聖女として白龍の生贄になると思ったらなぜか騎士様と契約結婚することになって愛されています

鳥花風星

文字の大きさ
36 / 82

魔王討伐祭の任務(ランス視点)

しおりを挟む
「ちょうどいい、お前達には次の任務の話をしようと思っていた。聖女様と一緒に後で俺の執務室に来てくれないか」

 会議の後、ユーズ団長にそう言われて今俺たちはユーズ団長の執務室にいた。執務室の中にはユーズ団長、俺とセシル、ロイとリラがいる。

「来週、王都近くのニケ大森林で大規模な討伐祭が行われるのは知っているな」

討伐祭。年に一度、増えすぎた魔物を大々的に討伐する催し物が開かれる。ニケ大森林はその名の通り広々としたほとんど人の手の入らない大森林で魔物が多く住んでいる。手付かずの場所のため、定期的に討伐を行わないと魔物が増えすぎてしまうのだ。

 しかも、魔物が増えすぎるとなぜか突然変異で尋常ではない魔力を持つ異常な魔物が発生するため、それを阻止する目的も含まれている。

 討伐祭では一番多く魔物を倒した騎士に国王から名誉と勲章、さらに望む場合には地位や財産を授けられることになっている。どう考えても命の危険のある討伐を嫌がらずに率先して行ってもらうための策だ。

「討伐祭には王都の騎士団の騎士みの参加のはずでは?」

 白龍使いの騎士は王都の騎士とは王都内での役割が違う。それにわざわざ希少価値のある白龍使いの騎士を本体の目的以外で命の危険に晒すわけにはいかないのだ。

「そのはずなのだが、この数年の瘴気騒動のおかげで騎士数が減ってしまってな。さらに各地の瘴気のせいかはわからないが、大森林の魔物が例年より強くなっているそうだ」

 討伐祭のため大森林へ下見に行った騎士数名が魔物と対峙しその強さに命を落としかけたという。

「このままでは討伐祭に参加する騎士があまりにも少ないと国王が危惧している。それで矛先が白龍使いの騎士にまで及んだというわけだ。白龍使いの騎士達には王都の騎士達の援護をお願いしたいらしい」

 何かあれば白龍の力を使って王都の騎士を守れ、そういうことなのだろう。

「ランスとセシルには前衛で騎士の援護を、ロイとリラには後方で負傷組の治療や救護班に近づく魔物の討伐を行って欲しい。俺とベルは白龍使いの騎士と聖女の統括を行うが、場合によっては前衛に行く可能性もある」

 任務は王都の騎士達の援護。王都の騎士達の強さは国内でもトップを誇っており、騎士達がいるからこそ国民も安心して生活できている。その騎士達さえ命の危険がある魔物とは一体どれだけの強さなのだろう。

「討伐祭では恐らくかなりの力を消費するだろう。その時を狙って誘拐犯は騎士や聖女に近づいてくるかもしれない。くれぐれも気を引き締めてくれ」

 ユーズ団長の言葉に、その場の空気がピリリとする。

「お前達の他にも何組かペアを任務に向かわせる予定だ。討伐祭前に王都の騎士を含めた打ち合わせがあるから、その際に顔合わせをするといい」




 ユーズ団長からの任務の話が終わり、解散となった。

「またな、ランス。次に会うのは討伐祭の打ち合わせだろうな」

「あぁ。また会おう」

「セシル、色々と、ありがとう。また会えるの、楽しみ」

「私も楽しみよ、リラ。またね」

 セシルがリラと会話をしているのを見ていると、フワッと清らかな力を感じる。近くの広場にはいつの間にかロイ達の白龍、ジュインが白龍の姿で鎮座していた。

「よし、それじゃジュイン、行こうか」

 ロイが白龍の背に乗り、リラの手を優しく引いて自分の前に座らせる。リラは相変わらず真顔だが、ほんの少しだけ口元が上向きに弧を描いている。

「またな!」

「あぁ!」

 ロイ達を乗せた白龍ジュインが高く高く空へと登って行くのを見届けると、俺はセシルの方を向いた。

「それじゃ、俺たちも帰ろうか」

 そう言うとセシルは軽く頷いたが、表情が暗い。

「どうかした?」

 覗き込むと、目が合ってほんのり顔を赤らめた。セシルってばいつまで経っても可愛い反応をするな。

「いえ、誘拐騒ぎや討伐任務、立て続けに色々と聞かされて頭がついていかないというか、考えてしまって……」

 優しくセシルの手を握る。

「大丈夫、セシルのことは何があっても俺が守るよ。だから安心して」

 ね?と微笑むと、セシルも少しだけ微笑んでくれた。よかった、セシルにはやっぱり笑顔が似合う。この笑顔を絶対に守りたい、守ってみせる、どんなことがあっても。

 ふと、討伐際に参加するということは必然的に会わざるを得ない昔の上司の顔を思い出してしまった。あの人に会うのはなんだかあまり気が進まないな。またセシルにちょっかいを出されるようなことがあればたまったもんじゃない。

 仕事はできるが普段から何を考えているのかわからない王都騎士団団長、ケインズ団長の顔を思い浮かべながら空を仰いで俺は思わずため息をついた。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

子供が可愛いすぎて伯爵様の溺愛に気づきません!

屋月 トム伽
恋愛
私と婚約をすれば、真実の愛に出会える。 そのせいで、私はラッキージンクスの令嬢だと呼ばれていた。そんな噂のせいで、何度も婚約破棄をされた。 そして、9回目の婚約中に、私は夜会で襲われてふしだらな令嬢という二つ名までついてしまった。 ふしだらな令嬢に、もう婚約の申し込みなど来ないだろうと思っていれば、お父様が氷の伯爵様と有名なリクハルド・マクシミリアン伯爵様に婚約を申し込み、邸を売って海外に行ってしまう。 突然の婚約の申し込みに断られるかと思えば、リクハルド様は婚約を受け入れてくれた。婚約初日から、マクシミリアン伯爵邸で住み始めることになるが、彼は未婚のままで子供がいた。 リクハルド様に似ても似つかない子供。 そうして、マクリミリアン伯爵家での生活が幕を開けた。

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

【完結】番としか子供が産まれない世界で

さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。 何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。 そんなニーナが番に出会うまで 4話完結 出会えたところで話は終わってます。

行き遅れのお節介令嬢、氷の公爵様と結婚したら三人娘の母になりました

鳥柄ささみ
恋愛
お節介焼きで困っている人を放っておけないシアは、数多のご令嬢達から人気の令嬢だ。毎日ファンレターが届き、社交界に出れば令嬢に取り囲まれるほどである。 けれど、それに反比例するように男性からの人気はなく、二十七だというのに嫁の貰い手もないため、毎日母から小言をもらっていた。 そんなある日のこと、突然公爵家から縁談の話が。 シアは公爵家がなぜ自分に縁談など持ち掛けるのかと訝しく思いつつ話を受けると、なんと公爵の後妻として三人の娘の母代わりになれと言われる。 困惑するも、自分へ縁談を持ちかけた理由を聞いて、お節介なシアは嫁ぐこと決めたのだった。 夫になるレオナルドはイケメンなのに無表情で高圧的。三人の娘も二女のアンナを除いて長女のセレナも三女のフィオナもとても反抗的。 そんな中でもお節介パワーを発揮して、前向きに奮闘するシアの物語。 ※他投稿サイトにも掲載中

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件

三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。 ※アルファポリスのみの公開です。

異世界に落ちて、溺愛されました。

恋愛
満月の月明かりの中、自宅への帰り道に、穴に落ちた私。 落ちた先は異世界。そこで、私を番と話す人に溺愛されました。

処理中です...