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第三章
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「そいつはいったいなんだ? ことによっちゃ、おれが協力してやれないこともないぜ。なんたって、おれはこのいまいましい動物園のなかであっても、ちょっとした顔であることにはちがいないからな」
オオカミのことばに、ヒツジは身を乗り出しました。
「それはつまり、あなたはぼくのさがしている人がどこにいるか、知っているってことですか?」
「人? 人間をさがしているのか。なんだ、おまえ、ご主人さまとはぐれたのか?」
「いえ、そういうわけじゃないんですけど……」
「まぁ、どうだっていいさ。さぁ、どんなやつをさがしているのか話してみな。だが、その前にもっと近くに寄りな。おまえのさがしている人間が、ほかの連中にとっちゃマズイやつだって可能性もあるんだからな」
ヒツジはなるほどと思い、オオカミの檻に近づこうとしましたが、オオカミの鋭い目は相変わらずぎらぎらと不気味に光り、ヒツジはそれを見ただけで、やはり心臓がつぶれそうなほど恐ろしくなりました。
それでも自分をふるい立たせると、なんとかして二、三歩オオカミの檻に近づきました。するとオオカミは、地を這うような低い声で、あざけるように笑いました。
「まったく臆病なやつだな。おれはこんな頑丈な檻のなかに閉じ込められているっていうのに、なにをそんなにおびえる必要があるんだ。おまえはおまえがさがしている人間を、ほんとうに見つけたいとは思っていないのか?」
オオカミのことばに、農場で待っているであろう、あの美しいネコのことが自然と思い出されてきました。すると、ヒツジの胸には勇気が沸いてきて、オオカミの檻のすぐ前まで近寄ることができました。オオカミはうなるような声を出しながら、ヒツジのにおいを嗅ぎつづけていました。
「それで、ぼくのさがしている人なんですが……」
「あぁ、そうだったな……」
オオカミはそう言うと、ゆっくりと立ち上がりました。立ち上がったオオカミは、ヒツジの思いもよらぬほどの大きさで、ヒツジは思わずたじろぎました。しかし、ヒツジは気をしっかりもつと、地面に足を踏ん張りました。
オオカミは檻のすぐ外にいるヒツジに、忍び寄るようにして近づいてきました。その足取りはしずかともいえるほどでしたが、ヒツジに近づくたびに、オオカミはまるで燃え盛る炎のようにヒツジを威圧し、圧倒しました。
「それじゃ、おまえのさがしている人間ってのを言ってみな」
そう言ったオオカミの声はますます低く、目には見えない蜘蛛の糸のように、ヒツジの全身に絡みつきました。ヒツジは、おじけづきそうな心を必死にふるい立たせると、
「ぼ、ぼくは、ぼくのこの毛を刈って、ふかふかのシーツに仕立ててくれる人をさがしているんです」
言いながら、ヒツジの全身は恐怖に震えていました。しかし、
「なんだ、そんなことか。そいつなら簡単に見つかるぜ」
と、オオカミが言ったのを聞くと、ヒツジは恐ろしさも忘れて叫びました。
「えっ、あなたはその人を知っているんですか?」
「あぁ、知っているとも。それはな、このおれさ」
オオカミはそう言うと、いやらしいにやにや笑いを口の端に浮かべました。
「見てみな、おれのこの牙を。三日月みたいに鋭くて、いかにもよく切れそうだろう」
口をあけたオオカミの牙は、農場の犬のそれなどは及びもしないほどの大きさと鋭さでした。オオカミの牙を見たヒツジに、忘れかけていた恐ろしさが再び戻ってきて、思わずごくりと喉を鳴らしました。
オオカミのことばに、ヒツジは身を乗り出しました。
「それはつまり、あなたはぼくのさがしている人がどこにいるか、知っているってことですか?」
「人? 人間をさがしているのか。なんだ、おまえ、ご主人さまとはぐれたのか?」
「いえ、そういうわけじゃないんですけど……」
「まぁ、どうだっていいさ。さぁ、どんなやつをさがしているのか話してみな。だが、その前にもっと近くに寄りな。おまえのさがしている人間が、ほかの連中にとっちゃマズイやつだって可能性もあるんだからな」
ヒツジはなるほどと思い、オオカミの檻に近づこうとしましたが、オオカミの鋭い目は相変わらずぎらぎらと不気味に光り、ヒツジはそれを見ただけで、やはり心臓がつぶれそうなほど恐ろしくなりました。
それでも自分をふるい立たせると、なんとかして二、三歩オオカミの檻に近づきました。するとオオカミは、地を這うような低い声で、あざけるように笑いました。
「まったく臆病なやつだな。おれはこんな頑丈な檻のなかに閉じ込められているっていうのに、なにをそんなにおびえる必要があるんだ。おまえはおまえがさがしている人間を、ほんとうに見つけたいとは思っていないのか?」
オオカミのことばに、農場で待っているであろう、あの美しいネコのことが自然と思い出されてきました。すると、ヒツジの胸には勇気が沸いてきて、オオカミの檻のすぐ前まで近寄ることができました。オオカミはうなるような声を出しながら、ヒツジのにおいを嗅ぎつづけていました。
「それで、ぼくのさがしている人なんですが……」
「あぁ、そうだったな……」
オオカミはそう言うと、ゆっくりと立ち上がりました。立ち上がったオオカミは、ヒツジの思いもよらぬほどの大きさで、ヒツジは思わずたじろぎました。しかし、ヒツジは気をしっかりもつと、地面に足を踏ん張りました。
オオカミは檻のすぐ外にいるヒツジに、忍び寄るようにして近づいてきました。その足取りはしずかともいえるほどでしたが、ヒツジに近づくたびに、オオカミはまるで燃え盛る炎のようにヒツジを威圧し、圧倒しました。
「それじゃ、おまえのさがしている人間ってのを言ってみな」
そう言ったオオカミの声はますます低く、目には見えない蜘蛛の糸のように、ヒツジの全身に絡みつきました。ヒツジは、おじけづきそうな心を必死にふるい立たせると、
「ぼ、ぼくは、ぼくのこの毛を刈って、ふかふかのシーツに仕立ててくれる人をさがしているんです」
言いながら、ヒツジの全身は恐怖に震えていました。しかし、
「なんだ、そんなことか。そいつなら簡単に見つかるぜ」
と、オオカミが言ったのを聞くと、ヒツジは恐ろしさも忘れて叫びました。
「えっ、あなたはその人を知っているんですか?」
「あぁ、知っているとも。それはな、このおれさ」
オオカミはそう言うと、いやらしいにやにや笑いを口の端に浮かべました。
「見てみな、おれのこの牙を。三日月みたいに鋭くて、いかにもよく切れそうだろう」
口をあけたオオカミの牙は、農場の犬のそれなどは及びもしないほどの大きさと鋭さでした。オオカミの牙を見たヒツジに、忘れかけていた恐ろしさが再び戻ってきて、思わずごくりと喉を鳴らしました。
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