役立たずと追放された令嬢ですが、極寒の森で【伝説の聖獣】になつかれました〜モフモフの獣人姿になった聖獣に、毎日甘く愛されています〜

腐ったバナナ

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12話

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 アリアの冷徹な知性による薬草事業譲渡という策略は、完全に成功した。ブレイズ伯爵家は自らの欲に溺れて財政的に破綻し、アリアの戸籍からも完全に縁が切れた。

 アリアは、過去の裏切りと屈辱を全て清算し、もはや王都との繋がりを一切持たない自由な存在となった。

 この最終的な勝利を受け、シルヴァンはアリアを王国の正式な皇后に推戴するための準備を一気に進めた。

 辺境領主の地位でありながら、シルヴァンは聖獣の加護と実力をもって王国の実質的な最高権力者となっていた。彼の決定に異を唱える者は、もはや誰もいない。

 そして、ついに戴冠式の日が訪れた。

 厳かな儀式の中、アリアはシルヴァンと並んで祭壇に立った。シルヴァンは、冷徹な領主の威厳と、アリアへの深い愛情を湛えた瞳で、アリアを見つめた。

「アリア・ド・アメシスト。君は、無能な追放者としてこの国から捨てられた。だが、君の知性と勇気こそが、この辺境を、そしてこの国全体を支える真の宝である」

 シルヴァンはそう高らかに宣言し、アリアの頭上に、辺境の輝きを象徴する銀とアメシストの王冠を静かに載せた。

「君の地位は、この世の誰にも侵されない。君は私の永遠の伴侶であり、この国の唯一の皇后だ」

 それは、王都への最終的な勝利宣言であり、シルヴァンからの究極の愛の誓いだった。アリアは、かつて見捨てられた王都の貴族たちの前で、最も強大な男の隣に立ち、最高の栄誉を手に入れたのだ。

 戴冠式から数ヶ月後。

 アリアは時折、朝方に微かな吐き気を感じるようになっていた。彼女は自身の薬学知識に基づき、その原因を静かに探っていた。

 ある日の午後、リカルド副団長が王都の情勢報告のため、シルヴァンの執務室を訪れていた。シルヴァンは、報告中もアリアを膝の上に乗せ、その腰に手を回すという、公私混同の極みのような振る舞いを続けていた。

「シルヴァン様。王都では、ブレイズ伯爵家の没落が確定し、彼らは全てを失いました。レイモンド騎士団長も、辺境への接触を試みた件で全ての地位を剥奪されています」

 リカルドの報告に、アリアは静かに頷いた。彼女の復讐は、裏切り者を生かしたまま、彼らの全てを奪うという形で完遂されたのだ。

 報告が終わり、リカルドが退室しようとした瞬間、アリアは突然、微かな吐き気を催し、口元を覆った。

 シルヴァンはすぐに異変に気づき、アリアの顔を覗き込んだ。

「アリア?どうした。すぐに休め」

 アリアは微笑み、シルヴァンの手を自分の腹に優しく重ねた。

「シルヴァン様。どうやら、私のお腹の中に、新しい命が宿ったようです」

 その瞬間、冷酷な領主の顔をしていたシルヴァンの表情が、完全に崩壊した。彼の金色の瞳は大きく見開かれ、全身が震え始めた。

「命...君と、俺の...」

 彼は、聖獣としての強大な力とは裏腹に、人間的な感情の極限に達していた。その感動と、アリアと子を失うことへの恐怖が、同時に彼を襲った。

「アリア。君は、私に全てを与えてくれた。君と、この子の存在が、俺の永遠の所有物であり、唯一の弱点だ」

 シルヴァンはアリアを強く抱きしめ、人間の姿のまま、初めて嗚咽した。冷酷な領主が流した涙は、アリアへの絶対的な愛と、家族への狂おしいほどの執着を証明していた。

 その夜、シルヴァンはアリアを自室へと運び、銀狼の姿に戻った。いつも以上に大きく、優しく丸くなり、アリアの腹を温めるように体を寄せた。

「もう二度と、君を危険な目に遭わせない。この子は、俺たちが永遠に共にいるという、最高の証だ」

 アリアは、モフモフの温もりに包まれながら、過去の全てから解放され、最も強固で、最も裏切りのない愛を手に入れたことを確信した。
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