聖女として白龍の生贄になると思ったらなぜか騎士様と契約結婚することになって愛されています

鳥花風星

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それぞれの明日へ

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 聖女誘拐事件に幕が降りて一週間後、白龍使いの騎士団本部で報告会議が行われた。

 会議には白龍使いの騎士様や白龍様、そして聖女様たちみんなが集められ、サリ国のこと、黒銀の龍との戦い、サリ国の男ベイルとの戦い、白龍リオン様のことについて白龍ギール様が静かに話始める。

「サリ国で起こったことは我々にとって他人事ではない。聖女と騎士の仲がきちんと築けていなければ我が国にも起こり得ることなのだ。他人同士だからこそわかり合おうとする気持ち、歩み寄ろうとする姿勢が必要だ。それは片方だけで成り立つことではない。双方が相手を思いやる気持ちを伝え合うことが大切になる」

 ギール様は静かに目を伏せてからゆっくりと全体を見渡した。

「我々白龍にとって聖女と騎士の繋がりはとても重要だ。だが、ただそれだけで良いというわけではない。きちんと愛を育んでもらいたいのだ。聖女と騎士の間でしっかりと愛を育むことで、今回のような悲しい事件は防ぐことができる」

 他の白龍様たちもギール様の言葉を聞きながら静かに微笑んでいる。

「どうか今一度それぞれのパートナーと向き合い、絆を深めあってほしい。そしてこれからもこの国のためにその力を存分に発揮してほしい。私からは以上だ」

 ギール様の話をその場にいた騎士様たちも聖女様たちも皆真剣に聞いていた。
 ふと、隣にいたランス様の手が私の手を掴んでしっかりと握りしめる。ランス様の顔を見ると目があって、ランス様が静かに優しく微笑んできた。
 いつもいつも、とっても優しくて暖かい微笑み。私は何度この微笑みに救われて胸をときめかせただろう。これからもずっとずっと見ていたい、そう思いながら私もランス様に微笑んだ。


◇◆◇◆


 聖女誘拐事件の報告会議が終わって一ヶ月が経った。
 珍しく白龍ミゼル様が人の姿で遊びに来たので、庭で一緒にお茶をしている。

「ミゼル様が遊びにいらっしゃるなんて珍しいですね」
「今日はランスが外出しているだろう、セシルがたいくつしてるんじゃないかと思って」

 ふふ、と頬笑むミゼル様は相変わらず人外級の美しさだけどだいぶ見慣れた感じがする。見慣れたところでやっぱり美しくてクラクラするけど。

「そういえばニオは相変わらずのようだね」

 白龍リオン様を失ったニオ様はケインズ団長に引き取られて一緒に住んでいるらしい。ニオ様のしたことは国を脅かす一大事だったので処罰がくだされるはずだったけれど、ケインズ団長が自ら監視下におくということでとりあえず処罰は保留になったそうだ。

 ケインズ団長の屋敷に引き取られたニオ様は何をするでもなくずっと上の空で過ごしているらしい。
 たった一人愛するリオン様を失った悲しみで自我を無くしてしまったようだけれど、ケインズ団長は見捨てることなくずっとそばにいてあげてるそうだ。

「今はまだあのままかもしれませんが、ケインズ団長がいてくれるから、きっといつかは自我を取り戻してくれると思いたいです」

 自分を見てもいないニオ様へのケインズ団長の献身さは本当にすごいと思う。なにより、

「ニオはいつか絶対俺を愛するようになる。俺がそうさせてみせる」

 そう言い切ってしまうのだからさすがとしか言いようがない。それほどまできっとニオ様を愛しているんだろうな。

「人間の愛というものは複雑で興味深いね。……ちょっとリオンがうらやましいよ」

 そう言いながら優しく切なげな微笑みをミゼル様から向けられて思わず胸が高鳴ってしまった……!

「それは困る。セシルは絶対にミゼルには渡さないよ」

 背後から声がして、フワッと後ろから抱き締められる。

「……ランス様!おかえりなさい」
「ただいま、セシル」

 後ろから抱きついたままランス様がそう言って、私の首もとに顔を埋める。ランス様、ミゼル様が見てますっ……!

「ふふふ、君たちは相変わらず仲良しだね。とても良いことだよ。でも人間は心がわりするんだろう?もし心がわりするようなことがあったら私が黙っていないからね」

 含みのある視線を向けられて思わず息がひゅっとなった。白龍様の言うことは冗談なのか本気なのかわからなくて困ってしまう。

「大丈夫だよ、俺は心がわりなんてしない。もしもセシルが心がわりしたとしても何度だってまた俺を好きになってもらうように努力する」

 そう言ってランス様は私の頬に優しくキスをした!ランス様ってばどんどん積極的になっている気がする……!うれしいけどなんか恥ずかしい。

「私も心がわりしないですし、もしランス様が心がわりしそうになったら私をまた好きになってもらえるように頑張ります。それに、お互いに心がわりなんてしないように普段からちゃんと向き合って歩み寄ります。そうしたいほどにランス様は大好きで大切な人なので」

 そう宣言すると、ランス様は目を大きく見開いてから嬉しそうに微笑んだ。

「セシル、やっぱり君には敵わないな」

 そう言ってランス様は真正面に来ると私の頬を両手で挟んで額を合わせる。ランス様と見つめ合うようになってなんだかこそばゆい。

「君たちなら大丈夫だね。私も安心だ。さて、邪魔をしてはいけないから私はそろそろ退散しようか」

 そういってミゼル様はウィンクすると、風に乗っていつの間にか白龍の姿になり大空へ翔んで行ってしまった。

「ミゼル様……」
「セシル、ミゼルのことより俺のことを見て」

 そう言ってランス様は私の唇に自分の唇を重ねた。それは優しくて蕩けてしまいそうなキスだ。

「これからもよろしくね。ずっとずっと愛しているよ、セシル」
「私も、ずっと愛しています、ランス様」


 白龍のために騎士が捧げる生贄となるはずだった聖女は、お互いに歩み寄り愛を伝え合うことをおろそかにせず、その命が尽きるその日まで騎士に愛され幸せに暮らしていくのだった。


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