聖女として白龍の生贄になると思ったらなぜか騎士様と契約結婚することになって愛されています

鳥花風星

文字の大きさ
27 / 82

抱きしめたい(ランス視点)

しおりを挟む
「……ランス様って、もしかして私のこと、好きなんですか?」

 セシルにそう言われて思わず顔が赤くなっていくのがわかる。自覚はしているけれど、セシル自身にそんな風に言われてしまうと流石に恥ずかしい。

 言った当の本人は、やってしまった!という顔をしてこちらを見ている。言うつもりはなかったのだろう、思わず口に出たと言わんばかりの顔をしている。

「っ、っはははは!」

 思わず笑ってしまう。笑う所でないのはわかっているけれど、セシルの言動があまりにも面白くて、つい。笑っている俺の顔をセシルは呆然と見ているけれど、その顔もまた面白くて笑ってしまった。

「ははは、ごめん。こんな時に笑うなんて間違ってるのはわかってるんだけど。はぁ。でも、笑って力が抜けたよ」

 セシルを見ると顔が真っ赤だ。恥ずかしいのと自分が言った言葉の意味で混乱しているんだろうな。そんな所も愛おしい。

「そうだよ、君の言う通り俺は君のことが好きだ。だから大切に思っているし、安易にキスやそれ以上のこともお互いの気持ちがないならやるべきではないと思った。ミゼルに対しても嫉妬してしまう。君のことが大事だから」

 セシルの手をとってそっと口付けると、セシルはさらに顔を真っ赤にする。

「誤解、これで解けたかな?」

 セシルを見つめると、セシルは首をブンブンと大きく縦に振る。

「よかった」

 まさかセシルがそんなことを思っていたなんて思いもよらなかったけれど、誤解が解けて自分の気持ちも伝えることができてホッとしている。

「他に、話しておきたいことはある?」

 この際だからセシルが気になることや言いたいことがあるならちゃんと聞いておきたい。ユーズ団長も騎士と聖女とのコミュニケーションは大事だと言っていたし。

「……あの、私もランス様にお伝えしておかなければいけないことがありまして」

 両手を胸の前でぎゅっと握っている。なんだろう、とても大切な話だろうか。促すようにセシルの顔を見ると、セシルは意を決したような瞳で俺を見た。そうだ、この瞳。聖女の力について知った時、契約すると決意した時の瞳と同じ意志の強い美しい瞳だ。

「ランス様は、キスやそれ以上のことはお互いの気持ちがないならやるべきではないと思ってくださっているのですよね。でも、大丈夫なんです。私も、その、ランス様のことが……」

 そう言って俯くセシル。あれ、まさかこれって……。

「私もランス様のことが好きなんです。……たぶん。よくわからないけれど、ランス様のことを考えると胸がぎゅっとなるし、ランス様の笑顔を見ると胸の高鳴りが止まなくて……きっとこれが好きっていう気持ちなのかなって」

 ゆっくり、一つ一つ言葉を選ぶようにしてそう言うセシルの顔は神々しくとても美しかった。聖女だから、なのかもしれないけれど、それだけじゃない。セシルだからそう思うんだ。

「だから、ランス様とキスすることは問題ありません。キス以上のことは……その、まだ心の準備ができていないので大丈夫とは言えません。でも、力がどうしても必要だったり沢山補充しなければいけない場合は、ちゃんと言ってください。知らないままでいるのは嫌なんです」

 そう言ってこちらを見るセシルの瞳はほんの少し潤んでいた。意志の強い瞳に涙の膜が張り光が当たってキラキラとしている。まるで吸い込まれそうな瞳だ。

「……わかった。ごめん、力についてはちゃんと相談すべきだったね。俺が勝手に考え込んで勝手に決めてしまっていたから、セシルのことを不安にさせてしまったんだ。これからはちゃんと相談するよ」

 そう言うと、セシルはホッとしたように微笑む。あぁ、可愛い。可愛いがすぎる。やばい、抱きしめたい。

「……セシル、抱きしめてもいい?」

 そう聞くと、セシルはキョトンとしている。

「今、虹の力が必要なのですか?白龍の力が不足しているのですか?あ、もしかして白龍の騎士特有のあの病の症状がまた?あれから気になってたんです、また夜中に苦しんでいたりしないかと」

 なので今日はちゃんと枕を持ってきたんですよ!とドヤ顔で言うセシル。全く、この子は表情がクルクル変わって本当に面白い。それにこうやって俺のことを気にしてくれて……。

「違う、そうじゃないんだ。力分けとは関係なく、俺がセシルを抱きしめたいんだ。だめ、かな?」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

子供が可愛いすぎて伯爵様の溺愛に気づきません!

屋月 トム伽
恋愛
私と婚約をすれば、真実の愛に出会える。 そのせいで、私はラッキージンクスの令嬢だと呼ばれていた。そんな噂のせいで、何度も婚約破棄をされた。 そして、9回目の婚約中に、私は夜会で襲われてふしだらな令嬢という二つ名までついてしまった。 ふしだらな令嬢に、もう婚約の申し込みなど来ないだろうと思っていれば、お父様が氷の伯爵様と有名なリクハルド・マクシミリアン伯爵様に婚約を申し込み、邸を売って海外に行ってしまう。 突然の婚約の申し込みに断られるかと思えば、リクハルド様は婚約を受け入れてくれた。婚約初日から、マクシミリアン伯爵邸で住み始めることになるが、彼は未婚のままで子供がいた。 リクハルド様に似ても似つかない子供。 そうして、マクリミリアン伯爵家での生活が幕を開けた。

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

【完結】番としか子供が産まれない世界で

さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。 何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。 そんなニーナが番に出会うまで 4話完結 出会えたところで話は終わってます。

行き遅れのお節介令嬢、氷の公爵様と結婚したら三人娘の母になりました

鳥柄ささみ
恋愛
お節介焼きで困っている人を放っておけないシアは、数多のご令嬢達から人気の令嬢だ。毎日ファンレターが届き、社交界に出れば令嬢に取り囲まれるほどである。 けれど、それに反比例するように男性からの人気はなく、二十七だというのに嫁の貰い手もないため、毎日母から小言をもらっていた。 そんなある日のこと、突然公爵家から縁談の話が。 シアは公爵家がなぜ自分に縁談など持ち掛けるのかと訝しく思いつつ話を受けると、なんと公爵の後妻として三人の娘の母代わりになれと言われる。 困惑するも、自分へ縁談を持ちかけた理由を聞いて、お節介なシアは嫁ぐこと決めたのだった。 夫になるレオナルドはイケメンなのに無表情で高圧的。三人の娘も二女のアンナを除いて長女のセレナも三女のフィオナもとても反抗的。 そんな中でもお節介パワーを発揮して、前向きに奮闘するシアの物語。 ※他投稿サイトにも掲載中

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

異世界に落ちて、溺愛されました。

恋愛
満月の月明かりの中、自宅への帰り道に、穴に落ちた私。 落ちた先は異世界。そこで、私を番と話す人に溺愛されました。

【完結】 異世界に転生したと思ったら公爵令息の4番目の婚約者にされてしまいました。……はあ?

はくら(仮名)
恋愛
 ある日、リーゼロッテは前世の記憶と女神によって転生させられたことを思い出す。当初は困惑していた彼女だったが、とにかく普段通りの生活と学園への登校のために外に出ると、その通学路の途中で貴族のヴォクス家の令息に見初められてしまい婚約させられてしまう。そしてヴォクス家に連れられていってしまった彼女が聞かされたのは、自分が4番目の婚約者であるという事実だった。 ※本作は別ペンネームで『小説家になろう』にも掲載しています。

処理中です...