訳あり未亡人と、年下の騎士様 ~私はもう、恋なんてしないはずでした~

腐ったバナナ

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6話

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 フィオナはクロードの献身的な看病と、情熱的な忠誠の誓いによって、体調と精神を回復させた。そして、心の壁が崩れたことで、彼女はユーリウスとラザラスへの反撃を決意する。

「クロード殿。私の調査が完了しました。負債が水増しされた決定的な証拠は、ラザラスの私邸に保管されているはずです」

 フィオナは、執務室でクロードに告げた。彼女の目は、以前の疲弊した色ではなく、知的な炎を宿していた。

「ユーリウス様は、ラザラスの力を借りて侯爵家を乗っ取るつもりです。証拠を確保しなければ、私たちは法的に追い詰められます」

 クロードは静かに頷いた。

「私が単身、潜入します」

「いいえ。私が同行します」

 フィオナはきっぱりと言い切った。

「ラザラスの屋敷には、複雑な帳簿と偽造契約書が山積みになっているはず。私が正確な証拠を見つけ出す必要があります。貴方の実力と、私の知恵が必要です」

 クロードは一瞬、反対しようとしたが、フィオナの揺るぎない決意と、彼女の瞳に宿る信頼の色を見て、言葉を飲み込んだ。

「承知いたしました。私が貴女の盾となります。ただし、貴女の命令より、貴女の命を優先します」

「ええ、その覚悟、受け取りました」

 その日の深夜。

 フィオナは黒い乗馬服に身を包み、クロードと共に侯爵城を抜け出した。ラザラスの私邸は王都の裏寂れた区域にあり、周囲には闇の気配が漂っていた。

「ここです。裏手の窓から侵入します」

 フィオナの指示通り、クロードは驚くべき静けさと迅速さで窓を破壊し、内部の警備員を無力化した。

 フィオナは、クロードのプロフェッショナルな動きに感動を覚えた。彼の存在は、恐怖を確かな安心感に変えてくれる。

 クロードが周囲を警戒する中、フィオナは帳簿が隠されているであろう地下室へと急いだ。

 地下室は、金銭の臭いと埃が混じった、陰鬱な空間だった。フィオナは冷静に、亡き夫の裏帳簿と照合し、目当ての証拠を探し始めた。

「これだわ……!この契約書の日付と金額が、裏帳簿と一致する。これは水増しの決定的な証拠よ!」

 フィオナが歓喜の声を上げた、その時だった。

「ほう。まさか、侯爵夫人が夜這いとはね」

 背後から、冷たい嘲笑が響いた。

 そこに立っていたのは、闇金融の元締め、ラザラスその人だった。彼は警備員が倒されていることに気づき、自ら地下室に降りてきたのだ。

「証拠を掴んだとて、無駄だ。貴女は今、不法侵入という大罪を犯している。ここで貴女を殺しても、誰も疑うまい」

 ラザラスが短剣を構え、フィオナに迫る。

 フィオナは、冷静にクロードに命じた。

「クロード殿!指示を出します。貴方の剣は……」

 しかし、クロードはフィオナの命令を待たなかった。

「フィオナ様!下がって!」

 クロードは瞬時にフィオナの前に立ち塞がり、全身でラザラスの攻撃を受け止めた。短剣はクロードの硬い鎧に火花を散らした。

 クロードの激しい怒りが、地下室の空気を震わせた。彼の瞳は、もはや忠誠心だけでなく、愛する者を守るための絶対的な決意に満ちていた。

「ラザラス。貴方は私の主に手を出した。私の剣は、貴女の命令でのみ振るわれる、と誓ったはずだ。だが、今、貴女の安全を脅かす貴様には、容赦はしない」

 フィオナは、自分を守るために規律を破り、命令を無視するクロードの姿を見て、胸の奥が熱くなった。

「クロード殿!証拠は確保しました!ここは退きましょう!」

 フィオナの冷静な判断に、クロードは一瞬で応じた。彼はラザラスを蹴り飛ばし、フィオナの手を掴んで地下室から駆け上がった。

 侯爵城に戻ったフィオナは、クロードに強く抱きしめられ、囁かれた。

「無事で、よかった。貴女の判断力は、私の剣よりも鋭い。しかし、二度と、単独で危険を冒さないでください」

 フィオナは、彼の熱い独占欲に包まれながら、初めての共闘で得た、最強の信頼を噛み締めていた。
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