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15話
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「君……やっぱりそうなんだね。『あっち』から来たんだろう?」
スケッチをしていた青年——カイトと名乗った彼は、懐かしそうに目を細めました。 ギルバート様の殺気すら届いていないかのような、浮世離れした雰囲気。彼は私にだけ聞こえるような小さな声で、残酷な福音を告げました。
「あの事故の魔道具……あれをもう一度、特定の術式で暴走させれば、魂は元の場所へ戻れる。僕はそのためにずっと研究してきたんだ。……一緒に帰らないか?」
(帰る……? 日本に? 満員電車と残業と、コンビニ飯のあの日々に……?)
私の脳内プロジェクターが、激しく乱れました。 高層ビルの夜景、使い慣れたスマホ、大好きだったアニメの最終回……。 失ったはずの日常が、色鮮やかなビジョンとなって空中に溢れ出します。
「アリア……。それは、なんだ。その光り輝く街並みは……お前の、本当の居場所なのか?」
ギルバート様の声が、震えていました。 彼は、私の脳内から溢れ出す「異世界の断片」を見て、悟ってしまったのです。自分がどれほど愛を注いでも、彼女の根底には、自分たちの決して触れられない世界があるのだと。
「……帰りませんわ。私は、今ここに……」
「嘘だ!!」
ギルバート様が、私の言葉を遮って叫びました。 「声」が聞こえなくても、今の彼には「映像」が見える。 映像の中の私は、日本の風景を見て、明らかに「懐かしさ」で涙を浮かべていたから。
「お前の心は、今、その見たこともない街を求めて泣いているじゃないか! お前は……最初から、俺を捨てて逃げるつもりだったんだな!?」
(違う! それはただの思い出で……! 私が今愛しているのは、冷蔵庫……じゃなくて、あなたなのよ!!)
必死に念じますが、動揺のせいで映像はノイズだらけになり、私の本心はうまく伝わりません。
「行かせない。……絶対に、行かせないぞ」
ギルバート様はカイトを突き飛ばすと、私を強引に抱きかかえ、馬に飛び乗りました。 背後でカイトが「一週間後の満月の夜、あの場所で待っている!」と叫ぶ声が聞こえましたが、ギルバート様はそれを振り切るように馬を走らせました。
公爵邸に戻るなり、私は窓のない奥座敷へと連れて行かれました。 かつてないほどの冷気を纏ったギルバート様が、部屋の扉に幾重もの鍵をかける音が響きます。
「ギルバート様、開けてください! 話を聞いて!」
「聞かない。……お前の脳内が、あの男の言葉に揺れたのは事実だ。……ならば、揺れる暇もないほど、俺で埋め尽くしてやる」
彼は私をベッドに押し込み、その上に重なりました。 彼の瞳には、出会った頃の冷徹さではなく、壊れそうなほど脆く、そして禍々しいほどの執着が宿っていました。
「……魂が帰りたいと言うなら、その前に、この肉体に俺のすべてを刻み込んでやる。……お前の記憶が、俺以外のすべてを拒絶するまで」
(ああ……。どうして。……言葉が、うまく届かない。私の『好き』という気持ちは、こんなにも溢れているのに……!)
私の脳内プロジェクターが、最後に映し出したのは、現代の風景ではなく――。 初めてパンケーキを一緒に食べた時の、彼の少し照れたような、優しい笑顔でした。
しかし、嫉妬と恐怖に狂ったギルバート様には、その映像すら「自分を騙すための罠」に見えてしまっていたのです。
二人の心は、最強の共有能力を持っていながら、皮肉にも最悪の形ですれ違っていくのでした。
スケッチをしていた青年——カイトと名乗った彼は、懐かしそうに目を細めました。 ギルバート様の殺気すら届いていないかのような、浮世離れした雰囲気。彼は私にだけ聞こえるような小さな声で、残酷な福音を告げました。
「あの事故の魔道具……あれをもう一度、特定の術式で暴走させれば、魂は元の場所へ戻れる。僕はそのためにずっと研究してきたんだ。……一緒に帰らないか?」
(帰る……? 日本に? 満員電車と残業と、コンビニ飯のあの日々に……?)
私の脳内プロジェクターが、激しく乱れました。 高層ビルの夜景、使い慣れたスマホ、大好きだったアニメの最終回……。 失ったはずの日常が、色鮮やかなビジョンとなって空中に溢れ出します。
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ギルバート様の声が、震えていました。 彼は、私の脳内から溢れ出す「異世界の断片」を見て、悟ってしまったのです。自分がどれほど愛を注いでも、彼女の根底には、自分たちの決して触れられない世界があるのだと。
「……帰りませんわ。私は、今ここに……」
「嘘だ!!」
ギルバート様が、私の言葉を遮って叫びました。 「声」が聞こえなくても、今の彼には「映像」が見える。 映像の中の私は、日本の風景を見て、明らかに「懐かしさ」で涙を浮かべていたから。
「お前の心は、今、その見たこともない街を求めて泣いているじゃないか! お前は……最初から、俺を捨てて逃げるつもりだったんだな!?」
(違う! それはただの思い出で……! 私が今愛しているのは、冷蔵庫……じゃなくて、あなたなのよ!!)
必死に念じますが、動揺のせいで映像はノイズだらけになり、私の本心はうまく伝わりません。
「行かせない。……絶対に、行かせないぞ」
ギルバート様はカイトを突き飛ばすと、私を強引に抱きかかえ、馬に飛び乗りました。 背後でカイトが「一週間後の満月の夜、あの場所で待っている!」と叫ぶ声が聞こえましたが、ギルバート様はそれを振り切るように馬を走らせました。
公爵邸に戻るなり、私は窓のない奥座敷へと連れて行かれました。 かつてないほどの冷気を纏ったギルバート様が、部屋の扉に幾重もの鍵をかける音が響きます。
「ギルバート様、開けてください! 話を聞いて!」
「聞かない。……お前の脳内が、あの男の言葉に揺れたのは事実だ。……ならば、揺れる暇もないほど、俺で埋め尽くしてやる」
彼は私をベッドに押し込み、その上に重なりました。 彼の瞳には、出会った頃の冷徹さではなく、壊れそうなほど脆く、そして禍々しいほどの執着が宿っていました。
「……魂が帰りたいと言うなら、その前に、この肉体に俺のすべてを刻み込んでやる。……お前の記憶が、俺以外のすべてを拒絶するまで」
(ああ……。どうして。……言葉が、うまく届かない。私の『好き』という気持ちは、こんなにも溢れているのに……!)
私の脳内プロジェクターが、最後に映し出したのは、現代の風景ではなく――。 初めてパンケーキを一緒に食べた時の、彼の少し照れたような、優しい笑顔でした。
しかし、嫉妬と恐怖に狂ったギルバート様には、その映像すら「自分を騙すための罠」に見えてしまっていたのです。
二人の心は、最強の共有能力を持っていながら、皮肉にも最悪の形ですれ違っていくのでした。
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