12 / 82
人の姿のミゼル様と無茶振り
しおりを挟む
ミゼル様が山奥の瘴気を浄化した翌朝。
屋敷のそばにある小さな庭園で私は花を見ていた。ここの花達はジェシカやジョルジュによって綺麗に手入れされており、そのため妖精達がよく遊びに来ているのだ。
みんなには見えないらしいのだけれど、私はなぜか小さい頃から妖精の姿を見ることができた。今も花の周りをキラキラと小さな粒が舞っていて笑っているのがわかる。その笑い声は小さな鈴が鳴るような高くて可愛らしい音。
「楽しそうね」
妖精たちにそう話しかけると、鈴の音のような笑い声はさらに強くなって光の粒が飛び回っている。なんだか私まで楽しくなって一緒になって笑ってしまう。
「やぁ」
ふと後ろから声をかけられる。振り返ると、そこには綺麗な長めの銀髪を片側にゆるりと結んだとてつもない美しい人が立っていた。女性?男性?どちらとも言えないような中性的な雰囲気だ。ちょっとどこかの民族チックな服装をしている。
「あ、どうも……」
誰だろう?ランス様にお客様かな?しかしものすごい美人さん!!ランス様もかなりのイケメンだと思ったけど、こんなに美しい人がこの世にいるんだろうかという位だ。思わずぼーっと見惚れてしまう。
「ふふ、そんなに見つめないで。照れてしまうよ」
にこっと頬笑む姿も美しい。美しくて、ま、眩しすぎる。
「えっと、どどちら様でしょう?ランス様にご用でしょうか?」
気を取り直して尋ねると、またふふふ、と笑っている。
「誰だかわからないかな?」
???誰だろう。会ったことはないはずだけど、この雰囲気、どこかで感じたことがあるような……。
「あぁっ!まさかミゼル様?!」
「正解~!」
手をパチパチと叩いて嬉しそうに笑っている。
「この姿で会うのは初めましてだね、セシル」
まさか白龍様が人の姿になれるなんて知らなかった!でもさすがの美しさは納得だ。
「というわけでセシル、力を分けてもらいに来たよ」
そう言ってミゼル様はどんどん近づいてくる。目の前まで来て、顎に手をかけられた。
瞳は白龍姿の時と同じアクアマリンのようでとても綺麗。吸い込まれてしまいそうで目が離せない。
ぼんやりと見つめていると、あれ?どんどんミゼル様の顔が迫ってくる……。
「セシル、ここにいたんだ……って何してるんだミゼル!!!!」
ランス様の声がして我に返る。目の前には今にもキスされそうな距離のミゼル様の顔がある。
「?!?!」
驚いて後ずさると、ランス様にぶつかってそのままランス様の両手に包まれる。後ろから抱き締められてるような形になってるんですが……!
「やぁ、ランス」
「どういうつもりだ、ミゼル。人の姿になってセシルに何を……」
ランス様が怒っているのが背中越しにもわかる。
「何って、昨日の力の補充では足りなかったからもっと力をもらいにきたんだよ。ランスのやり方では全然足りないからね」
両手を広げてやれやれという仕草をする。昨日のでは足りなかったんだ……。
「でもだからってこんな急にセシルに迫るなんてダメじゃないか!」
「そんなに怒るなよ、ランス。君に言ったってきっと聞いてはくれないだろ?昨日だって軽く流したじゃないか。私が直接セシルからもらう方が利にかなってる」
昨日、ミゼル様からランス様には足りないと言ってたのか。だったらなぜランス様はそれを言ってくれなかったんだろう。
「ランス様、足りなかったのでしたら言ってくだされば……」
「いや、でも……」
振り返るとランス様は困惑した顔をしている。
「別にキスの一つや二ついいだろ。君達は結婚してるんだし、その結婚だって合意の上じゃないか。それをランスはいつまでも先伸ばしにするから」
そっか、抱き締めるだけでは力の補充は足りなかったんだ。でもランス様はキスしたくなくて……。
なぜだろう、胸の奥がモヤモヤする。
「ほら、セシルが不服そうな顔をしてるよ」
ミゼル様が私を見てそう言うと、ランス様は慌てはじめた。
「違うんだよ、セシル。君とキスしたくないとかそういうことじゃなくて」
「……じゃぁなんだって言うんですか」
思わずむくれてしまう。あぁ、嫌だな、こんなの子供っぽい。
「結婚してるとはいえ、契約結婚だし昨日はあまりにも急すぎて君も困るんじゃないかと思ったんだ」
頭をかきながら申し訳なさそうに言うランス様。
ランス様の気遣いはとっても嬉しい。嬉しいけど、でも。
「私はそんなに聖女として頼りないですか?」
じっとランス様を見つめると、ランス様はさらに困惑した顔で見つめ返してくる。
「ランス様と契約した時、この力をミゼル様とランス様のために役立てると決めたんです。力の分け方を聞いた時にはびっくりしましたけど……でも、聖女としての決意は揺るぎません」
そう言うと、ミゼル様は腕を組んでうんうんと嬉しそうに頷いた。
「だから、もし力が必要なのであればちゃんと言って欲しいです。キスまでなら大丈夫ですと、この間お話しましたよね」
私の気迫にランス様は驚いていたけれど、困った顔は次第に柔らかい微笑みに変わっていく。
「そっか、そうだよね。ごめんセシル。君のことを頼りないと思っていたわけではないんだ。君の決意はちゃんと伝わってるよ」
「だったら、さっさとキスしてくれよ。じゃないと私がセシルとキスして力を直接わけてもらう。白龍でも人の姿であれば力は同じように分けてもらえるんだから」
屋敷のそばにある小さな庭園で私は花を見ていた。ここの花達はジェシカやジョルジュによって綺麗に手入れされており、そのため妖精達がよく遊びに来ているのだ。
みんなには見えないらしいのだけれど、私はなぜか小さい頃から妖精の姿を見ることができた。今も花の周りをキラキラと小さな粒が舞っていて笑っているのがわかる。その笑い声は小さな鈴が鳴るような高くて可愛らしい音。
「楽しそうね」
妖精たちにそう話しかけると、鈴の音のような笑い声はさらに強くなって光の粒が飛び回っている。なんだか私まで楽しくなって一緒になって笑ってしまう。
「やぁ」
ふと後ろから声をかけられる。振り返ると、そこには綺麗な長めの銀髪を片側にゆるりと結んだとてつもない美しい人が立っていた。女性?男性?どちらとも言えないような中性的な雰囲気だ。ちょっとどこかの民族チックな服装をしている。
「あ、どうも……」
誰だろう?ランス様にお客様かな?しかしものすごい美人さん!!ランス様もかなりのイケメンだと思ったけど、こんなに美しい人がこの世にいるんだろうかという位だ。思わずぼーっと見惚れてしまう。
「ふふ、そんなに見つめないで。照れてしまうよ」
にこっと頬笑む姿も美しい。美しくて、ま、眩しすぎる。
「えっと、どどちら様でしょう?ランス様にご用でしょうか?」
気を取り直して尋ねると、またふふふ、と笑っている。
「誰だかわからないかな?」
???誰だろう。会ったことはないはずだけど、この雰囲気、どこかで感じたことがあるような……。
「あぁっ!まさかミゼル様?!」
「正解~!」
手をパチパチと叩いて嬉しそうに笑っている。
「この姿で会うのは初めましてだね、セシル」
まさか白龍様が人の姿になれるなんて知らなかった!でもさすがの美しさは納得だ。
「というわけでセシル、力を分けてもらいに来たよ」
そう言ってミゼル様はどんどん近づいてくる。目の前まで来て、顎に手をかけられた。
瞳は白龍姿の時と同じアクアマリンのようでとても綺麗。吸い込まれてしまいそうで目が離せない。
ぼんやりと見つめていると、あれ?どんどんミゼル様の顔が迫ってくる……。
「セシル、ここにいたんだ……って何してるんだミゼル!!!!」
ランス様の声がして我に返る。目の前には今にもキスされそうな距離のミゼル様の顔がある。
「?!?!」
驚いて後ずさると、ランス様にぶつかってそのままランス様の両手に包まれる。後ろから抱き締められてるような形になってるんですが……!
「やぁ、ランス」
「どういうつもりだ、ミゼル。人の姿になってセシルに何を……」
ランス様が怒っているのが背中越しにもわかる。
「何って、昨日の力の補充では足りなかったからもっと力をもらいにきたんだよ。ランスのやり方では全然足りないからね」
両手を広げてやれやれという仕草をする。昨日のでは足りなかったんだ……。
「でもだからってこんな急にセシルに迫るなんてダメじゃないか!」
「そんなに怒るなよ、ランス。君に言ったってきっと聞いてはくれないだろ?昨日だって軽く流したじゃないか。私が直接セシルからもらう方が利にかなってる」
昨日、ミゼル様からランス様には足りないと言ってたのか。だったらなぜランス様はそれを言ってくれなかったんだろう。
「ランス様、足りなかったのでしたら言ってくだされば……」
「いや、でも……」
振り返るとランス様は困惑した顔をしている。
「別にキスの一つや二ついいだろ。君達は結婚してるんだし、その結婚だって合意の上じゃないか。それをランスはいつまでも先伸ばしにするから」
そっか、抱き締めるだけでは力の補充は足りなかったんだ。でもランス様はキスしたくなくて……。
なぜだろう、胸の奥がモヤモヤする。
「ほら、セシルが不服そうな顔をしてるよ」
ミゼル様が私を見てそう言うと、ランス様は慌てはじめた。
「違うんだよ、セシル。君とキスしたくないとかそういうことじゃなくて」
「……じゃぁなんだって言うんですか」
思わずむくれてしまう。あぁ、嫌だな、こんなの子供っぽい。
「結婚してるとはいえ、契約結婚だし昨日はあまりにも急すぎて君も困るんじゃないかと思ったんだ」
頭をかきながら申し訳なさそうに言うランス様。
ランス様の気遣いはとっても嬉しい。嬉しいけど、でも。
「私はそんなに聖女として頼りないですか?」
じっとランス様を見つめると、ランス様はさらに困惑した顔で見つめ返してくる。
「ランス様と契約した時、この力をミゼル様とランス様のために役立てると決めたんです。力の分け方を聞いた時にはびっくりしましたけど……でも、聖女としての決意は揺るぎません」
そう言うと、ミゼル様は腕を組んでうんうんと嬉しそうに頷いた。
「だから、もし力が必要なのであればちゃんと言って欲しいです。キスまでなら大丈夫ですと、この間お話しましたよね」
私の気迫にランス様は驚いていたけれど、困った顔は次第に柔らかい微笑みに変わっていく。
「そっか、そうだよね。ごめんセシル。君のことを頼りないと思っていたわけではないんだ。君の決意はちゃんと伝わってるよ」
「だったら、さっさとキスしてくれよ。じゃないと私がセシルとキスして力を直接わけてもらう。白龍でも人の姿であれば力は同じように分けてもらえるんだから」
17
あなたにおすすめの小説
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
子供が可愛いすぎて伯爵様の溺愛に気づきません!
屋月 トム伽
恋愛
私と婚約をすれば、真実の愛に出会える。
そのせいで、私はラッキージンクスの令嬢だと呼ばれていた。そんな噂のせいで、何度も婚約破棄をされた。
そして、9回目の婚約中に、私は夜会で襲われてふしだらな令嬢という二つ名までついてしまった。
ふしだらな令嬢に、もう婚約の申し込みなど来ないだろうと思っていれば、お父様が氷の伯爵様と有名なリクハルド・マクシミリアン伯爵様に婚約を申し込み、邸を売って海外に行ってしまう。
突然の婚約の申し込みに断られるかと思えば、リクハルド様は婚約を受け入れてくれた。婚約初日から、マクシミリアン伯爵邸で住み始めることになるが、彼は未婚のままで子供がいた。
リクハルド様に似ても似つかない子供。
そうして、マクリミリアン伯爵家での生活が幕を開けた。
虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました
たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。
【完結】番としか子供が産まれない世界で
さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。
何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。
そんなニーナが番に出会うまで
4話完結
出会えたところで話は終わってます。
行き遅れのお節介令嬢、氷の公爵様と結婚したら三人娘の母になりました
鳥柄ささみ
恋愛
お節介焼きで困っている人を放っておけないシアは、数多のご令嬢達から人気の令嬢だ。毎日ファンレターが届き、社交界に出れば令嬢に取り囲まれるほどである。
けれど、それに反比例するように男性からの人気はなく、二十七だというのに嫁の貰い手もないため、毎日母から小言をもらっていた。
そんなある日のこと、突然公爵家から縁談の話が。
シアは公爵家がなぜ自分に縁談など持ち掛けるのかと訝しく思いつつ話を受けると、なんと公爵の後妻として三人の娘の母代わりになれと言われる。
困惑するも、自分へ縁談を持ちかけた理由を聞いて、お節介なシアは嫁ぐこと決めたのだった。
夫になるレオナルドはイケメンなのに無表情で高圧的。三人の娘も二女のアンナを除いて長女のセレナも三女のフィオナもとても反抗的。
そんな中でもお節介パワーを発揮して、前向きに奮闘するシアの物語。
※他投稿サイトにも掲載中
転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。
琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。
ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!!
スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。
ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!?
氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。
このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。
【完結】 異世界に転生したと思ったら公爵令息の4番目の婚約者にされてしまいました。……はあ?
はくら(仮名)
恋愛
ある日、リーゼロッテは前世の記憶と女神によって転生させられたことを思い出す。当初は困惑していた彼女だったが、とにかく普段通りの生活と学園への登校のために外に出ると、その通学路の途中で貴族のヴォクス家の令息に見初められてしまい婚約させられてしまう。そしてヴォクス家に連れられていってしまった彼女が聞かされたのは、自分が4番目の婚約者であるという事実だった。
※本作は別ペンネームで『小説家になろう』にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる