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8話
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公爵邸の地下にある、隠された魔術工房。 カシアンが古びた魔導書を閉じると、重苦しい沈黙がその場を支配しました。
「……見つけたよ、アルカード。彼女の呪いの根を絶つ唯一の方法をね」
カシアンの言葉に、エリスを傍らで抱き寄せていたアルカード様が、鋭い眼差しを向けました。エリスは不安に駆られ、アルカード様の服の裾をぎゅっと握りしめます。
「言いなさい、カシアン。代償が何であれ、私は払う」
「はっ、だろうと思ったよ。だが、これは魔力や金で解決する話じゃない。彼女の呪いは、魂の根元に食い込んでいる。これを引き剥がすには、彼女の『命の容れ物』を別の誰かと繋ぎ直す必要があるんだ」
カシアンは机の上に、禍々しい文様の描かれた銀の短剣を置きました。
「『共生の契約』……。君の寿命の半分を、物理的に切り取って彼女に流し込む。そうすれば、呪いは君の強大な魔力に圧し潰され、彼女は君と同じ年月を生きることになるだろう」
「――それだけか。容易いことだ」
アルカード様が迷いなく短剣に手を伸ばそうとすると、カシアンがそれを押さえました。
「待て、話は最後まで聞け。寿命を分けるということは、君自身の力が永続的に削られるということだ。さらに、この契約を結べば、君が苦痛を感じれば彼女も感じ、君が死ねば、彼女も即座に死ぬことになる。……彼女を、君の『道連れ』にするということだぞ」
「……公爵様、それは……っ!」
エリスは血の気が引くのを感じました。 自分の命を救うために、この高貴で強大な王の命を削り、さらに自分の生死さえも彼の道連れにしてしまう。それは救いではなく、あまりにも残酷な縛りではないでしょうか。
「公爵様、いけません! 私は……私は、お一人で死ぬのが怖かっただけで、貴方を巻き添えにしたいわけでは……っ」
エリスの言葉を遮るように、アルカード様が彼女の頬を両手で包み込みました。その銀色の瞳には、冷徹なほどの歓喜が宿っていました。
「……何を言っている、エリス。最高の解決策ではないか」
「え……?」
「君が私の寿命の一部になり、私の死と共に果てる。……これ以上完璧な独占が、他にあるか? 私は、私が死んだ後の世界に、君が一人で残されることこそが、唯一の恐怖だったのだ」
アルカード様の言葉は、どこまでも歪んでいました。 救いたいのではない。死んでもなお、自分以外の誰も彼女に触れられないようにしたい。そのための道連れなら、彼は喜んで自らの命を差し出すのです。
「カシアン、準備しろ。今すぐにだ」
「……やれやれ、これだから『死神』の恋は恐ろしい。お嬢さん、諦めな。この男は、君を地獄の果てまで引きずっていく気だよ」
カシアンが魔法陣を描き始める中、アルカード様は震えるエリスを優しく、しかし鎖で繋ぐような強さで抱きしめました。
「怖がることはない、エリス。これからは、鼓動一つさえ、私と共有するのだ」
その夜、禁忌の儀式が始まりました。 短剣がアルカード様の掌を切り裂き、その血がエリスの胸元の「黒い百合」に滴り落ちます。 呪いと愛が激しく混ざり合う、甘美で残酷な夜が幕を開けました。
「……見つけたよ、アルカード。彼女の呪いの根を絶つ唯一の方法をね」
カシアンの言葉に、エリスを傍らで抱き寄せていたアルカード様が、鋭い眼差しを向けました。エリスは不安に駆られ、アルカード様の服の裾をぎゅっと握りしめます。
「言いなさい、カシアン。代償が何であれ、私は払う」
「はっ、だろうと思ったよ。だが、これは魔力や金で解決する話じゃない。彼女の呪いは、魂の根元に食い込んでいる。これを引き剥がすには、彼女の『命の容れ物』を別の誰かと繋ぎ直す必要があるんだ」
カシアンは机の上に、禍々しい文様の描かれた銀の短剣を置きました。
「『共生の契約』……。君の寿命の半分を、物理的に切り取って彼女に流し込む。そうすれば、呪いは君の強大な魔力に圧し潰され、彼女は君と同じ年月を生きることになるだろう」
「――それだけか。容易いことだ」
アルカード様が迷いなく短剣に手を伸ばそうとすると、カシアンがそれを押さえました。
「待て、話は最後まで聞け。寿命を分けるということは、君自身の力が永続的に削られるということだ。さらに、この契約を結べば、君が苦痛を感じれば彼女も感じ、君が死ねば、彼女も即座に死ぬことになる。……彼女を、君の『道連れ』にするということだぞ」
「……公爵様、それは……っ!」
エリスは血の気が引くのを感じました。 自分の命を救うために、この高貴で強大な王の命を削り、さらに自分の生死さえも彼の道連れにしてしまう。それは救いではなく、あまりにも残酷な縛りではないでしょうか。
「公爵様、いけません! 私は……私は、お一人で死ぬのが怖かっただけで、貴方を巻き添えにしたいわけでは……っ」
エリスの言葉を遮るように、アルカード様が彼女の頬を両手で包み込みました。その銀色の瞳には、冷徹なほどの歓喜が宿っていました。
「……何を言っている、エリス。最高の解決策ではないか」
「え……?」
「君が私の寿命の一部になり、私の死と共に果てる。……これ以上完璧な独占が、他にあるか? 私は、私が死んだ後の世界に、君が一人で残されることこそが、唯一の恐怖だったのだ」
アルカード様の言葉は、どこまでも歪んでいました。 救いたいのではない。死んでもなお、自分以外の誰も彼女に触れられないようにしたい。そのための道連れなら、彼は喜んで自らの命を差し出すのです。
「カシアン、準備しろ。今すぐにだ」
「……やれやれ、これだから『死神』の恋は恐ろしい。お嬢さん、諦めな。この男は、君を地獄の果てまで引きずっていく気だよ」
カシアンが魔法陣を描き始める中、アルカード様は震えるエリスを優しく、しかし鎖で繋ぐような強さで抱きしめました。
「怖がることはない、エリス。これからは、鼓動一つさえ、私と共有するのだ」
その夜、禁忌の儀式が始まりました。 短剣がアルカード様の掌を切り裂き、その血がエリスの胸元の「黒い百合」に滴り落ちます。 呪いと愛が激しく混ざり合う、甘美で残酷な夜が幕を開けました。
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