役立たずと追放された令嬢ですが、極寒の森で【伝説の聖獣】になつかれました〜モフモフの獣人姿になった聖獣に、毎日甘く愛されています〜

腐ったバナナ

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5話

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 シルヴァンとの契約結婚を受け入れたアリアは、辺境領主館での新しい生活を始めた。公的な場では「アメシスト領主の夫人」としての威厳を求められ、私的な場ではモフモフな銀狼の究極の甘えを受け止める日々だ。

 アリアの仕事はすぐに始まった。

 辺境領は極寒の気候に加え、王都からの援助も薄いため、領民は常に慢性的な体調不良に悩まされていた。しかし、誰もが魔力による治癒に頼る王都と違い、辺境では薬草こそが命綱だった。

「リカルド副団長。この薬草の備蓄台帳を見せていただけますか?」

 アリアが副団長リカルドに台帳を求めると、彼はまだ警戒心と不信感を隠せない表情でそれを出した。

「夫人、失礼ながら、王都から追放されたばかりのお嬢様に、辺境の実務がこなせるとは思えませんが…」

「ええ、魔力は微弱です。ですが、私の知識は王都の治癒士たちとは異なります」

 アリアは台帳を一目見るなり、すぐに問題点を指摘した。

「この備蓄リストでは、乾燥させる際の温度と湿度の管理ができていません。そのため、解熱作用のある風花草の薬効が半分以下に落ちています。また、この備蓄庫では暖炉草の保管が必須です。これを正しく調合すれば、領民の冬の風邪の発生率は3割は減らせます」

 アリアの指摘は的確すぎた。リカルドは驚愕し、何度も台帳を見直したが、彼女の言う通りだった。彼の顔に、初めて無能な令嬢ではないという認識が生まれた。

 アリアの活躍はそれだけではなかった。

 彼女は、自身の微弱な能力である生命力操作を薬草の調合に利用し始めた。薬草に触れる際に、彼女の力が薬効を最大限に引き出すため、辺境領で作られる薬は、王都のそれよりも遥かに効能が高いと評判になり始めた。

「すごい…まさか、王都で無能と笑われた令嬢が、これほどの実務能力と知識を持っているとは」

 リカルドは、アリアに対して心からの敬意を払うようになり、彼女を夫人ではなく、賢妃様と呼び始めた。彼は、自分の疑念が恥ずかしくなり、王都の人間がいかに魔力という分かりやすい力に囚われていたかを悟った。

 その日の夜、政務報告のためにシルヴァンの執務室に招かれたアリアは、領地の状況と薬草の改善点を報告した。

「その通りだ、アリア。君の提案を実行しよう」

 シルヴァンは終始冷徹な表情で聞いていたが、アリアが報告を終え、部屋を出ようとした瞬間、彼は突然アリアを抱きしめた。

「待て。君の報酬だ」

 彼の金色の瞳は、公的な冷徹さを捨て、熱烈な歓喜に燃えていた。

「アリア。君は、この辺境に必要な唯一の人間だ。王都の愚か者どもが気づかなかった君の真の価値を、私は誰よりも理解している」

 シルヴァンはアリアを抱き上げると、そのまま自らの席に座り、彼女を膝の上に座らせた。

「君は、私の唯一の賢妃だ。そして、私の全てを癒やす薬だ」

 彼はそう言うと、アリアの首筋に顔を埋めた。アリアが恐る恐る背中に手を回すと、彼の冷たい体温が伝わってきた。

「君が賢ければ賢いほど、私は君を手放せない。そして、君が誰にも奪われないよう、より深く支配し、愛し続ける」

 シルヴァンの独占欲は、辺境領の再建という成功と共に、さらに深まった。彼の愛は、ただ甘いだけではない。それは、アリアの存在への完全な依存であり、裏切りのない最も強固な繋がりだった。

 夜が深まると、シルヴァンはアリアを自室へと運び、モフモフの銀狼の姿に戻った。

「私の賢妃。今日はよくやった。褒美に、存分に私を撫でるがいい」

 アリアは、巨大な銀狼に包み込まれながら、初めて自分の人生が無価値ではないと確信した。
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