辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました

腐ったバナナ

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16話

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 ガイウスの非情な「偽装追放計画」は、ミサキの安全を確保するための、最後の手段だった。監査官たちが王都に戻り、国王の正式な命令書を持って再訪するまでの数日間、辺境の騎士団は極秘裏に準備を進めた。

 ガイウスは、ミサキを抱きしめる時間を惜しむように、片時も彼女の傍を離れなかった。

「ミサキ、隠れ家は、この辺境の領地で最も安全な場所だ。私ですら年に数回しか立ち入らない。君のチート能力の全てを再現するための設備も整えた。不便はない」

 彼は、ミサキに完璧な安全を与えることと引き換えに、彼女を世界から切り離すという選択をしていた。

「団長、あなたは私を永遠に独占したいだけでしょう?」

 ミサキは、彼の冷酷な愛を試すように言った。

「その通りだ」

 ガイウスは即答した。

「君は私の命だ。君を、世界の汚れた欲望に晒すくらいなら、私だけの秘密の楽園に閉じ込める。これは、私の愛であり、支配だ」

 その支配的な愛が、ミサキにとっては究極の安心となっていた。

 別れの時が近づき、騎士団の面々もミサキの元を訪れた。彼らは、ミサキが王都に連行されるという「偽の噂」を信じていた。

 副官のゼノンは、涙ぐみながらミサキに深く頭を下げた。

「ミサキ様、我々のために尽くしてくださった恩を忘れません!王都へ行っても、どうかお元気で!」

「騎士団長の婚約者であるミサキ様を、辺境から奪うなど、王都の貴族のすることは理解できません!」

 騎士たちの純粋な信頼と愛情が、ミサキの胸を締め付けた。ミサキは彼らを騙していることに心を痛めたが、辺境の平和とガイウスの安全のため、何も言うことはできなかった。

 ミサキは、彼らに餞別として、保存の効くドライフルーツをふんだんに使った特製の栄養バーを振る舞った。

「皆さんが、遠征先でも力強く戦えるように。これは、わたくしからの最後の贈り物です」

 騎士たちは、その絶品の栄養バーを噛みしめ、ミサキの温かい心に感謝した。彼らは、ミサキの恩を裏切った王都への憎しみを新たにした。

 数日後、監査官たちが国王の命令書を携え、辺境に到着した。

 ガイウスは、ミサキを王都へ送るために、護衛隊を編成した。

「ミサキ。予定通りだ。私が『魔物に襲撃された』という合図を送ったら、隠れ家への転移魔法陣を使え。私の合図を待て。それまで、決して不安に負けるな」

 ガイウスは、ミサキの顔に触れ、最後のキスをした。そのキスは、別れの悲しみと、未来への約束に満ちていた。

 そして、ミサキは、王都の監査官たちと、偽装の護衛隊と共に、ログハウスを後にした。

 誰も知らない。ミサキが向かうのは、王都ではなく、ガイウスが彼女だけのために用意した、秘密の楽園なのだと。

 辺境のログハウスには、冷酷な騎士団長の、愛する者を世界から切り離すという、悲しくも甘い愛の証だけが残された。
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