どこ?」
「なづなは由奈ちゃんと仲良くしたい。これは間違いないだろう?」
「でも、由奈ちゃんと仲良くすると、河南さんと対立するコトになるけど、なづなはそれを仕方ないと考えたんだな?」
コクンと頷く。
「さて、問題だ。それは正しいコトか?」
「お爺ちゃんまでそんなコト言うの!?」
お婆ちゃんと同じコトを言うお爺ちゃんに、私はカッとなった。
ギュッと握った掌に、爪が食い込んで痛い。
「落ち着け」
「どうやって!」
「怒る前に、言葉の意味をよく考えてみろ」
そう言われ、黙り込む私。
「なづなは河南さんと対立する必要があると判断したんだろう?」
「・・・うん」
「だったらな、分けて考えてみろ」
「分けて・・・?」
「由奈ちゃんのコトが無くても、河南さんと険悪になりたいか?」
「そりゃ出来れば、友達とケンカしたくない」
「だろ?お婆ちゃんが言いたかったのもソレだ。由奈ちゃんを守るために、何故ケンカする必要があるんだ?ってな。河南さんが由奈ちゃんを誤解しているなら、何故誤解を解くコトよりケンカする方を選ぶのか?由奈ちゃんはこんなに可愛いんだよと、何故教えてあげないのか?そもそもそんな理由で河南さんと対立したら、由奈ちゃんは喜ぶと思うか?」
そこまで言われてやっと、私はお婆ちゃんの言葉の意味を理解した。
「そんなコト、お婆ちゃん言わなかった」
だけど私は、素直に認めるのが悔しくて、拗ねたようにそっぽを向いた。
「最初に言っただろ。人は見たいモノしか見ず、聞きたいコトしか聞かないって。お婆ちゃんの話、ちゃんと聞いてたか?」
苦笑まじりに話すお爺ちゃんに、私は首を振る。
カッとなって、信じられなくなって、お婆ちゃんの全部を拒否した。
「・・・ごめんなさい」
「俺に謝るコトじゃないだろ。お婆ちゃん取り乱して泣いてたぞ」
お爺ちゃんのトドメの一言で、私は項垂れていた顔を上げた。
やんわりと諭そうとしてくれたお婆ちゃんに怒りをぶつけ、それでも心配してくれたのに全身で拒否し、挙げ句の果てには酷い言葉を言ったかも知れない。
ホントに自分で自分を蹴飛ばしてやりたい。
私は部屋を飛び出し、居間で小さくなって俯いていたお婆ちゃんに抱き付き、泣きながら謝った。
何度も何度も。
さっきまで由奈ちゃんの頭を優しく撫でてたのに、帰った途端に何でもなかったように、由奈ちゃんを見捨てなさいって言うの?
私と由奈ちゃんを比べたら、やっぱり本当の孫の方が可愛いってコト?
色んな思いや感情が頭の中でぐるぐる回り、涙が溢れた。
ニコニコ笑っている小さな可愛いお婆ちゃんが、急に腹黒く醜い老女に見えた。
私はお腹からせりあがってくる酸っぱいモノを我慢できず、何かを言う余裕もなくトイレに駆け込んだ。
心配そうなお婆ちゃんの声も、今の私の心には響かない。
『あらあら、ケンカはダメよ?』
お婆ちゃんならそう言うと思っていた。あるいは、
『あらまぁ、それじゃあなづなが由奈ちゃんを守んなきゃね』
そう言って私の頭を撫でると思っていた。
再び涙が溢れだし、私はトイレで泣いていた。
トントンと、誰かが部屋のドアをノックする。
私は枕に埋めた顔を少し上げ、暗い部屋のドアを伺う。
ドアの隙間から廊下の電気が洩れている。
トイレで一頻り泣いた後、私はトイレの前でオロオロするお婆ちゃんを振り切るように、逃げるように自分の部屋に閉じ籠った。
しばらくはお婆ちゃんが部屋の前で声をかけていたようだけど、私はベッドに飛び込むと布団を被って拒否した。
それからちょっと眠ったようで、ノックの音で目を覚ましたみたいです。
時計を見ると、いつの間にか10時になっていた。
「なづな、お爺ちゃんと話をしよう」
気遣わしげに声をかけて、お爺ちゃんがまたノックをする。
私はノロノロと身体を起こし、
「そばにお婆ちゃんもいる?」
ドア越しに返事をする。
「いや、いないぞ」
お爺ちゃんの返事を聞いたあと、しばらくしてカギを開け、ドアをちょっとだけ開いて廊下を伺った。
「何?」
「入っていいか?」
私の様子を呆れたように見ながら、お爺ちゃんは片眉を上げた。
外国の映画俳優のクセがカッコいいと、真似ている内にクセになったらしい。
私は身体を横にずらし、お爺ちゃんを部屋に入れてドアを閉めた。
部屋のカギを掛けた私に何も言わず、部屋の真ん中に立つお爺ちゃん。
私がベッドに腰掛けると、
「で、何があった?」
私の前で床に胡座をかいてそう言った。
「お婆ちゃんに聞いてないの?」
「事情が分からんからな。そういう時は両方から聞くもんだ」
武術で鍛え上げ、細いわりには厚い胸を反らして、お爺ちゃんはふんすと鼻息を強める。
私は少しづつ、今日あったコト、自分の決意、お婆ちゃんの言葉、裏切られた気持ちを、たどたどしく話していった。
お爺ちゃんはまんじりともせず、私の話を聞いていた。
「つまり、なづなは、仲間外れの由奈ちゃんを守ろうと思ったのに、仲間外れにしている河南さんと仲良くしなさいとお婆ちゃんに言われ、お婆ちゃんが信じられなくなった訳だな」
ゆっくりと、噛み締めるように話すお爺ちゃんに、私はコクンと頷いた。
「・・・なるほどな。なづな。人は見たいモノしか見ず、聞きたいコトしか聞かないもんだ」
説教でもするつもりかと、ちょっと身構えた私に、お爺ちゃんはニコリと笑う。
「どういうコト?」
「由奈ちゃんの話をしてお婆ちゃんの賛同が欲しかったなづなは、賛同じゃないお婆ちゃんの言葉にショックを受けて、目と耳を閉ざしてしまったってコトだ」
「お婆ちゃんは『由奈ちゃんを守るために河南さんと険悪になるのは正しいコトか』って、はっきり言ったモン」
お爺ちゃんは分かってないと、抗議のため口調を強めた私に、お爺ちゃんはやんわり諭すように頷く。
「そこだよ、なづな」
「どこ?」
「なづなは由奈ちゃんと仲良くしたい。これは間違いないだろう?」
「でも、由奈ちゃんと仲良くすると、河南さんと対立するコトになるけど、なづなはそれを仕方ないと考えたんだな?」
コクンと頷く。
「さて、問題だ。それは正しいコトか?」
「お爺ちゃんまでそんなコト言うの!?」
お婆ちゃんと同じコトを言うお爺ちゃんに、私はカッとなった。
ギュッと握った掌に、爪が食い込んで痛い。
「落ち着け」
「どうやって!」
「怒る前に、言葉の意味をよく考えてみろ」
そう言われ、黙り込む私。
「なづなは河南さんと対立する必要があると判断したんだろう?」
「・・・うん」
「だったらな、分けて考えてみろ」
「分けて・・・?」
「由奈ちゃんのコトが無くても、河南さんと険悪になりたいか?」
「そりゃ出来れば、友達とケンカしたくない」
「だろ?お婆ちゃんが言いたかったのもソレだ。由奈ちゃんを守るために、何故ケンカする必要があるんだ?ってな。河南さんが由奈ちゃんを誤解しているなら、何故誤解を解くコトよりケンカする方を選ぶのか?由奈ちゃんはこんなに可愛いんだよと、何故教えてあげないのか?そもそもそんな理由で河南さんと対立したら、由奈ちゃんは喜ぶと思うか?」
そこまで言われてやっと、私はお婆ちゃんの言葉の意味を理解した。
「そんなコト、お婆ちゃん言わなかった」
だけど私は、素直に認めるのが悔しくて、拗ねたようにそっぽを向いた。
「最初に言っただろ。人は見たいモノしか見ず、聞きたいコトしか聞かないって。お婆ちゃんの話、ちゃんと聞いてたか?」
苦笑まじりに話すお爺ちゃんに、私は首を振る。
カッとなって、信じられなくなって、お婆ちゃんの全部を拒否した。
「・・・ごめんなさい」
「俺に謝るコトじゃないだろ。お婆ちゃん取り乱して泣いてたぞ」
お爺ちゃんのトドメの一言で、私は項垂れていた顔を上げた。
やんわりと諭そうとしてくれたお婆ちゃんに怒りをぶつけ、それでも心配してくれたのに全身で拒否し、挙げ句の果てには酷い言葉を言ったかも知れない。
ホントに自分で自分を蹴飛ばしてやりたい。
私は部屋を飛び出し、居間で小さくなって俯いていたお婆ちゃんに抱き付き、泣きながら謝った。
何度も何度も。
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