離婚寸前で人生をやり直したら、冷徹だったはずの夫が私を溺愛し始めています

腐ったバナナ

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22話

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 セシルの妊娠もいよいよ臨月を迎え、侯爵城の緊張感は最高潮に達していた。特にアークライトの精神状態は、極限に達していた。

 アークライトは、セシルが「危険な王都」に出ることを防ぐために築いた過剰な警備をさらに強化し、城の中央広場を臨時分娩室へと改造した。

「セシル、君はもう歩く必要はない。この分娩室から一歩も出るな。万が一、緊急事態が発生した場合、ここが最も安全であり、私が一瞬で駆けつけられる」

 アークライトの「焦燥の青」は、城の壁をも突き破るほどの強さで放射されていた。彼の頭の中は、セシルと子の安全というただ一点のみで占められていた。

 ルーク副官は、侯爵城の廊下を歩くたびにアークライトの魔力による警報に引っかかり、疲労困憊していた。

 ルークは執務室で、アークライトに懇願した。

「団長!セシル様は健康です!過剰な警備は、かえってセシル様のストレスになっております!どうか、ご自身の結界騎士としての務めもお忘れなきよう……」

 アークライトはルークの言葉を完全に無視した。

「私の務めは、私の妻と子を守ることだ。ルーク、君は私が結界維持のために、前世でセシルを孤独にしたことを忘れたのか?二度と、私は義務のために愛する者を犠牲にはしない」

 彼の言葉には、前世の深い後悔が滲み出ていた。アークライトにとって、セシルと子の安全は、国を守る結界よりも、遥かに優先される絶対的な義務となっていた。

 セシルは、アークライトの極端な不安を理解していた。前世、彼女の死は彼に耐え難い孤独と後悔を与えた。今、彼はその過去を乗り越えようと、必死になっているのだ。

 セシルは、臨時分娩室にやってきたアークライトの手を取った。

「アークライト様。私の二度目の人生の全ては、貴方を孤独から解放するためにありました。貴方は、もう冷徹な仮面を被る必要はありません。貴方の愛は、私に届いています」

 セシルは、偽造遺言状の事件でアーサー叔父から取り上げた古い羊皮紙を取り出した。

「これを見てください。前世では、貴方はこの裏切りと私の孤独な死を、全て一人で背負っていた。貴方は常に、完璧でなければならないという重圧に苦しんでいた」

「しかし、今世は違います。私たちは共に裏切りを断罪し、貴方の能力が私を救い、私の能力が貴方を救った。貴方は、完璧でなくても、最高の夫です」

 セシルは、アークライトの顔を両手で包み込んだ。

「だから、どうか、不安の色を消してください。貴方の愛は、わたくしとこの子に最強の結界を与えています」

 アークライトの「焦燥の青」は、セシルの言葉と温もりに触れ、ゆっくりと「安堵の緑」に変わっていった。

「セシル……君は、私にとって最後の救済だ」

 アークライトは、セシルに不器用ながらも、心からの愛のキスを捧げた。

 そして、その直後、セシルは激しい陣痛に襲われた。

「アークライト様……生まれるわ!」

 アークライトの「愛の金」と「恐怖の白」が入り混じる中、二人の二度目の人生の最高の結晶が、今、生まれようとしていた。
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