聖女として白龍の生贄になると思ったらなぜか騎士様と契約結婚することになって愛されています

鳥花風星

文字の大きさ
32 / 82

リラの思い

しおりを挟む
「リラは、生きていたくなんてなかった。生贄になれて嬉しかったのに……」

 リラの言葉を聞いて驚いてしまう。それってつまり、生きていたくない、死にたかったってこと?

「えっと、それはどうして?」

 聞いていいのかどうかわからないことの気がするけれど、でも聞かずにはいられない。一体どういうことなのだろう。

「生贄になる人間は、どうせ死ぬ、だからどうでもいいの。そう言われて生きてきたの」

 リラがいた教会では、聖女であるリラのことを生贄でどうせ死ぬのだからと酷い扱いを受けてきたらしい。狭い部屋に一人閉じ込められまるで召使いのように扱われ、食事もろくに与えられていなかったそうだ。

「そんな……」

 私がいた教会では、生贄になっていずれ死んでしまうからこそ、生きているうちはなるべく不自由のないようにと他の修道女や教会の人間より少しだけ優遇されていた。教会によっても聖女に対してこんなに違うなんて。

「ロイが迎えに来てくれた時、本当に嬉しかったの。ようやくこの生活が終わる、ようやく死ねるって。それなのに、まさか、生贄にならず、これからも生きていかなければいけないなんて、思いもよらなかったの」

 小さくため息をついてリラは呟く。そんなリラにどんな言葉をかけてあげればいいのか見当もつかない。

「……でも、ロイやジュインが優しくしてくれるから、今は、ロイの所に来れて、よかったと思ってるの」

 ジュインというのはロイとリラの白龍の名前らしい。

「そっか、よかったね」

 リラの言葉を聞いてホッとすると、リラは少し微笑んだ後また顔を曇らせた。

「でも、やっぱり、困ってるの。ロイやお屋敷の人達と、どう接していいかわからない。うまく、話すことができないから」

 悲しげに床を見つめるリラ。そっか、今まで酷い扱いを受けてきたせいで人との接し方がわからないんだ。それほどまでの扱いを受けてきただなんて……。

「リラの教会での生活をロイ様やお屋敷の人達は知っているのよね?だったらきっと大丈夫よ。ロイ様たちもリラに合わせてくれるわ。少しずつ、少しずつでいいのよ」

 リラの顔を覗き込むと、リラはほんの少し照れて頬を赤く染めた。あぁ、なんて可愛らしいのだろう。こんなに可愛い子を召使いのようにこき使うだなんて、リラのいた教会は一体どうなっているのかしら。だんだん腹が立ってきた!

「ベル様にも、そう言われたの。でも、時間がかかればかかるほど、ロイ達に迷惑がかかってしまう。それは、悲しいの。ロイは、リラを救ってくれた、騎士だから」

 スカートの裾をぎゅっと握ってリラはそう呟いた。リラにとってロイ様はきっと特別で、リラなりに頑張ろうと思っているのだろう。

「きっとロイ様もわかってくださるわ。その気持ち、伝えてみて?実際に伝えてみなければわからないこともあるもの。あ、これはベル様の受け売りね」

 軽くウィンクすると、リラは両目を大きく見開いてから小さくクスクスと笑った。よかった、少しは心が解れたみたい。

「……ありがとう。少し気持ちが、楽になった気がするの。会議が終わって、帰ったら、ロイに話してみる」

 リラが微笑んでお礼を言ってくれた。嬉しくて私まで満面の笑みになってしまう。ベル様以外の聖女と話ができて、仲良くなれてよかった!




「よーし、みんな揃ったようだな。一度全員席に着いてくれ」

 ユーズ団長が会議室の前方に立って声を上げる。その声で騎士や聖女達はそれぞれ席に着き始める。

「私達もロイ様達の所へ行きましょう」

 リラにそう言ってランス様とロイ様の方を見ると、お二人がこちらに向かって歩いてきた。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

子供が可愛いすぎて伯爵様の溺愛に気づきません!

屋月 トム伽
恋愛
私と婚約をすれば、真実の愛に出会える。 そのせいで、私はラッキージンクスの令嬢だと呼ばれていた。そんな噂のせいで、何度も婚約破棄をされた。 そして、9回目の婚約中に、私は夜会で襲われてふしだらな令嬢という二つ名までついてしまった。 ふしだらな令嬢に、もう婚約の申し込みなど来ないだろうと思っていれば、お父様が氷の伯爵様と有名なリクハルド・マクシミリアン伯爵様に婚約を申し込み、邸を売って海外に行ってしまう。 突然の婚約の申し込みに断られるかと思えば、リクハルド様は婚約を受け入れてくれた。婚約初日から、マクシミリアン伯爵邸で住み始めることになるが、彼は未婚のままで子供がいた。 リクハルド様に似ても似つかない子供。 そうして、マクリミリアン伯爵家での生活が幕を開けた。

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

【完結】番としか子供が産まれない世界で

さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。 何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。 そんなニーナが番に出会うまで 4話完結 出会えたところで話は終わってます。

行き遅れのお節介令嬢、氷の公爵様と結婚したら三人娘の母になりました

鳥柄ささみ
恋愛
お節介焼きで困っている人を放っておけないシアは、数多のご令嬢達から人気の令嬢だ。毎日ファンレターが届き、社交界に出れば令嬢に取り囲まれるほどである。 けれど、それに反比例するように男性からの人気はなく、二十七だというのに嫁の貰い手もないため、毎日母から小言をもらっていた。 そんなある日のこと、突然公爵家から縁談の話が。 シアは公爵家がなぜ自分に縁談など持ち掛けるのかと訝しく思いつつ話を受けると、なんと公爵の後妻として三人の娘の母代わりになれと言われる。 困惑するも、自分へ縁談を持ちかけた理由を聞いて、お節介なシアは嫁ぐこと決めたのだった。 夫になるレオナルドはイケメンなのに無表情で高圧的。三人の娘も二女のアンナを除いて長女のセレナも三女のフィオナもとても反抗的。 そんな中でもお節介パワーを発揮して、前向きに奮闘するシアの物語。 ※他投稿サイトにも掲載中

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件

三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。 ※アルファポリスのみの公開です。

異世界に落ちて、溺愛されました。

恋愛
満月の月明かりの中、自宅への帰り道に、穴に落ちた私。 落ちた先は異世界。そこで、私を番と話す人に溺愛されました。

処理中です...