役立たずと追放された令嬢ですが、極寒の森で【伝説の聖獣】になつかれました〜モフモフの獣人姿になった聖獣に、毎日甘く愛されています〜

腐ったバナナ

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11話

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 シルヴァンとの永遠の誓いを交わした後、アリアの生活は深い安寧に包まれた。辺境領はますます繁栄し、シルヴァンはアリアを王国の正式な皇后に推戴する準備を進めていた。それは、王都の貴族たちへの究極の牽制であり、アリアの地位を揺るぎないものにするための最高の庇護だった。

 しかし、アリアを追放したブレイズ伯爵家は、その没落をただ見ているだけではなかった。

 ある日、王都から、「辺境伯領の薬草栽培と販売権」に関する訴状が届けられた。伯爵家の継母イザベラが、「アリアは未だ伯爵家の戸籍にあり、その知性は家が与えた教育の賜物であるため、辺境領の利益は伯爵家にも帰属する」と、権利を主張し始めたのだ。

「馬鹿げた主張だ」

 シルヴァンは怒りでその訴状を破り捨てようとしたが、アリアが制した。

「お待ちください、シルヴァン様。この訴状には公的な効力があります。無視すれば、彼らは王宮の貴族たちを巻き込み、私たちをさらに煩わせるでしょう」

 アリアの表情は冷静だった。彼女は、これが伯爵家の最後の抵抗であり、同時に完全に彼らを断ち切る好機であると理解していた。

 アリアは、伯爵家への返答を自ら作成すると申し出た。

「私は伯爵家と完全に縁を切ります。彼らが薬草の権利を主張するならば、それを認めましょう」

 シルヴァンは驚愕した。

「アリア!何を言っている!彼らに利益を分け与えるなど...」

「いいえ、シルヴァン様。全ては私の計画通りです」

 アリアは微笑んだ。その笑みは、王都で愛に怯えていた頃の純粋なものではなく、全てを見通す賢妃の冷徹な笑みだった。

 アリアが王都の伯爵家へ送った返答は、以下の三点だった。

 ◇

 辺境領で生産される薬草の利益の全てを、ブレイズ伯爵家に譲渡する。

 その代わり、アリア・ド・ブレイズは、伯爵家の戸籍から完全に離脱し、伯爵家とは一切の金銭的・社会的な繋がりを持たないものとする。

 譲渡後、伯爵家は辺境領の薬草の生産・管理・販売の全てを担うこと。

 ◇

 この条件は、伯爵家、特に継母イザベラを歓喜させた。彼らは、何の苦労もなく辺境領の巨大な利益を手に入れられると信じたのだ。

「賢妃などと持て囃されたが、結局は金に目が眩んだ愚かな娘だ」と、イザベラは嘲笑した。

 しかし、それはアリアが仕掛けた恐ろしい罠だった。

 アリアは、薬草の生産・管理に関する極秘のノウハウを、伯爵家には一切渡さなかった。

 ノウハウとは、辺境の特殊な気候に合わせた生命力操作による魔力の付与、そして辺境領の魔獣の活動期を避けた収穫時期の選定など、アリアと聖獣シルヴァンだけが持つ情報だった。

 利益を手にし、大喜びで辺境領の薬草事業を引き継いだ伯爵家は、すぐに窮地に立たされた。

 王都の温暖な気候で育った伯爵令嬢たちには、辺境の厳しい気候で薬草を管理する能力などなかった。薬草は次々と枯れ、腐り、ついには市場価値のない粗悪品ばかりとなった。

 伯爵家は、利益を得るどころか、莫大な初期投資と在庫の損害により、急速に財政が破綻へと向かった。

 アリアは、王都でかつて自分を追放した継母と姉が、自ら選んだ事業によって破滅していく様を、辺境から静かに見守った。

「シルヴァン様。これで、ブレイズ伯爵家は、私から利益を奪うどころか、自滅の道を選びました。彼らとは、戸籍上も金銭的にも完全に縁が切れました」

 アリアはシルヴァンの腕の中でそう告げた。彼女の復讐は、もはや感情的なものではなく、冷徹な知性による完全なる断罪へと昇華していた。

「アリア。君は本当に、最高の賢妃だ。誰も君には敵わない」

 シルヴァンは、アリアの冷徹な知性に深く感嘆し、彼女の頭を優しく撫でつけた。彼の愛は、今や尊敬と、狂おしいほどの独占欲に裏打ちされた、揺るぎないものとなっていた。
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