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11話
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教団の襲撃から数日。公爵邸は、以前にも増して異様な静寂に包まれていました。 窓という窓には魔法の遮光幕が下ろされ、太陽の光さえもエリスに触れることは許されません。
エリスが目を覚ますと、そこは公爵邸の最深部にある、アルカード様の私室でした。
「……公爵様?」
隣を見ると、アルカード様が横たわったまま、燃えるような赤い瞳でじっとエリスを見つめていました。戦いの日から、彼の瞳は銀色に戻ることはありませんでした。
「どこへも行く必要はない、エリス。食事も、着替えも、すべてこの部屋で済ませればいい。……外の世界は、君を傷つける毒で満ちている」
「でも、ずっとここに閉じこもっているわけには……カシアン様にも、お体の具合を聞かなければなりませんし……」
エリスが身を起こそうとした瞬間、足首に冷たい感触が走りました。 見ると、そこには細く繊細な、しかし見たこともないほど強固な魔力で作られた「黄金の枷」が嵌められていました。
「公爵様……これは……?」
「君が私から離れようとすると、私の心臓が痛むのだ。……だから、物理的に繋ぎ止めることにした。これがあれば、君がこの部屋の扉を超えようとした瞬間に、私の魔力が君を優しく引き戻してくれる」
アルカード様はエリスを後ろから抱き寄せ、その細い首筋に深く、牙を立てるようにして痕を刻みました。それは吸い痕というより、もはや所有を証明するための「烙印」でした。
そこへ、ノックもなしにカシアンが部屋へ踏み込んできました。
「おい、アルカード! いい加減にしろ、邸中に張り巡らせたこの結界は何だ! 自分の魔力を垂れ流して、自滅する気か!」
「……カシアン。許可なく入るなと言ったはずだ」
アルカード様の殺気に、カシアンは一瞬怯みましたが、すぐに鋭い視線で彼を睨み返しました。
「お前の体を見ろ。エリスの呪いを肩代わりし、さらに寿命を分け与え、無理やり魔力を使い続けた結果だ。……お前の魔力は今、憎悪と独占欲で変質している。『死神』どころか、このままでは本物の『魔王』に成り果てるぞ」
カシアンはエリスの方を向き、苦い顔で告げました。
「お嬢さん。今のこいつは、愛と狂気の区別がついていない。……君がこいつを拒絶すれば、こいつは世界を滅ぼしてでも君を閉じ込めるだろう。だが、君がこいつを甘やかしても、こいつは自分の命を削って君を飼い殺すことになる」
「……私は……」
エリスは足首の黄金の枷を見つめ、それから自分を抱きしめるアルカード様の熱い体温を感じました。 彼の心臓の鼓動が、自分の背中を通じて直接伝わってくる。
「私は、公爵様が魔王になっても構いません。……この方が、私がいなければ死んでしまうというのなら、私は喜んでこの檻で一生を過ごします」
「エリス……ああ、愛している。私の唯一の、心臓(いのち)……」
アルカード様は歓喜に震え、エリスをベッドへと押し倒しました。 カシアンは溜息をつき、首を振って部屋を後にしました。
二人の命は、今や一つの円環の中に閉じ込められていました。 しかし、その閉ざされた楽園の外では、教団の残党がさらなる「生贄」の秘密を暴こうと、動きを強めていたのです。
エリスが目を覚ますと、そこは公爵邸の最深部にある、アルカード様の私室でした。
「……公爵様?」
隣を見ると、アルカード様が横たわったまま、燃えるような赤い瞳でじっとエリスを見つめていました。戦いの日から、彼の瞳は銀色に戻ることはありませんでした。
「どこへも行く必要はない、エリス。食事も、着替えも、すべてこの部屋で済ませればいい。……外の世界は、君を傷つける毒で満ちている」
「でも、ずっとここに閉じこもっているわけには……カシアン様にも、お体の具合を聞かなければなりませんし……」
エリスが身を起こそうとした瞬間、足首に冷たい感触が走りました。 見ると、そこには細く繊細な、しかし見たこともないほど強固な魔力で作られた「黄金の枷」が嵌められていました。
「公爵様……これは……?」
「君が私から離れようとすると、私の心臓が痛むのだ。……だから、物理的に繋ぎ止めることにした。これがあれば、君がこの部屋の扉を超えようとした瞬間に、私の魔力が君を優しく引き戻してくれる」
アルカード様はエリスを後ろから抱き寄せ、その細い首筋に深く、牙を立てるようにして痕を刻みました。それは吸い痕というより、もはや所有を証明するための「烙印」でした。
そこへ、ノックもなしにカシアンが部屋へ踏み込んできました。
「おい、アルカード! いい加減にしろ、邸中に張り巡らせたこの結界は何だ! 自分の魔力を垂れ流して、自滅する気か!」
「……カシアン。許可なく入るなと言ったはずだ」
アルカード様の殺気に、カシアンは一瞬怯みましたが、すぐに鋭い視線で彼を睨み返しました。
「お前の体を見ろ。エリスの呪いを肩代わりし、さらに寿命を分け与え、無理やり魔力を使い続けた結果だ。……お前の魔力は今、憎悪と独占欲で変質している。『死神』どころか、このままでは本物の『魔王』に成り果てるぞ」
カシアンはエリスの方を向き、苦い顔で告げました。
「お嬢さん。今のこいつは、愛と狂気の区別がついていない。……君がこいつを拒絶すれば、こいつは世界を滅ぼしてでも君を閉じ込めるだろう。だが、君がこいつを甘やかしても、こいつは自分の命を削って君を飼い殺すことになる」
「……私は……」
エリスは足首の黄金の枷を見つめ、それから自分を抱きしめるアルカード様の熱い体温を感じました。 彼の心臓の鼓動が、自分の背中を通じて直接伝わってくる。
「私は、公爵様が魔王になっても構いません。……この方が、私がいなければ死んでしまうというのなら、私は喜んでこの檻で一生を過ごします」
「エリス……ああ、愛している。私の唯一の、心臓(いのち)……」
アルカード様は歓喜に震え、エリスをベッドへと押し倒しました。 カシアンは溜息をつき、首を振って部屋を後にしました。
二人の命は、今や一つの円環の中に閉じ込められていました。 しかし、その閉ざされた楽園の外では、教団の残党がさらなる「生贄」の秘密を暴こうと、動きを強めていたのです。
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