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再会
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「遠路はるばるお越しいただき、感謝する」
朝一で公爵家からの迎えの馬車に乗り、公爵家に着いたのはその日の夜近くだった。確かに道中は長く、どんなに高そうで品質の良い馬車の中でもほぼ一日を過ごせば腰やお尻がとても痛い。だが、そんなことよりもアベリアは挨拶の言葉を口にした目の前の婚約者、精霊公爵の顔を見て驚いた。
(この方は……)
イザベラからいわれのない罪を着せられ舞踏会の会場から帰ろうとした途中、廊下で美しいご令嬢を助けたその帰り道。廊下でぶつかった美しい男性その人だった。
美しい銀髪に宝石のように美しいサファイア色の瞳。誰もが見惚れるであろう整った顔立ちのその人は、唖然とするアベリアをただじっと見つめていた。
(あ、挨拶をしないと……!)
「アベリア・ライラットと申します。この度は……」
「お堅い挨拶は抜きだ。今回、縁談の話を受け入れてくれて感謝する。相手が俺だと知ってきっとあまり良い気分にはならなかっただろうが、それはお互い様ということで帳消しにして欲しい」
お互い様?どういうことだろうとフェイズの顔を見ると、フェイズは感情のこもらない冷たい瞳でアベリアを見てこう言った。
「常に氷のように冷たく、義理の妹を執拗にいじめ、気に入らないメイドや執事は辞めるまでいびり倒す。普段は全く笑わないくせに、妹をいじめている時だけ嬉しそうに高らかに笑う、絵に描いた悪役令嬢のような女なのだろう、君は」
フェイズから放たれた言葉にアベリアはぎゅっとドレスを握りしめる。覚悟はしていたが、フェイズも自分のありもしない噂を本当だと思っているのだ。
「この家では自由にしてもらっても構わない。俺は白い結婚のつもりだし、君もその方が都合がいいだろう。どうせ俺の噂も聞いているんだろう、勝手にそう思っていればいい。馴れ合うつもりはないからな。ただ、家のものに失礼な態度を取るのだけは許さない。何より」
そう言って、アベリアを睨みつける。
「俺にも妹がいる。たった一人の大切な、血のつながった妹だ。もし俺の妹に何かしてみろ、すぐにでもこの屋敷から追い出してやる」
凍りつくような視線に内臓から震え上がるような恐ろしいほどの低い声。アベリアは思わず悲鳴をあげそうになるが、グッと堪える。
(一方的に拒絶する態度。自由にしていいと言うけれど、どこに行っても私は一人なのね。いいわ。あの家にいるよりはマシだと思えるようにここで生きてみせるから)
フェイズの言葉を聞いて目を瞑り、小さく息を吐く。そして目を開きフェイズへ視線を合わせ、口を開いたその時。
「お兄様。お兄様~!!!!」
バタバタバタと廊下を走ってくる音が聞こえる。そして、二人のいる部屋のドアがバン!と大きな音を立てて開いた。
「シャルロッテ!突然部屋に入ってくるなんてはしたないだろう」
「ご、ごめんなさいお兄様!でも、お兄様の婚約者がいらっしゃる日に私だけ仲間はずれなんてひどいです!お相手のこと何も教えてくださらないし」
「仲間はずれなんかじゃない。言っただろう、婚約者はまるで悪役令嬢と名高い女性で危ないからと……」
そう言って、フェイズは部屋に入ってきたご令嬢の肩をアベリアから守るようにそっと抱き寄せた。だが、アベリアとフェイズの妹の目があった瞬間、フェイズの妹は大声を出し、同時にアベリアもハッとする。
「ああっ!あなたは!」
「……まさか、あの時のご令嬢?」
フェイズが頑なに守ろうとしている妹は、舞踏会の日にアベリアが助けたか弱いご令嬢その人だった。
朝一で公爵家からの迎えの馬車に乗り、公爵家に着いたのはその日の夜近くだった。確かに道中は長く、どんなに高そうで品質の良い馬車の中でもほぼ一日を過ごせば腰やお尻がとても痛い。だが、そんなことよりもアベリアは挨拶の言葉を口にした目の前の婚約者、精霊公爵の顔を見て驚いた。
(この方は……)
イザベラからいわれのない罪を着せられ舞踏会の会場から帰ろうとした途中、廊下で美しいご令嬢を助けたその帰り道。廊下でぶつかった美しい男性その人だった。
美しい銀髪に宝石のように美しいサファイア色の瞳。誰もが見惚れるであろう整った顔立ちのその人は、唖然とするアベリアをただじっと見つめていた。
(あ、挨拶をしないと……!)
「アベリア・ライラットと申します。この度は……」
「お堅い挨拶は抜きだ。今回、縁談の話を受け入れてくれて感謝する。相手が俺だと知ってきっとあまり良い気分にはならなかっただろうが、それはお互い様ということで帳消しにして欲しい」
お互い様?どういうことだろうとフェイズの顔を見ると、フェイズは感情のこもらない冷たい瞳でアベリアを見てこう言った。
「常に氷のように冷たく、義理の妹を執拗にいじめ、気に入らないメイドや執事は辞めるまでいびり倒す。普段は全く笑わないくせに、妹をいじめている時だけ嬉しそうに高らかに笑う、絵に描いた悪役令嬢のような女なのだろう、君は」
フェイズから放たれた言葉にアベリアはぎゅっとドレスを握りしめる。覚悟はしていたが、フェイズも自分のありもしない噂を本当だと思っているのだ。
「この家では自由にしてもらっても構わない。俺は白い結婚のつもりだし、君もその方が都合がいいだろう。どうせ俺の噂も聞いているんだろう、勝手にそう思っていればいい。馴れ合うつもりはないからな。ただ、家のものに失礼な態度を取るのだけは許さない。何より」
そう言って、アベリアを睨みつける。
「俺にも妹がいる。たった一人の大切な、血のつながった妹だ。もし俺の妹に何かしてみろ、すぐにでもこの屋敷から追い出してやる」
凍りつくような視線に内臓から震え上がるような恐ろしいほどの低い声。アベリアは思わず悲鳴をあげそうになるが、グッと堪える。
(一方的に拒絶する態度。自由にしていいと言うけれど、どこに行っても私は一人なのね。いいわ。あの家にいるよりはマシだと思えるようにここで生きてみせるから)
フェイズの言葉を聞いて目を瞑り、小さく息を吐く。そして目を開きフェイズへ視線を合わせ、口を開いたその時。
「お兄様。お兄様~!!!!」
バタバタバタと廊下を走ってくる音が聞こえる。そして、二人のいる部屋のドアがバン!と大きな音を立てて開いた。
「シャルロッテ!突然部屋に入ってくるなんてはしたないだろう」
「ご、ごめんなさいお兄様!でも、お兄様の婚約者がいらっしゃる日に私だけ仲間はずれなんてひどいです!お相手のこと何も教えてくださらないし」
「仲間はずれなんかじゃない。言っただろう、婚約者はまるで悪役令嬢と名高い女性で危ないからと……」
そう言って、フェイズは部屋に入ってきたご令嬢の肩をアベリアから守るようにそっと抱き寄せた。だが、アベリアとフェイズの妹の目があった瞬間、フェイズの妹は大声を出し、同時にアベリアもハッとする。
「ああっ!あなたは!」
「……まさか、あの時のご令嬢?」
フェイズが頑なに守ろうとしている妹は、舞踏会の日にアベリアが助けたか弱いご令嬢その人だった。
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