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聖女リラと白龍ジュイン(ロイ視点)
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騎士団本部でランスとリラの話をしながら、俺はリラが来たばかりの頃を思い出していた。
リラが聖女として契約を結び、屋敷に来てからも俺や屋敷の人間とはほぼ目を合わせない。話しかけても頷く、首を傾げる、たまに二言三言返事をするくらいだ。
「なぁ、どうしてリラを聖女に選んだんだ?あの教会からリラを連れて来れたのは良かったと思うが、どう考えても聖女としては成り立たないだろう。お前だって力分けをしてもらえなければ困るだろ、ジュイン」
俺の目の前には人の姿をした白龍、ジュインがいる。ジュインは薄い黄緑かかった白髪を風に靡かせて微笑んでいる。どの白龍もそうだが、ジュインも人の姿になると人外な美しさだ。
「私に向かってお前呼びできるのは君くらいだよ、ロイ。本当に君は面白いね、君を騎士に選んでよかったよ。それに、リラを聖女に選んだのは私の力と適合するからだし、騎士である君とも適合するから、それだけだよ」
何も困ることはないだろうと言わんばかりに平然としている。いやいや、俺は実際に困っているんだが。
「コミュニケーションは取れない、それにそもそも死にたがっていたような子だぞ。またいつ気が変わって死にたいと泣き喚くかわからないだろ。どうしたら良いんだよ」
ため息まじりに苦言すると、ジュインはふっと口の端を上げて笑う。いちいち絵になるほどイケメンでなんかムカつくな。
「あの子はそこまで馬鹿じゃない。生きると決めたんだ、もう揺らぐことはないだろう。あとは君があの子とどう仲良くなれるか、それだけだよ。君なら簡単にできるだろう、大丈夫。信頼してるよ」
にっこりと微笑まれる。畜生、こいつ人ごとみたいに言いやがって。
「それにもしも君でだめな時には私が直接力分けをしてもらうから心配いらない。私が選んだ聖女なんだから強行することもできる」
「いや、あの子にそんなことしたら……」
今までだっておそらくは教会で身勝手で酷い目に遭ってきたのだろう、ここに来てまでそんな身勝手なことをされるのは可哀想すぎるだろ。
「可哀想だというなら君がなんとかするんだね。できないならこの話はここまでだ」
「おい、お前それはないだろ!」
「じゃ、君なりに頑張りなよ。私は見守っているからさ」
ふふ、と微笑みながら俺の後ろを見て手を振るジュイン。振り返るとそこにはリラがいた。
「ロイ、白龍様と、お話してるの?」
「あ、あぁ、そうだけど、どうかしたか?」
薄紫のツインテールが風に靡く。ふんわりとしたワンピースもお似合いだ。見た目だけだと本当にただの幼い子供にしか見えないな。自分から話しかけてくるなんて初めてじゃないか、どうしたんだろう。
「リラも、白龍様と、お話、したいの」
「リラ、私のことはジュインと呼んでくれて構わないよ」
リラはジュインのことを真っ直ぐに見つめている。俺や屋敷の人間とはほとんど目を合わせないのに、ジュインとは目を合わせることができるのかよ。
「ジュイン、力分けのこと、教えてほしいの」
「いいよ。力分けはね、基本的にはロイからしてもらうんだ。任務で白龍の力を消費した際、その力の量によって補充のために手を握る、抱きしめる、キスをする。それからもっと大量に白龍の力を消費した時には、ロイと男女の交わりをしてもらうことになる。もしロイとの力分けを嫌だと思うのなら、私と直接力分けすることもできるよ。それは君が選んでいい」
力分けについて説明されている時も、リラは一切表情を変えない。キスや男女の交わりという言葉を聞いても、だ。
「……わかったの。別にロイでもジュインでもどちらでも構わない。必要な時に言ってほしいの」
「おい、ちょっと待てよ。本当に意味わかってるのか?好きでもない男とそういうことしなきゃいけないってことだぞ」
慌てて口を出すが、リラは表情ひとつ変えずこちらを見る。その瞳はあまりにも空虚で思わず怯むほどだ。
「それが聖女としての役割なら別に構わないの。生きていなければいけないなら、やるべきことをやるだけ」
あの時言ったリラの言葉、表情を思い出して思わずため息が出る。
「ロイ、大丈夫か?」
「あぁ、まだまだ前途多難だなと思って」
あれから少しずつ少しずつ、リラとの距離は縮まってはいる。知らない人間のいる場所では俺だけが頼りのようで俺に纏わりついてくるし。でも、まだその程度だ。
ありがたいことに力を多く消費する任務はまだ任されておらず、手を握るくらいで力分けは済んでいる。多分ユーズ団長が任務の振り分けを考えてくれているんだろう。
「お前のところは純風満帆そうで羨ましいよ」
セシルとランスを交互に見てそんな言葉が出た。
「そうかな、……そうかもしれない。でも、いまだにあんな素敵な子の相手が俺なんかで良いのかなって考えてしまうよ。あの子に見合うために努力しないといけない」
「お前は自分のことになると途端にマイナス思考になるからなぁ」
見るからにイケメン、中身だってハイスペックと言われてもおかしくないほどの男なのに。だがそこに胡座を欠かずに常に自分を見つめ高めようとするあたりは誉めるべきところかもしれない。
セシルとリラの方を見ると、リラはどうやらセシルに心を開いたようで少しだけ笑っている。ベル様以外にも気軽に話せる聖女が身近にいることはありがたい。このまま仲良くしてやってほしいものだ。
リラが聖女として契約を結び、屋敷に来てからも俺や屋敷の人間とはほぼ目を合わせない。話しかけても頷く、首を傾げる、たまに二言三言返事をするくらいだ。
「なぁ、どうしてリラを聖女に選んだんだ?あの教会からリラを連れて来れたのは良かったと思うが、どう考えても聖女としては成り立たないだろう。お前だって力分けをしてもらえなければ困るだろ、ジュイン」
俺の目の前には人の姿をした白龍、ジュインがいる。ジュインは薄い黄緑かかった白髪を風に靡かせて微笑んでいる。どの白龍もそうだが、ジュインも人の姿になると人外な美しさだ。
「私に向かってお前呼びできるのは君くらいだよ、ロイ。本当に君は面白いね、君を騎士に選んでよかったよ。それに、リラを聖女に選んだのは私の力と適合するからだし、騎士である君とも適合するから、それだけだよ」
何も困ることはないだろうと言わんばかりに平然としている。いやいや、俺は実際に困っているんだが。
「コミュニケーションは取れない、それにそもそも死にたがっていたような子だぞ。またいつ気が変わって死にたいと泣き喚くかわからないだろ。どうしたら良いんだよ」
ため息まじりに苦言すると、ジュインはふっと口の端を上げて笑う。いちいち絵になるほどイケメンでなんかムカつくな。
「あの子はそこまで馬鹿じゃない。生きると決めたんだ、もう揺らぐことはないだろう。あとは君があの子とどう仲良くなれるか、それだけだよ。君なら簡単にできるだろう、大丈夫。信頼してるよ」
にっこりと微笑まれる。畜生、こいつ人ごとみたいに言いやがって。
「それにもしも君でだめな時には私が直接力分けをしてもらうから心配いらない。私が選んだ聖女なんだから強行することもできる」
「いや、あの子にそんなことしたら……」
今までだっておそらくは教会で身勝手で酷い目に遭ってきたのだろう、ここに来てまでそんな身勝手なことをされるのは可哀想すぎるだろ。
「可哀想だというなら君がなんとかするんだね。できないならこの話はここまでだ」
「おい、お前それはないだろ!」
「じゃ、君なりに頑張りなよ。私は見守っているからさ」
ふふ、と微笑みながら俺の後ろを見て手を振るジュイン。振り返るとそこにはリラがいた。
「ロイ、白龍様と、お話してるの?」
「あ、あぁ、そうだけど、どうかしたか?」
薄紫のツインテールが風に靡く。ふんわりとしたワンピースもお似合いだ。見た目だけだと本当にただの幼い子供にしか見えないな。自分から話しかけてくるなんて初めてじゃないか、どうしたんだろう。
「リラも、白龍様と、お話、したいの」
「リラ、私のことはジュインと呼んでくれて構わないよ」
リラはジュインのことを真っ直ぐに見つめている。俺や屋敷の人間とはほとんど目を合わせないのに、ジュインとは目を合わせることができるのかよ。
「ジュイン、力分けのこと、教えてほしいの」
「いいよ。力分けはね、基本的にはロイからしてもらうんだ。任務で白龍の力を消費した際、その力の量によって補充のために手を握る、抱きしめる、キスをする。それからもっと大量に白龍の力を消費した時には、ロイと男女の交わりをしてもらうことになる。もしロイとの力分けを嫌だと思うのなら、私と直接力分けすることもできるよ。それは君が選んでいい」
力分けについて説明されている時も、リラは一切表情を変えない。キスや男女の交わりという言葉を聞いても、だ。
「……わかったの。別にロイでもジュインでもどちらでも構わない。必要な時に言ってほしいの」
「おい、ちょっと待てよ。本当に意味わかってるのか?好きでもない男とそういうことしなきゃいけないってことだぞ」
慌てて口を出すが、リラは表情ひとつ変えずこちらを見る。その瞳はあまりにも空虚で思わず怯むほどだ。
「それが聖女としての役割なら別に構わないの。生きていなければいけないなら、やるべきことをやるだけ」
あの時言ったリラの言葉、表情を思い出して思わずため息が出る。
「ロイ、大丈夫か?」
「あぁ、まだまだ前途多難だなと思って」
あれから少しずつ少しずつ、リラとの距離は縮まってはいる。知らない人間のいる場所では俺だけが頼りのようで俺に纏わりついてくるし。でも、まだその程度だ。
ありがたいことに力を多く消費する任務はまだ任されておらず、手を握るくらいで力分けは済んでいる。多分ユーズ団長が任務の振り分けを考えてくれているんだろう。
「お前のところは純風満帆そうで羨ましいよ」
セシルとランスを交互に見てそんな言葉が出た。
「そうかな、……そうかもしれない。でも、いまだにあんな素敵な子の相手が俺なんかで良いのかなって考えてしまうよ。あの子に見合うために努力しないといけない」
「お前は自分のことになると途端にマイナス思考になるからなぁ」
見るからにイケメン、中身だってハイスペックと言われてもおかしくないほどの男なのに。だがそこに胡座を欠かずに常に自分を見つめ高めようとするあたりは誉めるべきところかもしれない。
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