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ep.000_プロローグ
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俺は山田航、36歳。プライム市場に名を連ねる企業で課長代理の肩書を持ち、年収は600万円を少し超えたところ。
上司や同僚との関係も良好で、仕事は順風満帆と言っていい。
私生活では、愛する妻と今年5歳になる目に入れても痛くないほど可愛い娘が一人。
共働きで家事も育児も分担し、週末は家族で公園に出かける。
我ながら、理想的な家庭を築けていると自負している。
俺は、幸せだ。
だが、心のどこかで燻る、この物足りなさはなんだろう。
満たされているはずなのに、何かが決定的に欠けている。
まるで、パズルの最後のワンピースが見つからないような、そんなもどかしさを抱えながら、平凡な毎日を繰り返していた。
そんな俺の唯一の趣味であり、夜の楽しみは「もし、あの時に戻れたら」という妄想に耽ることだ。
大学時代、サークルのあの娘に、もっと積極的にアプローチしていたら?
バイト先の可愛い後輩の誘いに、素直に乗っていたら…?
そう、何を隠そう、スポーツ一筋で駆け抜けた学生時代の俺は、女性関係においてはおそろしく不器用で、淡い経験しかできなかったのだ。
それをコンプレックスとまでは言わないが、人生のやり残しリストの最上位に鎮座していることは間違いない。
その日も、妻と娘が寝静まった深夜、俺はベッドの中でいつもの妄想の世界へダイブした。
サークルの飲み会、少し酔って火照った顔で隣に座るあの子。あと一歩、勇気さえあれば…。
そう意識が深く沈み込んだ瞬間―――全身を奇妙な浮遊感が襲った。
寝ていたはずなのに、足の裏には確かに地面の感触がある。
閉じた瞼の裏を、真昼のような強烈な光が焼き付けた。
そして、耳を打つのは、若者たちの楽しげな喧騒と、遠くで響くチャイムの音。
「なんだ…!?」
ゆっくりと目を開ける。
目に飛び込んできたのは、見慣れた天井ではなく、抜けるような青空と、レンガ造りの荘厳な時計台。
広大なキャンパスに広がる緑豊かな並木道。
15年前に俺が通っていた、明青大学の風景そのものだった。
何が起きた?
混乱する頭で辺りを見渡すと、校舎の窓ガラスに自分の姿が映っていた。
そこにいたのは、疲れの滲んだ36歳のサラリーマンじゃない。
日焼けした肌に、無駄な肉のない引き締まった身体。紛れもなく、20歳の頃の俺だった。
まさか、タイムリープしたのか…?
震える手でズボンのポケットを探る。
取り出したのは、使い慣れたスマートフォンではなく、プラスチックの冷たい感触が懐かしい、二つ折りのガラケーだった。
画面を開くと、表示された日付は『2010年5月10日』。
「…ははっ」
乾いた笑いが漏れた。
タイムリープ?そんな非科学的なことがあるものか。
あぁ、俺は疲れているんだ。
そして、いつものように妄想に耽っていた。
そうだ、これは夢だ。
都合のいい過去を追体験させてくれる、『明晰夢』というやつに違いない。
…ということは?
夢の中なら、何をしても許されるんじゃないか?
もう一度言おう。
俺の趣味は、「もし、あの時に戻れたら」と妄想することだ。
絶対的な安心感と、胸の奥から湧き上がる黒い欲望。
未来の記憶という最強の攻略本を持つ俺は、ニヤリと口角を上げた。
愛する家族には悪いが、この「夢」が覚めるまでの間、やり残した青春を、欲望のままに謳歌させてもらうとしよう。
俺は、期待に胸と下半身を膨らませながら、思い出のキャンパスをゆっくりと歩き始めた。
上司や同僚との関係も良好で、仕事は順風満帆と言っていい。
私生活では、愛する妻と今年5歳になる目に入れても痛くないほど可愛い娘が一人。
共働きで家事も育児も分担し、週末は家族で公園に出かける。
我ながら、理想的な家庭を築けていると自負している。
俺は、幸せだ。
だが、心のどこかで燻る、この物足りなさはなんだろう。
満たされているはずなのに、何かが決定的に欠けている。
まるで、パズルの最後のワンピースが見つからないような、そんなもどかしさを抱えながら、平凡な毎日を繰り返していた。
そんな俺の唯一の趣味であり、夜の楽しみは「もし、あの時に戻れたら」という妄想に耽ることだ。
大学時代、サークルのあの娘に、もっと積極的にアプローチしていたら?
バイト先の可愛い後輩の誘いに、素直に乗っていたら…?
そう、何を隠そう、スポーツ一筋で駆け抜けた学生時代の俺は、女性関係においてはおそろしく不器用で、淡い経験しかできなかったのだ。
それをコンプレックスとまでは言わないが、人生のやり残しリストの最上位に鎮座していることは間違いない。
その日も、妻と娘が寝静まった深夜、俺はベッドの中でいつもの妄想の世界へダイブした。
サークルの飲み会、少し酔って火照った顔で隣に座るあの子。あと一歩、勇気さえあれば…。
そう意識が深く沈み込んだ瞬間―――全身を奇妙な浮遊感が襲った。
寝ていたはずなのに、足の裏には確かに地面の感触がある。
閉じた瞼の裏を、真昼のような強烈な光が焼き付けた。
そして、耳を打つのは、若者たちの楽しげな喧騒と、遠くで響くチャイムの音。
「なんだ…!?」
ゆっくりと目を開ける。
目に飛び込んできたのは、見慣れた天井ではなく、抜けるような青空と、レンガ造りの荘厳な時計台。
広大なキャンパスに広がる緑豊かな並木道。
15年前に俺が通っていた、明青大学の風景そのものだった。
何が起きた?
混乱する頭で辺りを見渡すと、校舎の窓ガラスに自分の姿が映っていた。
そこにいたのは、疲れの滲んだ36歳のサラリーマンじゃない。
日焼けした肌に、無駄な肉のない引き締まった身体。紛れもなく、20歳の頃の俺だった。
まさか、タイムリープしたのか…?
震える手でズボンのポケットを探る。
取り出したのは、使い慣れたスマートフォンではなく、プラスチックの冷たい感触が懐かしい、二つ折りのガラケーだった。
画面を開くと、表示された日付は『2010年5月10日』。
「…ははっ」
乾いた笑いが漏れた。
タイムリープ?そんな非科学的なことがあるものか。
あぁ、俺は疲れているんだ。
そして、いつものように妄想に耽っていた。
そうだ、これは夢だ。
都合のいい過去を追体験させてくれる、『明晰夢』というやつに違いない。
…ということは?
夢の中なら、何をしても許されるんじゃないか?
もう一度言おう。
俺の趣味は、「もし、あの時に戻れたら」と妄想することだ。
絶対的な安心感と、胸の奥から湧き上がる黒い欲望。
未来の記憶という最強の攻略本を持つ俺は、ニヤリと口角を上げた。
愛する家族には悪いが、この「夢」が覚めるまでの間、やり残した青春を、欲望のままに謳歌させてもらうとしよう。
俺は、期待に胸と下半身を膨らませながら、思い出のキャンパスをゆっくりと歩き始めた。
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