透明令嬢は暗殺公爵の箱庭で愛でられる

腐ったバナナ

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6話

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 皇子の侵入を許したその日のうちに、私は邸の地下深く、迷宮の最奥に作られた「真の箱庭」へと移されました。 そこは、窓一つない代わりに、無数の魔石が星のように瞬く、美しくも密閉された地下宮殿。地上の喧騒も、他人の視線も、光さえも届かない――世界でレオンハルト様だけが場所を知る、真の檻でした。

「ここでなら、もう誰もお前を見つけることはできない。……いいな、エリス」

 レオンハルト様が私の髪を指で梳きながら、うっとりと囁いたその時。 鉄格子の外から、不快な雑音が響きました。

「エリス! エリス、そこにいるんだろう! 出てこい、この親不孝者が!」

 現れたのは、かつて私を「空気」として扱ってきた父・ローウェル伯爵と、私を虐げた姉たちでした。 彼らの姿は無惨なものでした。私が消えたことで魔力源が暴走し、領地も屋敷も失った彼らは、薄汚れたボロを纏い、私を「便利な道具」として連れ戻しに来たのです。

「ああ、閣下! その女は我が家の所有物です! さあ、エリス、早く戻って魔力源を抑えろ! お前のような無能が生きていていいのは、我が家のためだけに――」

 ガシャン、と凄まじい音を立てて、レオンハルト様の魔力が爆発しました。 彼は無機質な瞳で伯爵を見下ろし、低く、冷徹な声を放ちます。

「……所有物だと? 面白いことを言う。こいつを一度でも人間として見たことがない貴様らが、どの口でそれを言うのか」

「な、何を……! それはただのガラクタで……」

「ガラクタなのは、貴様らの記憶の方だ」

 レオンハルト様が指を弾くと、伯爵たちの足元にどす黒い影が這い寄りました。

「エリスを『空気』だと言ったな。ならば、貴様らがこれから向かう牢獄では、お前たちの叫びも、存在も、誰にも認識されないようにしてやろう。死ぬまで、誰にも気づかれず、誰にも助けを呼べない暗闇で、自分たちが何を捨てたのかを後悔し続けろ」

「ひ、ひぃぃっ! 助けて、エリス! 助けておくれ!」

 姉たちが私に縋り付こうと手を伸ばしましたが、彼女たちの手は、私の体に触れることさえできません。レオンハルト様が張った強力な結界が、彼女たちの指先を容赦なく焼き切りました。

「俺の宝に、その汚い手で触れるな」

 影に飲み込まれ、引きずられていく家族たち。彼らが最後に見たのは、豪華な椅子に座らされ、レオンハルト様の腕の中で、人形のように無表情に見下ろす私の姿でした。

 静寂が戻った地下宮殿で、レオンハルト様は私の膝に顔を埋め、子供のように縋り付いてきました。

「……怖かったか? だが、これでもうお前を縛る過去はない。……お前を知る者は、この世界で俺だけだ」

 彼は私の足首の鎖を、愛おしげに、強く、締め直しました。 家族を失った悲しみはありません。ただ、私を見つけてくれたこの男がいれば、もう何もいらない。

「……はい、閣下。私は、貴方だけのものです」
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