人助けサークル CR-X

ドラマチック東京

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4.判決は下された

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「高里。お前、この間はよくも俺のCR-Xをあんなボコボコにしてくれたな。せっかく車屋のおじさんに値引きしてもらったのに板金でさらに金がかかったじゃねえか。最悪だぜ。お前のせいで俺は人を殺すのにハマったんだ。俺じゃなく、お前のせいだ。きっと天国でお前を置いて死んだクソオヤジも泣いてるぞ。やーい父泣かせ。
悔しかったらお前は2月7日に竜王渓駅に来い。俺のCR-Xの全てをお前に見せてやるよ」
この挑発する文章が俺のポストに届いたその日、俺は織川とかいう男を心底許せないと思った。
極悪非道で残虐な人殺しのくせに自分を正当化し、人の人生や家族の尊厳を踏みにじるような発言。絶対に許せない。俺は今すぐに織川を殺したいと思ったが、俺が人殺しになればあの織川と一緒になる。だから俺は人殺しにはなりたくない。俺のZも傷付くし…
そもそも、俺はCR-X自体下の中ぐらいの車だと思ってるし、ああいう酷いセリフは本心じゃなくてあの女どもに言わされただけなんだけどな…
俺は一瞬で、アイツと勝負するために竜王渓駅に行く事を決意した。そしてやってきた2月7日。俺は愛車のZとともに竜王渓駅へと駆け出した。
例え燃費が悪くても、小回りが効かなくても、パワーと排気量とリトラさえあればいい。Zは俺が選んだ車だ。死ぬ時も一緒だぜ。
Zへの思いを心の中で綴っていると、もう俺は竜王渓駅へと辿り着いていた。
駐車場には、あの赤のCR-X。中には…誰も、いない。
しばらくして、あの織川が缶コーヒーを持って俺の方にきた。そして、次の瞬間、俺のZを蹴り、缶コーヒーを少しだけ、俺のZにぶっかけた。そして、織川はこう言った。
「俺は殺しのプロだ。かかってこい。お前なんか俺のテクで崖から落ちてミンチだぞ」
窓越しに聞こえたその言葉に、俺は静かに激怒した。
そして、俺たちは並んで交差点へと向かった。
スタートは、信号機が赤から青になった時。この勝負で、判決が下される。俺はCR-Xに勝って、織川に土下座させる…!それができなければ、俺は走り屋をやめて日光から逃げる。そう決めた。
信号が赤から青に、俺らはクラッチを踏み、ギアをチェンジする。そして、バトルは始まった。
最初は長い直線だった。しかし、その先にはすぐコーナーがやってくる。俺は余裕を持ってタイヤを滑らせる。そして、正面を向いてそのまま進む。
いつものように完璧に走っていた。しかし、あのCR-Xには勝てそうにない…
なぜだ?あのCR-Xはチューンしまくってもいって220馬力ぐらいしか出ないんじゃねーのか?なのに、320馬力の俺のZにくっついてきやがる。クソが…
工場汗水流して稼いだ大切な金を、こんな馬鹿みたいな所で無駄にしたくねぇ!あのCR-Xには傷をつけられるのさえイヤだ。ブチ抜いてその差を見せつけてやる!
俺は強くアクセルを踏んだ。レッドゾーン限界までエンジンを回して、すかさずギアチェンジ。
しかし、ヤツは未だに食いついてくる。コーナーでも差をつけれない。なぜだ?サンデーレーサーの生半可なグリップ走行よりも俺のドリフトのほうが早い筈なのに!
思考を巡らせて、俺は信じたくない事実に気づいた。
あのCR-Xは、ATだったのだ…
走り屋であるかぎり、ATと戦うなんてもっての外。あいつは、走り屋のくせにATとかいう機械に頼っている、クソダセェセッコセコなヤツだったのだ。
だが、俺はそのATのCR-Xに勝負を仕掛けてしまったのだ。
この勝負、なんとしてでも勝つッ!
小さなコーナーでも、すかさずドリフトで華麗に擦り抜けた。しかしCR-Xは張り付いてくる。
小刻みに、何重にもくねっている道でも、俺は減速を抑えるためにハンドリングを限界まで抑えた。しかしCR-Xは張り付いてくる。
やっと大きなコーナーがやってきた。俺はドリフトでコーナーを曲がり、ついにあのCR-Xを払い除けたかと思った。しかしCR-Xは張り付いてくる。
俺は視界の8割をあのCR-Xにやってしまい、走りに全く集中出来ずにいた。そして、俺はとうとうCR-Xに抜かれてしまった。
俺を背中に加速していくCR-X、俺のZはただCR-Xが先導する道を走るだけのなにかと化していた。もうこれはレースではない。最初から、この勝負は決まっていたのだ。
そうしてもう既に残りのコーナーはあと4つとなっていた。そして、あと一つのコーナーを曲がれば、ストレートとなる事を俺は思い出した。
あのCR-Xには、もうけっこう差をつけられていた。しかし、その事を思い出して俺の勝負心に火がついた。
あまりにも遅すぎる目覚めだったが、俺は、CR-Xを抜けばいいただそれだけだと思い込んでもう止まらなかった。
俺のZのV6エンジンのように俺の心は燃え上がる。俺の父さんをバカにしたくせに、勝って帰ろうだなんて、させねーぞそんなこと!
俺はこのストレートでアクセルを踏み潰す勢いで踏んだ。踏みっぱなし。そして、やってきた2つ目のコーナー。俺は今度はブレーキを踏みっぱなしにした。減速して、コーナーを曲がれば、もうCR-Xは目と鼻の先にいた。
そして、すぐにやってきた3つ目のコーナー。これをドリフトでよける。
そして、最後のコーナーの前のストレートがやってきた。ここで勝負だ。抜ける、抜ける、抜け!
CR-Xは左の方へとはけた。俺はそのまま右側に行く。
そしてコーナー。俺はすぐさまCR-Xを抜こうとしたが、CR-Xが右の方に少し曲がってきた。
マズイ!このままだと、隙間が塞がれて俺のZはCR-Xとともに潰れてしまう。そんなのは嫌だ!中古車ショップで格安の170万で手に入れた3000ccのZ、こんなところで壊したら汗水流して稼いだ金がパァだ!しかも、俺はCR-X如きに負けたってことで日光の走り屋中で笑い者になっちまう。排気量が1500ccも違う。しかも、100馬力もパワーが違うのに負けた。と言う事でな!かといってそのCR-Xを壊せば、俺は日光中の走り屋界隈で除け者扱いされる。マシンを壊すという事や人を殺すということは走り屋の中でもありえない行為…
ならば、どうする。どうすれば…
ああ、もういい!俺は短い隙間、これを避けてCR-Xを抜く、そして勝つ!
俺はCR-Xのように右に曲がり、視界をCR-Xから隙間へと移した。全ての神経、全ての細胞を隙間に集中させる。
いける!いけるぞ!このまま俺は勝つ!
時速150kmでCR-Xなんてぶっ飛ばしてやる!!!

その瞬間、大きな破裂音と共に、俺は瞬間的で絶望的な痛みを味わった。

痛い、痛い痛い痛い!
あれ…なんか、俺のZ、燃えてる?
CR-Xは何処だ?何処に消えたんだ?
もしかすると、俺は峠から転落した?
という事は、俺のZはただの鉄クズになったのか?
という事は、俺はCR-Xに負けたのか?
という事は、俺は日光中で笑い物になってしまうのか?

という事は…
俺は…
死んだ…?

嫌だ

嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ

生きたい、生きたい生きたい!
生きて、俺は走るんだ!
生きて、俺は峠のスターとなるんだ!
生きて、俺はZとともに余生を過ごすんだ!
死にたくない!死にたくない!でも、もう意識が!

そして、高里は意識を失った。
高里が最後に見たのは、燃えてゆくZ31のボディと、血が滲んでゆく服と、ただ空一面に広がる星屑だけだった…
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