11 / 14
視線の先
しおりを挟む
「フェイズ様、いいのですか?あんなことを言って、フェイズ様がもっと悪く言われる原因になりかねません」
馬車の中で、アベリアは困惑した顔でフェイズに尋ねた。
「いいんだ、今までだって散々身勝手に言われて来たんだ、今更どう言われようと構わない。それに、ああ言った方が噂通りの冷酷非道な精霊公爵様っぽいだろ?」
フェイズはそう言ってふふん、と少し楽しそうに笑う。
(私のために、あえて自分の噂を利用したんだわ)
フェイズの優しさに、アベリアの心はホワホワと温かくなる。同時に、フェイズのことを冷酷非道だと勝手にヒソヒソ言われたのは気に食わない。
「それでも、やっぱりフェイズ様が勝手に酷く言われるのは気に食わないです。こんなにも優しくて素敵な方なのに……」
ムッとしてそう言うと、フェイズはアベリアを見て愛おしそうに微笑んだ。
「俺は、君にそう思ってもらえさえすれば他はどうでもいい。君さえ本当の俺を知っててくれれば十分だ。それに、冷酷非道な精霊公爵像というのは案外うまいこと色々な場面で使えるからいいんだよ」
そういうものなのだろうか、そう思いながらフェイズの顔を見つつ、アベリアはふと重要なことに気がつく。
(フェイズ様、最近私と目を合わせても目を逸らさなくなったわ)
むしろ、じっと見つめられることの方が多くなった。それに、その熱い視線に耐えきれず視線を逸らしてしまいそうになるのは自分の方になっている。 今も、目の前でじっと自分を見つめる視線にアベリアは心臓がドキドキと高鳴って仕方がない。思わず視線を逸らして俯いた。
フェイズはそんなアベリアを屋敷に着くまで微笑みながらじっと見つめていた。
◇
「お兄さま!お姉さま!お帰りなさいませ!」
アベリアとフェイズが屋敷に着くと、留守番をしていたシャルロッテが走ってきた。二人を見つけるとアベリアに抱きつく。
「舞踏会、大丈夫でしたか?何か嫌なことはありませんでしたか?」
心配そうにアベリアを見上げるシャルロッテ。精霊公爵の妹ということで色々言われることが嫌だったシャルロッテは、元々人前に出ることを好まず必要最低限でしか社交の場に出ない。舞踏会にもほとんどいい思い出がないため、今回は留守番を決め込んでいた。
「大丈夫だ。お前が心配するようなことは何もないよ」
フェイズがそう言うと、シャルロッテはフェイズを見てからまたアベリアを見て首を傾げる。アベリアもまた社交の場で色々と勝手な噂をされていることを知っているシャルロッテは、本当にアベリアが大丈夫だったのか心配でならないのだ。
「ええ、フェイズ様が助けてくださったので大丈夫でした。有無を言わさない堂々とした態度、とても素敵でしたよ。シャルロッテにも見せてあげたかったくらい」
アベリアがフェイズを褒めてからシャルロッテを見て微笑むと、シャルロッテは目を輝かせた。
「そうだったのですね!よかった!……お二人が一緒であれば、今度からは私も一緒に行ってみようかしら」
「ああ、それならお前のことを二人でしっかりと守ってあげるよ」
「私も、シャルロッテと一緒に舞踏会に参加できる日が来るならとても嬉しいわ」
フェイズとアベリアの言葉に、シャルロッテは頬を赤らめて嬉しそうに笑った。
馬車の中で、アベリアは困惑した顔でフェイズに尋ねた。
「いいんだ、今までだって散々身勝手に言われて来たんだ、今更どう言われようと構わない。それに、ああ言った方が噂通りの冷酷非道な精霊公爵様っぽいだろ?」
フェイズはそう言ってふふん、と少し楽しそうに笑う。
(私のために、あえて自分の噂を利用したんだわ)
フェイズの優しさに、アベリアの心はホワホワと温かくなる。同時に、フェイズのことを冷酷非道だと勝手にヒソヒソ言われたのは気に食わない。
「それでも、やっぱりフェイズ様が勝手に酷く言われるのは気に食わないです。こんなにも優しくて素敵な方なのに……」
ムッとしてそう言うと、フェイズはアベリアを見て愛おしそうに微笑んだ。
「俺は、君にそう思ってもらえさえすれば他はどうでもいい。君さえ本当の俺を知っててくれれば十分だ。それに、冷酷非道な精霊公爵像というのは案外うまいこと色々な場面で使えるからいいんだよ」
そういうものなのだろうか、そう思いながらフェイズの顔を見つつ、アベリアはふと重要なことに気がつく。
(フェイズ様、最近私と目を合わせても目を逸らさなくなったわ)
むしろ、じっと見つめられることの方が多くなった。それに、その熱い視線に耐えきれず視線を逸らしてしまいそうになるのは自分の方になっている。 今も、目の前でじっと自分を見つめる視線にアベリアは心臓がドキドキと高鳴って仕方がない。思わず視線を逸らして俯いた。
フェイズはそんなアベリアを屋敷に着くまで微笑みながらじっと見つめていた。
◇
「お兄さま!お姉さま!お帰りなさいませ!」
アベリアとフェイズが屋敷に着くと、留守番をしていたシャルロッテが走ってきた。二人を見つけるとアベリアに抱きつく。
「舞踏会、大丈夫でしたか?何か嫌なことはありませんでしたか?」
心配そうにアベリアを見上げるシャルロッテ。精霊公爵の妹ということで色々言われることが嫌だったシャルロッテは、元々人前に出ることを好まず必要最低限でしか社交の場に出ない。舞踏会にもほとんどいい思い出がないため、今回は留守番を決め込んでいた。
「大丈夫だ。お前が心配するようなことは何もないよ」
フェイズがそう言うと、シャルロッテはフェイズを見てからまたアベリアを見て首を傾げる。アベリアもまた社交の場で色々と勝手な噂をされていることを知っているシャルロッテは、本当にアベリアが大丈夫だったのか心配でならないのだ。
「ええ、フェイズ様が助けてくださったので大丈夫でした。有無を言わさない堂々とした態度、とても素敵でしたよ。シャルロッテにも見せてあげたかったくらい」
アベリアがフェイズを褒めてからシャルロッテを見て微笑むと、シャルロッテは目を輝かせた。
「そうだったのですね!よかった!……お二人が一緒であれば、今度からは私も一緒に行ってみようかしら」
「ああ、それならお前のことを二人でしっかりと守ってあげるよ」
「私も、シャルロッテと一緒に舞踏会に参加できる日が来るならとても嬉しいわ」
フェイズとアベリアの言葉に、シャルロッテは頬を赤らめて嬉しそうに笑った。
43
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢ですが、今日も元婚約者とヒロインにざまぁされました(なお、全員私を溺愛しています)
ほーみ
恋愛
「レティシア・エルフォード! お前との婚約は破棄する!」
王太子アレクシス・ヴォルフェンがそう宣言した瞬間、広間はざわめいた。私は静かに紅茶を口にしながら、その言葉を聞き流す。どうやら、今日もまた「ざまぁ」される日らしい。
ここは王宮の舞踏会場。華やかな装飾と甘い香りが漂う中、私はまたしても断罪劇の主役に据えられていた。目の前では、王太子が優雅に微笑みながら、私に婚約破棄を突きつけている。その隣には、栗色の髪をふわりと揺らした少女――リリア・エヴァンスが涙ぐんでいた。
婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました
由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。
彼女は何も言わずにその場を去った。
――それが、王太子の終わりだった。
翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。
裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。
王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。
「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」
ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。
婚約破棄された人たらし悪役令嬢ですが、 最強で過保護な兄たちと義姉に溺愛されています
由香
ファンタジー
婚約破棄のその日、
悪役令嬢リリアーナは――弁明すら、しなかった。
王太子と“聖女”に断罪され、すべてを失った彼女。
だがその裏で、王国最強と名高い三人の兄と、
冷静沈着な義姉が、静かに動き始めていた。
再検証によって暴かれる“聖女の嘘”。
広場で語られる真実。
そして、無自覚に人を惹きつけてしまう
リリアーナの優しさが、次々と味方を増やしていく――。
これは、
悪役令嬢として断罪された少女が、
「誰かの物語の脇役」ではなく、
自分自身の人生を取り戻す物語。
過保護すぎる兄たちと義姉に溺愛されながら、
彼女は静かに、そして確実に幸せへ向かっていく。
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
ナイスミドルな国王に生まれ変わったことを利用してヒロインを成敗する
ぴぴみ
恋愛
少し前まで普通のアラサーOLだった莉乃。ある時目を覚ますとなんだか身体が重いことに気がついて…。声は低いバリトン。鏡に写るはナイスミドルなおじ様。
皆畏れるような眼差しで私を陛下と呼ぶ。
ヒロインが悪役令嬢からの被害を訴える。元女として前世の記憶持ちとしてこの状況違和感しかないのですが…。
なんとか成敗してみたい。
悪役令嬢に相応しいエンディング
無色
恋愛
月の光のように美しく気高い、公爵令嬢ルナティア=ミューラー。
ある日彼女は卒業パーティーで、王子アイベックに国外追放を告げられる。
さらには平民上がりの令嬢ナージャと婚約を宣言した。
ナージャはルナティアの悪い評判をアイベックに吹聴し、彼女を貶めたのだ。
だが彼らは愚かにも知らなかった。
ルナティアには、ミューラー家には、貴族の令嬢たちしか知らない裏の顔があるということを。
そして、待ち受けるエンディングを。
【完結】悪役令嬢は断罪後、物語の外で微笑む
あめとおと
恋愛
断罪され、国外追放となった悪役令嬢エレノア。
けれど彼女は、泣かなかった。
すべてを失ったはずのその瞬間、彼女を迎えに来たのは、
隣国最大商会の会頭であり、“共犯者”の青年だった。
これは、物語の舞台を降りた悪役令嬢が、
自由と恋、そして本当の幸せを手に入れるまでの、
ざまぁと甘さを少しだけ含んだショートショート。
悪役令嬢ですが、兄たちが過保護すぎて恋ができません
由香
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢・セレフィーナに転生した私。
破滅回避のため、目立たず静かに生きる――はずだった。
しかし現実は、三人の兄による全力溺愛&完全監視生活。
外出には護衛、交友関係は管理制、笑顔すら規制対象!?
さらに兄の親友である最強騎士・カインが護衛として加わり、
静かで誠実な優しさに、次第に心が揺れていく。
「恋をすると破滅する」
そう信じて避けてきた想いの先で待っていたのは、
断罪も修羅場もない、安心で騒がしい未来だった――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる