82 / 82
それぞれの明日へ
しおりを挟む
聖女誘拐事件に幕が降りて一週間後、白龍使いの騎士団本部で報告会議が行われた。
会議には白龍使いの騎士様や白龍様、そして聖女様たちみんなが集められ、サリ国のこと、黒銀の龍との戦い、サリ国の男ベイルとの戦い、白龍リオン様のことについて白龍ギール様が静かに話始める。
「サリ国で起こったことは我々にとって他人事ではない。聖女と騎士の仲がきちんと築けていなければ我が国にも起こり得ることなのだ。他人同士だからこそわかり合おうとする気持ち、歩み寄ろうとする姿勢が必要だ。それは片方だけで成り立つことではない。双方が相手を思いやる気持ちを伝え合うことが大切になる」
ギール様は静かに目を伏せてからゆっくりと全体を見渡した。
「我々白龍にとって聖女と騎士の繋がりはとても重要だ。だが、ただそれだけで良いというわけではない。きちんと愛を育んでもらいたいのだ。聖女と騎士の間でしっかりと愛を育むことで、今回のような悲しい事件は防ぐことができる」
他の白龍様たちもギール様の言葉を聞きながら静かに微笑んでいる。
「どうか今一度それぞれのパートナーと向き合い、絆を深めあってほしい。そしてこれからもこの国のためにその力を存分に発揮してほしい。私からは以上だ」
ギール様の話をその場にいた騎士様たちも聖女様たちも皆真剣に聞いていた。
ふと、隣にいたランス様の手が私の手を掴んでしっかりと握りしめる。ランス様の顔を見ると目があって、ランス様が静かに優しく微笑んできた。
いつもいつも、とっても優しくて暖かい微笑み。私は何度この微笑みに救われて胸をときめかせただろう。これからもずっとずっと見ていたい、そう思いながら私もランス様に微笑んだ。
◇◆◇◆
聖女誘拐事件の報告会議が終わって一ヶ月が経った。
珍しく白龍ミゼル様が人の姿で遊びに来たので、庭で一緒にお茶をしている。
「ミゼル様が遊びにいらっしゃるなんて珍しいですね」
「今日はランスが外出しているだろう、セシルがたいくつしてるんじゃないかと思って」
ふふ、と頬笑むミゼル様は相変わらず人外級の美しさだけどだいぶ見慣れた感じがする。見慣れたところでやっぱり美しくてクラクラするけど。
「そういえばニオは相変わらずのようだね」
白龍リオン様を失ったニオ様はケインズ団長に引き取られて一緒に住んでいるらしい。ニオ様のしたことは国を脅かす一大事だったので処罰がくだされるはずだったけれど、ケインズ団長が自ら監視下におくということでとりあえず処罰は保留になったそうだ。
ケインズ団長の屋敷に引き取られたニオ様は何をするでもなくずっと上の空で過ごしているらしい。
たった一人愛するリオン様を失った悲しみで自我を無くしてしまったようだけれど、ケインズ団長は見捨てることなくずっとそばにいてあげてるそうだ。
「今はまだあのままかもしれませんが、ケインズ団長がいてくれるから、きっといつかは自我を取り戻してくれると思いたいです」
自分を見てもいないニオ様へのケインズ団長の献身さは本当にすごいと思う。なにより、
「ニオはいつか絶対俺を愛するようになる。俺がそうさせてみせる」
そう言い切ってしまうのだからさすがとしか言いようがない。それほどまできっとニオ様を愛しているんだろうな。
「人間の愛というものは複雑で興味深いね。……ちょっとリオンがうらやましいよ」
そう言いながら優しく切なげな微笑みをミゼル様から向けられて思わず胸が高鳴ってしまった……!
「それは困る。セシルは絶対にミゼルには渡さないよ」
背後から声がして、フワッと後ろから抱き締められる。
「……ランス様!おかえりなさい」
「ただいま、セシル」
後ろから抱きついたままランス様がそう言って、私の首もとに顔を埋める。ランス様、ミゼル様が見てますっ……!
「ふふふ、君たちは相変わらず仲良しだね。とても良いことだよ。でも人間は心がわりするんだろう?もし心がわりするようなことがあったら私が黙っていないからね」
含みのある視線を向けられて思わず息がひゅっとなった。白龍様の言うことは冗談なのか本気なのかわからなくて困ってしまう。
「大丈夫だよ、俺は心がわりなんてしない。もしもセシルが心がわりしたとしても何度だってまた俺を好きになってもらうように努力する」
そう言ってランス様は私の頬に優しくキスをした!ランス様ってばどんどん積極的になっている気がする……!うれしいけどなんか恥ずかしい。
「私も心がわりしないですし、もしランス様が心がわりしそうになったら私をまた好きになってもらえるように頑張ります。それに、お互いに心がわりなんてしないように普段からちゃんと向き合って歩み寄ります。そうしたいほどにランス様は大好きで大切な人なので」
そう宣言すると、ランス様は目を大きく見開いてから嬉しそうに微笑んだ。
「セシル、やっぱり君には敵わないな」
そう言ってランス様は真正面に来ると私の頬を両手で挟んで額を合わせる。ランス様と見つめ合うようになってなんだかこそばゆい。
「君たちなら大丈夫だね。私も安心だ。さて、邪魔をしてはいけないから私はそろそろ退散しようか」
そういってミゼル様はウィンクすると、風に乗っていつの間にか白龍の姿になり大空へ翔んで行ってしまった。
「ミゼル様……」
「セシル、ミゼルのことより俺のことを見て」
そう言ってランス様は私の唇に自分の唇を重ねた。それは優しくて蕩けてしまいそうなキスだ。
「これからもよろしくね。ずっとずっと愛しているよ、セシル」
「私も、ずっと愛しています、ランス様」
白龍のために騎士が捧げる生贄となるはずだった聖女は、お互いに歩み寄り愛を伝え合うことをおろそかにせず、その命が尽きるその日まで騎士に愛され幸せに暮らしていくのだった。
会議には白龍使いの騎士様や白龍様、そして聖女様たちみんなが集められ、サリ国のこと、黒銀の龍との戦い、サリ国の男ベイルとの戦い、白龍リオン様のことについて白龍ギール様が静かに話始める。
「サリ国で起こったことは我々にとって他人事ではない。聖女と騎士の仲がきちんと築けていなければ我が国にも起こり得ることなのだ。他人同士だからこそわかり合おうとする気持ち、歩み寄ろうとする姿勢が必要だ。それは片方だけで成り立つことではない。双方が相手を思いやる気持ちを伝え合うことが大切になる」
ギール様は静かに目を伏せてからゆっくりと全体を見渡した。
「我々白龍にとって聖女と騎士の繋がりはとても重要だ。だが、ただそれだけで良いというわけではない。きちんと愛を育んでもらいたいのだ。聖女と騎士の間でしっかりと愛を育むことで、今回のような悲しい事件は防ぐことができる」
他の白龍様たちもギール様の言葉を聞きながら静かに微笑んでいる。
「どうか今一度それぞれのパートナーと向き合い、絆を深めあってほしい。そしてこれからもこの国のためにその力を存分に発揮してほしい。私からは以上だ」
ギール様の話をその場にいた騎士様たちも聖女様たちも皆真剣に聞いていた。
ふと、隣にいたランス様の手が私の手を掴んでしっかりと握りしめる。ランス様の顔を見ると目があって、ランス様が静かに優しく微笑んできた。
いつもいつも、とっても優しくて暖かい微笑み。私は何度この微笑みに救われて胸をときめかせただろう。これからもずっとずっと見ていたい、そう思いながら私もランス様に微笑んだ。
◇◆◇◆
聖女誘拐事件の報告会議が終わって一ヶ月が経った。
珍しく白龍ミゼル様が人の姿で遊びに来たので、庭で一緒にお茶をしている。
「ミゼル様が遊びにいらっしゃるなんて珍しいですね」
「今日はランスが外出しているだろう、セシルがたいくつしてるんじゃないかと思って」
ふふ、と頬笑むミゼル様は相変わらず人外級の美しさだけどだいぶ見慣れた感じがする。見慣れたところでやっぱり美しくてクラクラするけど。
「そういえばニオは相変わらずのようだね」
白龍リオン様を失ったニオ様はケインズ団長に引き取られて一緒に住んでいるらしい。ニオ様のしたことは国を脅かす一大事だったので処罰がくだされるはずだったけれど、ケインズ団長が自ら監視下におくということでとりあえず処罰は保留になったそうだ。
ケインズ団長の屋敷に引き取られたニオ様は何をするでもなくずっと上の空で過ごしているらしい。
たった一人愛するリオン様を失った悲しみで自我を無くしてしまったようだけれど、ケインズ団長は見捨てることなくずっとそばにいてあげてるそうだ。
「今はまだあのままかもしれませんが、ケインズ団長がいてくれるから、きっといつかは自我を取り戻してくれると思いたいです」
自分を見てもいないニオ様へのケインズ団長の献身さは本当にすごいと思う。なにより、
「ニオはいつか絶対俺を愛するようになる。俺がそうさせてみせる」
そう言い切ってしまうのだからさすがとしか言いようがない。それほどまできっとニオ様を愛しているんだろうな。
「人間の愛というものは複雑で興味深いね。……ちょっとリオンがうらやましいよ」
そう言いながら優しく切なげな微笑みをミゼル様から向けられて思わず胸が高鳴ってしまった……!
「それは困る。セシルは絶対にミゼルには渡さないよ」
背後から声がして、フワッと後ろから抱き締められる。
「……ランス様!おかえりなさい」
「ただいま、セシル」
後ろから抱きついたままランス様がそう言って、私の首もとに顔を埋める。ランス様、ミゼル様が見てますっ……!
「ふふふ、君たちは相変わらず仲良しだね。とても良いことだよ。でも人間は心がわりするんだろう?もし心がわりするようなことがあったら私が黙っていないからね」
含みのある視線を向けられて思わず息がひゅっとなった。白龍様の言うことは冗談なのか本気なのかわからなくて困ってしまう。
「大丈夫だよ、俺は心がわりなんてしない。もしもセシルが心がわりしたとしても何度だってまた俺を好きになってもらうように努力する」
そう言ってランス様は私の頬に優しくキスをした!ランス様ってばどんどん積極的になっている気がする……!うれしいけどなんか恥ずかしい。
「私も心がわりしないですし、もしランス様が心がわりしそうになったら私をまた好きになってもらえるように頑張ります。それに、お互いに心がわりなんてしないように普段からちゃんと向き合って歩み寄ります。そうしたいほどにランス様は大好きで大切な人なので」
そう宣言すると、ランス様は目を大きく見開いてから嬉しそうに微笑んだ。
「セシル、やっぱり君には敵わないな」
そう言ってランス様は真正面に来ると私の頬を両手で挟んで額を合わせる。ランス様と見つめ合うようになってなんだかこそばゆい。
「君たちなら大丈夫だね。私も安心だ。さて、邪魔をしてはいけないから私はそろそろ退散しようか」
そういってミゼル様はウィンクすると、風に乗っていつの間にか白龍の姿になり大空へ翔んで行ってしまった。
「ミゼル様……」
「セシル、ミゼルのことより俺のことを見て」
そう言ってランス様は私の唇に自分の唇を重ねた。それは優しくて蕩けてしまいそうなキスだ。
「これからもよろしくね。ずっとずっと愛しているよ、セシル」
「私も、ずっと愛しています、ランス様」
白龍のために騎士が捧げる生贄となるはずだった聖女は、お互いに歩み寄り愛を伝え合うことをおろそかにせず、その命が尽きるその日まで騎士に愛され幸せに暮らしていくのだった。
15
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
子供が可愛いすぎて伯爵様の溺愛に気づきません!
屋月 トム伽
恋愛
私と婚約をすれば、真実の愛に出会える。
そのせいで、私はラッキージンクスの令嬢だと呼ばれていた。そんな噂のせいで、何度も婚約破棄をされた。
そして、9回目の婚約中に、私は夜会で襲われてふしだらな令嬢という二つ名までついてしまった。
ふしだらな令嬢に、もう婚約の申し込みなど来ないだろうと思っていれば、お父様が氷の伯爵様と有名なリクハルド・マクシミリアン伯爵様に婚約を申し込み、邸を売って海外に行ってしまう。
突然の婚約の申し込みに断られるかと思えば、リクハルド様は婚約を受け入れてくれた。婚約初日から、マクシミリアン伯爵邸で住み始めることになるが、彼は未婚のままで子供がいた。
リクハルド様に似ても似つかない子供。
そうして、マクリミリアン伯爵家での生活が幕を開けた。
虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました
たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。
【完結】番としか子供が産まれない世界で
さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。
何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。
そんなニーナが番に出会うまで
4話完結
出会えたところで話は終わってます。
行き遅れのお節介令嬢、氷の公爵様と結婚したら三人娘の母になりました
鳥柄ささみ
恋愛
お節介焼きで困っている人を放っておけないシアは、数多のご令嬢達から人気の令嬢だ。毎日ファンレターが届き、社交界に出れば令嬢に取り囲まれるほどである。
けれど、それに反比例するように男性からの人気はなく、二十七だというのに嫁の貰い手もないため、毎日母から小言をもらっていた。
そんなある日のこと、突然公爵家から縁談の話が。
シアは公爵家がなぜ自分に縁談など持ち掛けるのかと訝しく思いつつ話を受けると、なんと公爵の後妻として三人の娘の母代わりになれと言われる。
困惑するも、自分へ縁談を持ちかけた理由を聞いて、お節介なシアは嫁ぐこと決めたのだった。
夫になるレオナルドはイケメンなのに無表情で高圧的。三人の娘も二女のアンナを除いて長女のセレナも三女のフィオナもとても反抗的。
そんな中でもお節介パワーを発揮して、前向きに奮闘するシアの物語。
※他投稿サイトにも掲載中
転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。
琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。
ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!!
スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。
ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!?
氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。
このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。
【完結】 異世界に転生したと思ったら公爵令息の4番目の婚約者にされてしまいました。……はあ?
はくら(仮名)
恋愛
ある日、リーゼロッテは前世の記憶と女神によって転生させられたことを思い出す。当初は困惑していた彼女だったが、とにかく普段通りの生活と学園への登校のために外に出ると、その通学路の途中で貴族のヴォクス家の令息に見初められてしまい婚約させられてしまう。そしてヴォクス家に連れられていってしまった彼女が聞かされたのは、自分が4番目の婚約者であるという事実だった。
※本作は別ペンネームで『小説家になろう』にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる