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1熱烈なキス
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<簡単にわかる前作までのあらすじ>
公爵家へ嫁いだキャロラインは、とある日屋敷の階段から落ちて頭を打つ。目覚めると、転生前に読んでいた小説のキャラクターになっていることに気が付く。キャロラインは小説の中では我儘で傲慢な悪役令嬢であり、ラスボスであるクロークの妻だった。
小説の中ではクロークに惨殺される運命のキャロライン。死にたくない、生き延びて見せると意気込み、悪役令嬢から一転、穏やかで心優しい公爵夫人へ変化する。戸惑う周囲の人々を尻目に、クロークだけは頑なにキャロラインを信じようとしない。だが、次第にキャロラインから向けられる純粋な心と眼差しに心を溶かされ、徐々にデレはじめる。
転生前のユキについて知ったクロークはさらにキャロラインへ特別な気持ちを抱くようになり、社交パーティーで他の人間からクロークを馬鹿にされたことに憤るキャロラインを見て思わずキスをした。
◆
社交パーティーが無事に終わり屋敷に戻ると、キャロラインは一目散に自室へ戻っていた。ドレスを脱ぎ部屋に備え付けられている浴室で湯浴みを済ませると、ホウッと息を吐いてベッドにダイブする。
(うわあああああ!クローク様に、キ、キスされた……!)
社交パーティーでの出来事を思い出し、キャロラインは顔を両手で覆い、うめき声をあげる。いくら他の人間に二人の仲が良いのだと知らしめるためとはいえ、急に、しかもあんな熱烈にキスするだなんてどうかしている。
(しかも、屋敷に戻ったら二人きりでもっとロマンチックにしてやるとか、そんなの無理!)
ううう、とうめき声をあげていると、コンコンとノックが聞こえる。ビクッとキャロラインの肩が震え、無言のままでいると、またコンコンとノックが聞こえた。
「は、はい……」
「俺だ、入るぞ」
(ひいいいい!クローク様の声!)
キャロラインは慌てて飛び上がると、部屋に入って来たクロークはキャロラインを見てフッと笑う。
「ベッドの上で俺を待ってくれていたのか?」
「ち、違います!何を言ってるんですか!」
キャロラインが立ち上がろうとすると、クロークが片手でそれを制し、ベッドサイドへ座る。
「そんなに否定されるとさすがに傷つくな」
「そ、そんなことないですよね?クローク様、今日はずっと私をからかって楽しんでおいでじゃないですか」
キャロラインが頬を赤らめながらムッとしてそう言うと、クロークはキャロラインの髪の毛を一房掴んでそっと唇に寄せる。
「からかってる?どんなふうに?今日、俺は君にどんなことをしたんだ?」
(くっ、イケメンの暴力だわ!たちが悪すぎる!)
キャロラインの目を見ながら、クロークは徐々にキャロラインの顔へ近づいてくる。慌ててキャロラインがクロークを両手で制そうとするが、両手首をクロークに捕まれてしまい、身動きが取れない。
「は、離してください」
「そんなに俺が嫌なのか?俺に死んでほしくないと言ってくれたのに。あれは嘘だったのか」
さも悲しいと言わんばかりの顔で言うクロークを見て、絶対にわざとだとわかっているのに、なんだか申し訳ない気持ちになってしまう。
「う、嘘じゃありません!でも、それとこれとは話が違います!クローク様、ご自分のお顔の素晴らしさをわかっておいでですか?あまりに色気がありすぎて、これ以上近寄られると心臓がもたないんです!だから勘弁してください!」
両目を瞑ってキャロラインが必死に訴えると、クロークは目を丸くしながら固まり、それから俯いてクックックと笑い出した。
「ふっ、ははっ、ははは!まさかそんなこと言われると思わなかった。君は本当に面白いな。……他の誰にも渡したくないと思うほどに」
笑う声に驚いてキャロラインが目を開けると、顔を上げたクロークの瞳がきらりと光る。その瞳のあまりの美しさにキャロラインが思わず見とれていると、クロークの片手がキャロラインの後頭部に回り、あっという間にキャロラインはクロークにキスされていた。
「!!」
驚いて体を離そうとするが、クロークの手がそれを許さない。執拗に何度も口づけをされて、キャロラインは息が苦しくなる。思わず口が開いてしまうと、クロークの舌が入ってきて口の中をかき乱していく。執拗に何度もしつこいキスが繰り返され、次第にキャロラインの体から力が抜けていく。
(な、なにこれ、体に力が入らない……)
身体の奥が熱くなり、頭がぼんやりとしてしまう。クロークの唇や舌の感触が不思議と気持ちよく感じられて、キャロラインは何が何だかわからなくなっていた。
ようやく唇が離れると、キャロラインの体はくったりとしている。クロークの瞳はギラギラと輝き、キャロラインはぼんやりとしながらそれを見て、綺麗なのにぞくぞくすると思った。
「大丈夫か?」
「大丈夫、じゃ、ない、です……」
キャロラインが潤んだ瞳をクロークに向けてそう言うと、クロークは目を一瞬見張り、グッと喉を鳴らした。それから、小さくため息をついてから額を合わせる。
「そんな顔、俺以外の人間が見るだなんて絶対に許せない。……まさか君へこんな気持ちを抱くなんてな。いや、ユキの記憶を持つ君だからなんだろう」
そう言って、スリ、と片手で頬を優しく撫でると、クロークは顔を離す。
「慣れない社交パーティーで疲れただろう。今日はゆっくり休むといい」
そう言って、クロークは立ち上がり、ドアまで歩いていく。そして、ドアの前で振り向くと、キャロラインの顔を見て静かに微笑んだ。
「おやすみ」
「……おやすみなさい」
パタン、とドアが閉まると、キャロラインはぼうっとしたままドアを見つめ、それから両手で顔を覆った。
(な、なに!?なにあれ!?クローク様にあんなキスされるなんて聞いてない!)
ぼんやりとしていた頭が、少しずつはっきりとしてきた。そして、はっきりしてきたがために、さっきまでの光景をまざまざと思い出してしまう。あのクロークが、ドロドロに甘かった。まるで砂糖を煮詰めたように甘ったるい。その甘ったるさのおかげで、キャロラインはすっかりドロドロに溶かされてしまった。
(クローク様に殺される世界線は回避できた気がするけど、違う意味で心臓が止まりそう!)
◆
自室に戻ったクロークは、ソファへドサッと体を沈めると、天井へ顔を向けてフーッと大きく息を吐いた。
(あの顔は反則だろう。だが、俺があの顔をさせたのだと思うと気分がいい)
本当は、キス以上のこともしたかった。彼女の唇も体も心も何もかも全て、自分だけのものでなければならない。他の男に取られるなんて絶対に許せない。社交パーティーでキャロラインへ話しかけてきたオルレアン卿の様子を思い出すと、腸が煮えくり返りそうだ。自分のオッドアイのことを言われたことについては正直どうでもよかった。ただ、性格が変わったキャロラインを好意的に思い、一緒になりたいなどと勝手なことを言うあの男を許せないと思ったのだ。
(いや、勝手なのは俺もか。今までのキャロラインとは違うと分かった途端に、手放したくないと思うだなんてな)
それでも、今のキャロラインを誰にも渡したくない。自分の側において、自分意外の誰にも触れられたくないと思うのだ。身勝手なのは重々承知だ。白い結婚だから別れればいいと周囲に思われてしまうのなら、いっそのこと今すぐにでも白い結婚ではなくすればいいのだとさえ思う。
(だが、彼女の意思は尊重したい。俺の一方的な思いではなく、彼女も俺のことを思ってくれなければ意味がない)
自分に、こんな感情が芽生えるだなんてあり得ないと思っていた。誰のことも愛さず、誰からも愛されず、ただ生きていくだけ。それでいい、それが呪われた瞳を持って生まれてきた自分の人生なのだろうと思っていたのに。
このオッドアイを、呪われた瞳を、怖いと思うことも気味悪いということもなく、側にいてくれる。こんな自分のことを素敵な人間なのだと言ってくれる。そんな彼女のことを手放したくないと思うのは当然だろう。
ふと、以前トリスタンと顔を合わせた時のキャロラインの様子を思い出して、胸の中に黒い靄のようなものが沸き上がる。ユキの記憶だと、小説の中のキャロラインはトリスタンに恋心を抱き、マリアとの仲を引き裂こうとすると言っていた。ユキの記憶を持つ今のキャロラインはトリスタンに全く興味がないと言っていたが、それでもトリスタンに見惚れていたのだ。いつ恋心に変化するかわからない危うさがある。
(それに、レオのこともある。ユキの頃はレオを推していたと言っていた。推すという気持ちは恋心とは違うと言っていたが……それでも、好意的に思っていることには違いない)
レオは確かにできる男だ。こんな自分の側近になってしまったのに、嫌な顔ひとつせずずっと側にいて自分のために力を発揮してくれている。信頼関係ができあがり、今ではたった一人の良き理解者だ。だからといって、キャロラインを渡す気はもちろんない。レオに限って自分の婚約者へ思いを寄せることはないと思うが、性格ががらりと変わったキャロラインへ興味を示しているであろうことはわかる。
(万が一、キャロラインがレオへ恋心を抱いてしまったらどうする?レオのことだ、受け入れることは絶対にしないだろう。だが、重要なのはそこじゃない。キャロラインの心が、俺以外に向けられることが気に食わない。そんなこと、あってはならない)
キャロラインから向けられた笑顔を思い出すと、心の中がほんのりと暖かくなる。暗い闇の中を歩いていたはずなのに、キャロラインと一緒にいると、急に光がさしたように世界が明るくなるのだ。失いたくない、手放したくないと思ってしまう。
もし、他の人間のように、キャロラインが自分を拒絶する日が突然来たとしたら、自分はどうなってしまうのか。考えたくもないのに、そんな不安が突然襲ってくる。今のキャロラインはそんな人間ではない、わかっているのに、どうしても不安で苦しくてどうにかなってしまいそうだ。
「そんな日が来たら、俺は本当に彼女のことを手にかけてしまうかもしれないな」
ぽつり、とクロークの独白が部屋の中に鳴り響いた。
公爵家へ嫁いだキャロラインは、とある日屋敷の階段から落ちて頭を打つ。目覚めると、転生前に読んでいた小説のキャラクターになっていることに気が付く。キャロラインは小説の中では我儘で傲慢な悪役令嬢であり、ラスボスであるクロークの妻だった。
小説の中ではクロークに惨殺される運命のキャロライン。死にたくない、生き延びて見せると意気込み、悪役令嬢から一転、穏やかで心優しい公爵夫人へ変化する。戸惑う周囲の人々を尻目に、クロークだけは頑なにキャロラインを信じようとしない。だが、次第にキャロラインから向けられる純粋な心と眼差しに心を溶かされ、徐々にデレはじめる。
転生前のユキについて知ったクロークはさらにキャロラインへ特別な気持ちを抱くようになり、社交パーティーで他の人間からクロークを馬鹿にされたことに憤るキャロラインを見て思わずキスをした。
◆
社交パーティーが無事に終わり屋敷に戻ると、キャロラインは一目散に自室へ戻っていた。ドレスを脱ぎ部屋に備え付けられている浴室で湯浴みを済ませると、ホウッと息を吐いてベッドにダイブする。
(うわあああああ!クローク様に、キ、キスされた……!)
社交パーティーでの出来事を思い出し、キャロラインは顔を両手で覆い、うめき声をあげる。いくら他の人間に二人の仲が良いのだと知らしめるためとはいえ、急に、しかもあんな熱烈にキスするだなんてどうかしている。
(しかも、屋敷に戻ったら二人きりでもっとロマンチックにしてやるとか、そんなの無理!)
ううう、とうめき声をあげていると、コンコンとノックが聞こえる。ビクッとキャロラインの肩が震え、無言のままでいると、またコンコンとノックが聞こえた。
「は、はい……」
「俺だ、入るぞ」
(ひいいいい!クローク様の声!)
キャロラインは慌てて飛び上がると、部屋に入って来たクロークはキャロラインを見てフッと笑う。
「ベッドの上で俺を待ってくれていたのか?」
「ち、違います!何を言ってるんですか!」
キャロラインが立ち上がろうとすると、クロークが片手でそれを制し、ベッドサイドへ座る。
「そんなに否定されるとさすがに傷つくな」
「そ、そんなことないですよね?クローク様、今日はずっと私をからかって楽しんでおいでじゃないですか」
キャロラインが頬を赤らめながらムッとしてそう言うと、クロークはキャロラインの髪の毛を一房掴んでそっと唇に寄せる。
「からかってる?どんなふうに?今日、俺は君にどんなことをしたんだ?」
(くっ、イケメンの暴力だわ!たちが悪すぎる!)
キャロラインの目を見ながら、クロークは徐々にキャロラインの顔へ近づいてくる。慌ててキャロラインがクロークを両手で制そうとするが、両手首をクロークに捕まれてしまい、身動きが取れない。
「は、離してください」
「そんなに俺が嫌なのか?俺に死んでほしくないと言ってくれたのに。あれは嘘だったのか」
さも悲しいと言わんばかりの顔で言うクロークを見て、絶対にわざとだとわかっているのに、なんだか申し訳ない気持ちになってしまう。
「う、嘘じゃありません!でも、それとこれとは話が違います!クローク様、ご自分のお顔の素晴らしさをわかっておいでですか?あまりに色気がありすぎて、これ以上近寄られると心臓がもたないんです!だから勘弁してください!」
両目を瞑ってキャロラインが必死に訴えると、クロークは目を丸くしながら固まり、それから俯いてクックックと笑い出した。
「ふっ、ははっ、ははは!まさかそんなこと言われると思わなかった。君は本当に面白いな。……他の誰にも渡したくないと思うほどに」
笑う声に驚いてキャロラインが目を開けると、顔を上げたクロークの瞳がきらりと光る。その瞳のあまりの美しさにキャロラインが思わず見とれていると、クロークの片手がキャロラインの後頭部に回り、あっという間にキャロラインはクロークにキスされていた。
「!!」
驚いて体を離そうとするが、クロークの手がそれを許さない。執拗に何度も口づけをされて、キャロラインは息が苦しくなる。思わず口が開いてしまうと、クロークの舌が入ってきて口の中をかき乱していく。執拗に何度もしつこいキスが繰り返され、次第にキャロラインの体から力が抜けていく。
(な、なにこれ、体に力が入らない……)
身体の奥が熱くなり、頭がぼんやりとしてしまう。クロークの唇や舌の感触が不思議と気持ちよく感じられて、キャロラインは何が何だかわからなくなっていた。
ようやく唇が離れると、キャロラインの体はくったりとしている。クロークの瞳はギラギラと輝き、キャロラインはぼんやりとしながらそれを見て、綺麗なのにぞくぞくすると思った。
「大丈夫か?」
「大丈夫、じゃ、ない、です……」
キャロラインが潤んだ瞳をクロークに向けてそう言うと、クロークは目を一瞬見張り、グッと喉を鳴らした。それから、小さくため息をついてから額を合わせる。
「そんな顔、俺以外の人間が見るだなんて絶対に許せない。……まさか君へこんな気持ちを抱くなんてな。いや、ユキの記憶を持つ君だからなんだろう」
そう言って、スリ、と片手で頬を優しく撫でると、クロークは顔を離す。
「慣れない社交パーティーで疲れただろう。今日はゆっくり休むといい」
そう言って、クロークは立ち上がり、ドアまで歩いていく。そして、ドアの前で振り向くと、キャロラインの顔を見て静かに微笑んだ。
「おやすみ」
「……おやすみなさい」
パタン、とドアが閉まると、キャロラインはぼうっとしたままドアを見つめ、それから両手で顔を覆った。
(な、なに!?なにあれ!?クローク様にあんなキスされるなんて聞いてない!)
ぼんやりとしていた頭が、少しずつはっきりとしてきた。そして、はっきりしてきたがために、さっきまでの光景をまざまざと思い出してしまう。あのクロークが、ドロドロに甘かった。まるで砂糖を煮詰めたように甘ったるい。その甘ったるさのおかげで、キャロラインはすっかりドロドロに溶かされてしまった。
(クローク様に殺される世界線は回避できた気がするけど、違う意味で心臓が止まりそう!)
◆
自室に戻ったクロークは、ソファへドサッと体を沈めると、天井へ顔を向けてフーッと大きく息を吐いた。
(あの顔は反則だろう。だが、俺があの顔をさせたのだと思うと気分がいい)
本当は、キス以上のこともしたかった。彼女の唇も体も心も何もかも全て、自分だけのものでなければならない。他の男に取られるなんて絶対に許せない。社交パーティーでキャロラインへ話しかけてきたオルレアン卿の様子を思い出すと、腸が煮えくり返りそうだ。自分のオッドアイのことを言われたことについては正直どうでもよかった。ただ、性格が変わったキャロラインを好意的に思い、一緒になりたいなどと勝手なことを言うあの男を許せないと思ったのだ。
(いや、勝手なのは俺もか。今までのキャロラインとは違うと分かった途端に、手放したくないと思うだなんてな)
それでも、今のキャロラインを誰にも渡したくない。自分の側において、自分意外の誰にも触れられたくないと思うのだ。身勝手なのは重々承知だ。白い結婚だから別れればいいと周囲に思われてしまうのなら、いっそのこと今すぐにでも白い結婚ではなくすればいいのだとさえ思う。
(だが、彼女の意思は尊重したい。俺の一方的な思いではなく、彼女も俺のことを思ってくれなければ意味がない)
自分に、こんな感情が芽生えるだなんてあり得ないと思っていた。誰のことも愛さず、誰からも愛されず、ただ生きていくだけ。それでいい、それが呪われた瞳を持って生まれてきた自分の人生なのだろうと思っていたのに。
このオッドアイを、呪われた瞳を、怖いと思うことも気味悪いということもなく、側にいてくれる。こんな自分のことを素敵な人間なのだと言ってくれる。そんな彼女のことを手放したくないと思うのは当然だろう。
ふと、以前トリスタンと顔を合わせた時のキャロラインの様子を思い出して、胸の中に黒い靄のようなものが沸き上がる。ユキの記憶だと、小説の中のキャロラインはトリスタンに恋心を抱き、マリアとの仲を引き裂こうとすると言っていた。ユキの記憶を持つ今のキャロラインはトリスタンに全く興味がないと言っていたが、それでもトリスタンに見惚れていたのだ。いつ恋心に変化するかわからない危うさがある。
(それに、レオのこともある。ユキの頃はレオを推していたと言っていた。推すという気持ちは恋心とは違うと言っていたが……それでも、好意的に思っていることには違いない)
レオは確かにできる男だ。こんな自分の側近になってしまったのに、嫌な顔ひとつせずずっと側にいて自分のために力を発揮してくれている。信頼関係ができあがり、今ではたった一人の良き理解者だ。だからといって、キャロラインを渡す気はもちろんない。レオに限って自分の婚約者へ思いを寄せることはないと思うが、性格ががらりと変わったキャロラインへ興味を示しているであろうことはわかる。
(万が一、キャロラインがレオへ恋心を抱いてしまったらどうする?レオのことだ、受け入れることは絶対にしないだろう。だが、重要なのはそこじゃない。キャロラインの心が、俺以外に向けられることが気に食わない。そんなこと、あってはならない)
キャロラインから向けられた笑顔を思い出すと、心の中がほんのりと暖かくなる。暗い闇の中を歩いていたはずなのに、キャロラインと一緒にいると、急に光がさしたように世界が明るくなるのだ。失いたくない、手放したくないと思ってしまう。
もし、他の人間のように、キャロラインが自分を拒絶する日が突然来たとしたら、自分はどうなってしまうのか。考えたくもないのに、そんな不安が突然襲ってくる。今のキャロラインはそんな人間ではない、わかっているのに、どうしても不安で苦しくてどうにかなってしまいそうだ。
「そんな日が来たら、俺は本当に彼女のことを手にかけてしまうかもしれないな」
ぽつり、とクロークの独白が部屋の中に鳴り響いた。
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