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生贄ではない生活
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「彼女は第二王女にも関わらず、侍女のように働かされ、ご飯もろくに与えられず、屋根裏部屋で生活させられていたようです」
「は?どういうことだ?」
ベリックの報告を聞いて、レリウスは怪訝そうな顔をしてベリックを見る。
「ライラ様は、確かに第二王女ですが、王と側妃との間に生まれた子供のようです。側妃ではありますが、王が一番愛を向けていた妃だったため、ライラ様も正式な王女としての資格を得ていたようです。ですが、側妃である母上が亡くなると、王はライラ様へ関心を向けなくなり、側妃を嫌っていた正妃とその子供たちがライラ様を城から追い出しました。ライラ様は正妃の親戚の家に預けられ、そこで侍女のように働かされ酷い生活を送っていたようです」
話を聞いていたレリウスの顔がどんどん渋くなる。要するに、正妃から嫌われたライラは王女としての生活をすることなく生きてきて、人間族の王と正妃は自分たちの子供を生贄に出したくないからちょうどいい機会だとライラを寄越してきたことになる。
「クソみたいな話だな」
ぎり、と歯を食いしばってレリウスはつぶやく。
「それで、どうなさいますか?ライラ様は確かに第二王女でしたが、人間族の王は我々にいらない人間を押し付けてきたことになります」
ベリックの言葉に、レリウスは口をムッと結ぶ。
「だからと言って、人間族へ返せばまた酷い生活を強いられられるんだろう。それはあまりにもかわいそうだ」
「それでは」
「そうだな、あいつはもう俺のものだ。そう決まっている。人間族に返す必要はない。このまま俺の手元に置く」
「かしこまりました」
◆
「う、うわあああ!」
ライラがレリウスの元へ来た翌々日。ライラは真っ黒で大きな狼の背中に乗っていた。
ーー落ちるなよ、毛を引っ掴んどけ
真っ黒い大きな狼からレリウスの声が聞こえる。
「う、え、お、ああああ!」
黒い狼の物凄いスピードにライラは背中から吹き飛ばされてしまいそうだ。だが、不思議なことに吹き飛ばされることはなかった。なぜなら、レリウスがこっそりライラに魔法をかけているからだ。レリウスは背中にライラを乗せて、狼の姿で自分の屋敷に向かっていた。レリウスの後ろには狼姿のベリックが走ってきている。
どのくらい走っただろうか。いつの間にか大きな屋敷の前に到着していた。ポンッと黒狼姿のレリウスから煙が出てレリウスが人の姿になる。その拍子に、アリアはレリウスにお姫様抱っこされた状態になっていた。
(う、どうしよう、すごく近い!こんな、抱き抱えられているなんて!)
恥ずかしさのあまりライラは顔を真っ赤にして俯く。だが、レリウスはライラを抱き抱えたまま渋い顔をした。
「軽すぎるな……」
「え?」
「いや、なんでもない。ここが俺の屋敷だ。行くぞ」
「え、ええっ!?あの、おろしてください!自分で歩けます!」
「だめだ。いいから俺にこうやって運ばれてろ」
「ええ…… !?」
顔を真っ赤にしながらアワアワとしているライラを見て、レリウスは楽しそうだ。
「そんなにバタバタすると落ちてしまうぞ。ほら、俺の首にちゃんと掴まれ」
「う、はい……」
ライラはレリウスの首に腕を回すと、恥ずかしさからレリウスの肩に顔を埋める。
「意外に積極的なんだな。そういうの嫌いじゃないぞ」
「?」
「お帰りなさいませ。レリウス様、ベリック様」
レリウスたちが屋敷に入ると、玄関の内側で執事やメイドたちが勢揃いして挨拶をする。
「ああ、戻った。急で悪いが、こいつを風呂に入れてやってくれ」
「人間、ですか?」
「ああ、俺が親父からもらった。入念に手入れしてやってくれ。じゃあな、ライラ。また後で」
「えっ?」
レリウスが手をひらひらさせて立ち去ると、ポカンとしたライラがメイドたちに囲まれてあれよあれよと言う間に浴槽まで運ばれる。入浴は自分でできると言い張ったが、メイドに却下され、入念に手入れをされてしまう。
(すごくいいお湯だった!花びらが浮かんでいて、あんなにいい匂いのするお湯はじめてでびっくりしちゃった)
頬をほんのり赤く染めながらほくほくと嬉しそうにしているライラを見て、メイドは嬉しそうに微笑んだ。
「ライラ様、傷口にお薬を塗りますね、少し沁みるかもしれませんが」
「えっ、あ、ありがとうございます」
体のあちこちにある傷を見てメイドは一瞬顔を顰めたが、ライラに気づかれないようすぐに笑顔になってライラの傷口に薬を丁寧に優しく塗っていく。
(こんなに丁寧に扱われたことないからどうしていいかわからない……でも、すごく嬉しい)
そうして、湯浴みを済ませたライラは綺麗なドレスを着せられ、いつの間にかまたレリウスの前にいた。
「お、いい感じになったな」
「あの、いろいろとありがとうございました」
戸惑いつつも嬉しそうにお礼を言うライラを見て、レリウスはフッと微笑む。
「それで、私はこれからここで何をすればいいですか?炊事、洗濯、家事全般はひととおりこなせますし、裁縫もできます。それから……」
「いや、別になにもしなくていい」
「へ?でも、こんなに色々なことをしてもらって、生贄にもならないで、私は一体……」
(何もしなくていいわけがない、何かしなければ私の価値なんてここにはないのに)
不安そうな顔でレリウスを見つめるライラに、レリウスは静かにため息をついて言った。
「いいか、何かをするにしても、お前は瘦せすぎだ。もっと健康的になれ。お前の使い道はそれから決める。それまでは、美味しいもんをちゃんと食べて、よく寝て、よく笑え。お前のすることはまずそれだ」
「は?どういうことだ?」
ベリックの報告を聞いて、レリウスは怪訝そうな顔をしてベリックを見る。
「ライラ様は、確かに第二王女ですが、王と側妃との間に生まれた子供のようです。側妃ではありますが、王が一番愛を向けていた妃だったため、ライラ様も正式な王女としての資格を得ていたようです。ですが、側妃である母上が亡くなると、王はライラ様へ関心を向けなくなり、側妃を嫌っていた正妃とその子供たちがライラ様を城から追い出しました。ライラ様は正妃の親戚の家に預けられ、そこで侍女のように働かされ酷い生活を送っていたようです」
話を聞いていたレリウスの顔がどんどん渋くなる。要するに、正妃から嫌われたライラは王女としての生活をすることなく生きてきて、人間族の王と正妃は自分たちの子供を生贄に出したくないからちょうどいい機会だとライラを寄越してきたことになる。
「クソみたいな話だな」
ぎり、と歯を食いしばってレリウスはつぶやく。
「それで、どうなさいますか?ライラ様は確かに第二王女でしたが、人間族の王は我々にいらない人間を押し付けてきたことになります」
ベリックの言葉に、レリウスは口をムッと結ぶ。
「だからと言って、人間族へ返せばまた酷い生活を強いられられるんだろう。それはあまりにもかわいそうだ」
「それでは」
「そうだな、あいつはもう俺のものだ。そう決まっている。人間族に返す必要はない。このまま俺の手元に置く」
「かしこまりました」
◆
「う、うわあああ!」
ライラがレリウスの元へ来た翌々日。ライラは真っ黒で大きな狼の背中に乗っていた。
ーー落ちるなよ、毛を引っ掴んどけ
真っ黒い大きな狼からレリウスの声が聞こえる。
「う、え、お、ああああ!」
黒い狼の物凄いスピードにライラは背中から吹き飛ばされてしまいそうだ。だが、不思議なことに吹き飛ばされることはなかった。なぜなら、レリウスがこっそりライラに魔法をかけているからだ。レリウスは背中にライラを乗せて、狼の姿で自分の屋敷に向かっていた。レリウスの後ろには狼姿のベリックが走ってきている。
どのくらい走っただろうか。いつの間にか大きな屋敷の前に到着していた。ポンッと黒狼姿のレリウスから煙が出てレリウスが人の姿になる。その拍子に、アリアはレリウスにお姫様抱っこされた状態になっていた。
(う、どうしよう、すごく近い!こんな、抱き抱えられているなんて!)
恥ずかしさのあまりライラは顔を真っ赤にして俯く。だが、レリウスはライラを抱き抱えたまま渋い顔をした。
「軽すぎるな……」
「え?」
「いや、なんでもない。ここが俺の屋敷だ。行くぞ」
「え、ええっ!?あの、おろしてください!自分で歩けます!」
「だめだ。いいから俺にこうやって運ばれてろ」
「ええ…… !?」
顔を真っ赤にしながらアワアワとしているライラを見て、レリウスは楽しそうだ。
「そんなにバタバタすると落ちてしまうぞ。ほら、俺の首にちゃんと掴まれ」
「う、はい……」
ライラはレリウスの首に腕を回すと、恥ずかしさからレリウスの肩に顔を埋める。
「意外に積極的なんだな。そういうの嫌いじゃないぞ」
「?」
「お帰りなさいませ。レリウス様、ベリック様」
レリウスたちが屋敷に入ると、玄関の内側で執事やメイドたちが勢揃いして挨拶をする。
「ああ、戻った。急で悪いが、こいつを風呂に入れてやってくれ」
「人間、ですか?」
「ああ、俺が親父からもらった。入念に手入れしてやってくれ。じゃあな、ライラ。また後で」
「えっ?」
レリウスが手をひらひらさせて立ち去ると、ポカンとしたライラがメイドたちに囲まれてあれよあれよと言う間に浴槽まで運ばれる。入浴は自分でできると言い張ったが、メイドに却下され、入念に手入れをされてしまう。
(すごくいいお湯だった!花びらが浮かんでいて、あんなにいい匂いのするお湯はじめてでびっくりしちゃった)
頬をほんのり赤く染めながらほくほくと嬉しそうにしているライラを見て、メイドは嬉しそうに微笑んだ。
「ライラ様、傷口にお薬を塗りますね、少し沁みるかもしれませんが」
「えっ、あ、ありがとうございます」
体のあちこちにある傷を見てメイドは一瞬顔を顰めたが、ライラに気づかれないようすぐに笑顔になってライラの傷口に薬を丁寧に優しく塗っていく。
(こんなに丁寧に扱われたことないからどうしていいかわからない……でも、すごく嬉しい)
そうして、湯浴みを済ませたライラは綺麗なドレスを着せられ、いつの間にかまたレリウスの前にいた。
「お、いい感じになったな」
「あの、いろいろとありがとうございました」
戸惑いつつも嬉しそうにお礼を言うライラを見て、レリウスはフッと微笑む。
「それで、私はこれからここで何をすればいいですか?炊事、洗濯、家事全般はひととおりこなせますし、裁縫もできます。それから……」
「いや、別になにもしなくていい」
「へ?でも、こんなに色々なことをしてもらって、生贄にもならないで、私は一体……」
(何もしなくていいわけがない、何かしなければ私の価値なんてここにはないのに)
不安そうな顔でレリウスを見つめるライラに、レリウスは静かにため息をついて言った。
「いいか、何かをするにしても、お前は瘦せすぎだ。もっと健康的になれ。お前の使い道はそれから決める。それまでは、美味しいもんをちゃんと食べて、よく寝て、よく笑え。お前のすることはまずそれだ」
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