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ep.001_中林由美~case01~
しおりを挟む西暦2010年。
肌を撫でる初夏の風が、大学の講義室に心地よく吹き込んでくる。
俺、山田航(やまだわたる)は、退屈な現代史の講義を聞き流しながら、窓の外に広がる明青大学の緑豊かなキャンパスをぼんやりと眺めていた。
(ああ、平和だ…そして、俺だけの狩場だ)
周囲の学生たちは、教授の言葉を熱心にノートに書き留めたり、あるいはこっそりガラケーをいじったりしている。
誰もがこの瞬間を「現実」として生きているが、俺だけは違った。
この世界は、俺にとって都合のいいだけの「明晰夢」。
精神は2025年を生きる36歳の既婚サラリーマン。
寝ていたはずなのに、気づいたらなぜか15年前、大学2年生の自分に、記憶だけがタイムリープしていた。
つまり、この2010年の世界は、いつか覚める壮大な夢に過ぎない。
そう認識してしまえば、怖いものなど何もなかった。
現実では決してできないこと――そうだ、「特定の恋人を作らず、複数の魅力的な女性と自由に関係を持つこと」こそ、この夢の世界で俺が自分に課した、最高のミッションだった。
「航ー!お疲れー!」
講義の終わりを告げるチャイムと同時に、弾けるような声が俺の名前を呼んだ。
振り返ると、そこに立っていたのはサークル仲間の中林美由(なかばやしみゆ)。
明るいブラウンのセミロングを揺らし、人懐っこい笑顔を向けてくる彼女は、サークル「ファンファン」の太陽のような存在だ。
体にフィットしたVネックのトップスは、彼女の武器である豊かな胸元を強調していて、俺の視線は正直にそこへ吸い寄せられる。
(よし、最初のターゲットは、やはり彼女だな)
一番仲が良く、俺への好意も分かりやすい。
この恋愛ゲームのチュートリアルとしては、最適の相手だった。
「よお、美由。お疲れ」
「ねえ、この後ってヒマ?ちょっと付き合ってほしいことがあるんだけど…」
上目遣いで小首を傾げる仕草。
計算か天然か、どちらにせよ俺の計画を後押しする絶好の誘いだ。
「ん?俺でよければ全然いいけど」
「ほんと!?やった!」
美由は嬉しそうに飛び跳ねた。
そのたびに、世界は物理法則に従って優しく胸が揺れる。
ありがたいことだ。
「で、どうしたんだ?」
「今度の日曜、サークルのみんなでフットサルやるじゃない?その時に着るウェアが欲しくて。
でも、私そういうの疎いから、航に選んでほしくて…ほら、男の子目線でさ」
「男の子目線」、か。最高のキラーワードだ。
俺の人の良さを装ったスケベ心は、即座に「YES」と答えた。
「なるほどな。任せとけ。俺が美由に世界一似合うウェアを選んでやるよ」
「大げさだなあ。でも、よろしくね!」
俺たちは並んでキャンパスを歩き出した。
目指すは、大学の最寄り駅から一駅のターミナル駅に直結する大型ショッピングモール「Grand Tree Tama Plaza」。
奇しくも、そこは俺が精肉店「肉の大善」でアルバイトをしている場所でもあった。
電車に揺られながら、俺は36年分の経験値をフル活用し、彼女が喜ぶであろう会話を展開する。
mixiのコミュニティの話、流行り始めたAKB48の話。
そして、時折未来の知識をスパイスのように加える。
「へえ、航って意外と詳しいんだね。てっきりスポーツ一筋かと思ってた」
「まあな。アニメとかゲームも結構好きだし。このアニメ、10年後には神作画でリメイクされるんだぜ」
「え、そうなの!?」
些細な会話で、彼女の心を確実に掌握していく。
この感覚は、やり込み要素の多いRPGに似ていた。
ショッピングモールに到着し、俺は迷わず、今はまだ知名度が低いが未来で大人気となるスポーツブランドの店へと彼女を導いた。
「美由は脚長いし、ショートパンツ似合うよな。
トップスは、体のラインが出るやつのほうがいいって。絶対そっちのほうが似合う」
俺は機能性を語るフリをしながら、彼女のスタイルを最大限に活かし、かつ俺の欲望を満たすであろうウェアを的確に選んでいく。
「ええー、これ、ちょっと恥ずかしいよ…」
「大丈夫だって。俺を信じろ。男はみんな、そっちのほうが好きだから」
「もう、航のスケベー!」
美由は顔を赤らめながらも、まんざらでもない表情を浮かべている。完全に俺のペースだった。
「わかった。じゃあ、航が選んでくれたやつ、着てみるね」
少し拗ねたような、それでいて期待に満ちた声でそう言うと、美由は俺が選んだウェアを手に、試着室へと消えていった。
狭いカーテンの向こう側で、衣擦れの音が微かに聞こえてくる。
俺は壁に寄りかかり、その音に耳を澄ませながら、ほくそ笑んでいた。
(計画通り、最終イベントの発生だ)
数分後、カーテンの隙間から美由が顔を覗かせた。
「航、ごめん、ちょっといい?」
「ん?どうした?」
「あのね、このトップス、背中のジッパーが…自分じゃ届かなくて…」
(…来た。完璧なフラグだ)
頬を染め、恥ずかしそうに言う美由。
その姿は、俺というプレイヤーを次のステージへ誘う、最高のイベント発生トリガーだった。
「しょうがねえな」
俺は周囲を軽く見渡し、他の客という名のNPCが近くにいないことを確認すると、音を立てずにすっと試着室のカーテンをくぐり抜けた。
一歩足を踏み入れると、むわりとした熱気と、美由の甘いシャンプーの香りが俺を包み込んだ。
まさにボーナスステージ。
狭い空間で、目の前には完璧なボディラインを惜しげもなく晒す美由の後ろ姿。
体にぴったりとフィットした生地が、彼女の驚異的なボディラインを余すところなく描き出している。
キュッと引き締まったウエストから、丸みを帯びたヒップへの曲線は、まさに芸術品だった。
そして、彼女の白い背中には、半分だけ開いたジッパーが艶めかしく覗いている。
(ご褒美イベント、ありがとうございます)
俺は心の中でガッツポーズをした。
「…上げるぞ」
俺が囁くと、美由は、
「うん…」
と小さな声で答え、鏡に映る俺から目を逸らした。
俺はゆっくりとジッパーの金具に指をかけた。
その指先が、わざとらしく彼女の素肌に触れる。
冷たい金属と、俺の指の熱が、彼女の肌の上で混ざり合う。
「ひゃっ…!」
美由の体がビクッと震え、その反応が俺の理性に最後の追い打ちをかけた。
いや、理性なんてものは、この夢が始まった瞬間に捨てている。
これは、ゲームを最高に楽しむための計算された行動に過ぎない。
ジッパーを上げるふりをしながら、俺は空いている方の手で、彼女の腰をぐっと引き寄せた。
柔らかながらも引き締まった感触が、手のひらに吸い付くようだ。
「え…わた、る…?」
驚いて振り返ろうとする美由の体を、俺は正面から抱きしめて封じ込める。
B92の豊かな膨らみが、俺の胸板に押し付けられ、その存在を明確に主張してきた。
「しー…。動くな。気持ちいいだろ?」
耳元で囁くと、彼女の抵抗が止まった。
鏡には、困惑した表情の美由と、捕食者のような笑みを浮かべる俺の姿が映っている。
狭い試着室の中、俺たちの心臓の鼓動だけがやけに大きく響いていた。
「航…だめだよ、ここ、お店…」
「分かってる。だからいいんだろ?」
俺は彼女の耳たぶを甘く噛んだ。
「っ…んぅ…!」
甘い声が漏れ、美由は慌てて自分の口を手で押さえる。
その仕草が、さらに俺の征服欲を煽った。
「夢なんだよ、これは。だから、誰も見てない。
現実じゃできないこと、してみたくないか?」
この言葉が、彼女の罪悪感を麻痺させる魔法の呪文だ。
36年分の経験は、女性を落とすための最適な言葉を知っている。
俺は彼女の体をくるりと反転させ、壁際に追い詰めた。
背中に冷たい壁の感触を感じ、美由の瞳が不安に揺れる。
だが、その瞳の奥には、拒絶ではない、むしろこのスリルを楽しんでいるかのような、妖しい光が宿っていた。
そうだ、それでいい。
俺との共犯関係に、深く堕ちてこい。
「好きだ、美由」
これは本心じゃない。
ゲームをクリアするための、最高のキラーワードだ。
俺は彼女の顎に手を添え、抵抗する間も与えずに、その潤んだ唇を貪った。
最初は固く結ばれていた唇も、俺の執拗な愛撫にやてこじ開けられ、熱い舌が絡み合う。
遠くで聞こえる店内のBGMや客の笑い声が、この背徳的な行為を最高に甘美なスパイスへと変えていく。
そして、ここからが本番だ。
理性が完全に焼き切れた俺の行動は、もう誰にも止められない。
キスをしながら、俺の手は彼女の体にフィットしたウェアの上を自由に彷徨い始めた。
滑らかな背中のラインをなぞり、引き締まったくびれを堪能し、そしてゆっくりと、その豊かな胸の膨らみへと到達する。
「…っ、だめ…そこは…」
掠れた声で抵抗するが、その声には力がなかった。
俺は構わず、薄いウェアの生地越しに、その柔らかさを確かめる。
指先に伝わる、信じられないほどの弾力と熱。
まるで熟れた果実を確かめるように、揉みしだき、形を変えていく。
「ん…あ…っ…ぁん…!」
美由の口から、もはや意味をなさない甘い吐息が漏れ続ける。
彼女の細い指が、俺の背中のシャツをくしゃくしゃになるほど強く握りしめた。
それが、彼女の唯一の抵抗であり、そして同意の証だった。
「本当にダメか?」
俺が一度唇を離し、じっと目を見つめて問う。
美由は数秒間、潤んだ瞳で俺を見つめ返すと、やがて諦めたように、小さく首を横に振った。
それが、合図だった。
俺は再び彼女の唇を塞ぎ、今度は何の躊躇もなく、その秘密の花園へと指を進めていく。
ショートパンツの裾から滑り込ませた指先が、彼女の熱く潤んだ中心に触れた瞬間、美由の体が弓なりにしなった。
「…っ!…んんぅぅっ!!」
声にならない絶叫が、俺の唇に吸い込まれて消える。
狭い試着室の中は、二人の荒い息遣いと、衣擦れの音、そして湿った水音だけが支配していた。
鏡に映る自分たちの姿が、さらに興奮を加速させる。
羞恥に顔を歪めながらも、快感に身をよじる美由の姿は、俺の征服欲を完全に満たしてくれた。
時間の感覚がなくなるほど、俺たちは狭い試着室の中で互いを求め合った。
一瞬のようにも、永遠のようにも感じられた、濃密な時間。
「美由、入れるぞ…」
「…うん」
俺の肉棒を美由の下半身に当てがった。
その時、遠くから聞こえてきた「ただいま満席でーす」という店員の声に、俺たちははっと我に返る。
名残惜しげに唇を離すと、鏡に映っていたのは、髪は乱れ、頬を上気させ、瞳はとろりと潤み、口元が微かに開いたままの美由と、完全な勝利を確信した俺の姿だった。
「…ジッパー、上げて」
か細い声で、美由が言う。
俺は今度こそ、その背中のジッパーを一番上まで静かに上げた。
秘密に蓋をする儀式。
だが、俺たちの間には、もう元には戻れない熱が刻み込まれていた。
何食わぬ顔で試着室を出て、俺たちはそのウェアを購入した。
店の外に出ると、西日が眩しく目に染みた。
「このあと、どうする?」
「え、えっと…バイトだから、行かなくちゃ…」
「そっか、残念だな。また連絡するよ」
「うん、待ってるね。それじゃあね」
顔を赤くしたまま、小走りにかけていった。
彼女がこの関係をどう思っているかは、どうでもいい。
重要なのは、俺が「中林美由」というターゲットを、完全に手に入れたという事実だけだ。
(さて、一人目、攻略完了)
俺は心の中で、そう呟いた。
この甘い夢の世界で、俺のハーレム計画は、今、始まったばかりだった。
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