透明令嬢は暗殺公爵の箱庭で愛でられる

腐ったバナナ

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5話

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 昨夜の凄まじい「供給」の果てに。 目覚めた私の鎖骨の下には、まるで炎で焼かれたような、紅く複雑な紋章が浮かび上がっていました。

 レオンハルト様の家紋を模した、消えない「独占の証」。 もはや彼の魔力なしでは息をすることさえ苦しく、彼に触れられることでしか安らぎを得られない。私は名実ともに、彼の所有物へと変えられていました。

 そんな朝、静かな箱庭の静寂を破るように、不穏な足音が響きました。

「――ほう、ここに『伝説の影』を隠しているというのは本当だったようだな」

 部屋の扉が乱暴に開かれ、現れたのは金髪を傲慢に揺らした男――帝国の第1皇子、ギルバートでした。 彼はレオンハルト様の不在を突いて、この邸に踏み込んできたのです。

「……っ」

 私は反射的に身を隠そうとしましたが、今の私にはレオンハルト様の魔力が満ちており、認識阻害が解けてしまっています。皇子の下劣な視線が、私の肌をなぞるように動きました。

「噂以上の美貌だ。ローウェル家の出来損ないと聞いていたが、これほどの『兵器』をアスガルド公爵一人が独占するなど、許されるはずがない」

 皇子が私の腕を掴もうと手を伸ばした、その時。

「――その汚い手を引け。さもなくば、今この場でその腕を切り落とす」

 凍りつくような冷気が部屋を満たしました。 背後に立っていたのは、抜刀せんばかりの殺気を放つレオンハルト様でした。その瞳は、もはや人間のものではなく、深淵の底のような暗い光を宿しています。

「アスガルド公爵! 貴様、皇族である私に向かって――」

「皇族だろうと何だろうと関係ない。……俺の箱庭は、皇帝ですら立ち入りを禁じた聖域だ」

 レオンハルト様は一瞬で間を詰めると、皇子の喉元に鋭い指先を突きつけました。その指先からは、黒い魔力が火花のように散っています。

「この女は、俺の魔力で、俺の血で、俺の愛で繋ぎ止めている俺だけのものだ。指一本、視線一つ、俺以外のものが触れることは許さない」

「ひ、ひぃっ……!」

 最強の暗殺者としての本能を剥き出しにしたレオンハルト様の前に、皇子は腰を抜かし、無様に逃げ出していきました。

 部屋に二人きりになると、レオンハルト様は荒い呼吸のまま、私を壊れそうなほど強く抱きしめました。

「エリス……。やはり、この部屋では甘すぎたか」

 彼の声は、怒りよりも深い、狂気的な愛に震えていました。

「もっと深く、もっと暗い場所へお前を隠さねばならない。……誰の目にも触れず、光さえ届かない俺の深淵に、お前を閉じ込めてしまいたい」
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