純愛短編集

わ太る

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星降る夜に、君と秘密の天文台

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私の名前は星野葵(ほしの あおい)。29歳。
都会の片隅にあるプラネタリウムで、解説員として働いている。

小柄な体つきと、少し大きめの丸眼鏡が私のトレードマークだ。
この眼鏡の奥から、私は毎日、人工の星空を見上げ、その物語を語っている。

子どもの頃から、夜空の星々に心を奪われてきた。
プラネタリウムのドームに広がる人工の星空も、私にとってはかけがえのない大切な場所だ。

解説台に立つ時だけは、内気で人見知りの私も、堂々とマイクを握ることができる。
星の物語を語るその瞬間だけは、私の魂が解放されるような気がした。

しかし、一歩解説台を降りれば、私は元の「星野葵」に戻る。
大勢での食事会は苦手だし、初対面の人との会話は、まるで星の瞬きのように儚く、すぐに途切れてしまう。

そんな私が唯一心を開けるのは、満天の星空の下、静かに宇宙の神秘に思いを馳せる時間だけだった。

ある日のこと、休憩室で、私の先輩である山口美依(やまぐち みい)さんが、私に興奮気味に話しかけてきた。
美依先輩は、私とは正反対で、誰とでもすぐに打ち解けることができる、明るくて頼れる存在だ。

柔らかなウェーブのかかった髪が優しげにゆれ、いつもふんわりとした雰囲気の人。
そして、私をいつも気遣ってくれる、優しい先輩。

「ねえ、葵ちゃん知ってる?
都会からぐーんと離れた山奥に、夜間だけひっそり開かれる、すごい天文台があるらしいよ。
なんでも、普通じゃなかなか見られないような、とんでもない星が見えるんだってさ!」

美依先輩は、雑誌の切り抜きを私に見せてくれた。
古びた洋館の写真と、「夜間限定の秘密の天文台」という見出しが踊っている。

その言葉は、私の耳に、まるで遥か彼方の星の光のように届いた。
最新機器のプラネタリウムでも再現できない、本物の夜空。
その魅力に、私の心はざわめいた。

眼鏡の奥の私の瞳は、きっとキラキラと輝いていたはずだ。
人付き合いは苦手でも、星への情熱だけは誰にも負けない。
その情熱が、私の内に秘められた冒険心をくすぐった。

「葵ちゃん、こういうの好きでしょ?目がキラキラしてるよ!」

美依先輩が、私の顔を覗き込むように笑う。

「仕事の資料収集にもなるし、きっと面白い発見があるよ!
ね、一緒に行ってみない?山奥は、私一人だとちょっと心細いし」

美依先輩は、私が誘いに乗りやすいようにと、優しい言葉を添えてくれた。
私一人で行くのは勇気がいるけれど、先輩と一緒なら行ける。

「はい…!もし、ご迷惑でなければ…」

私の小さな返事に、美依先輩はにっこり笑って、

「私のほうから誘ってるんだから、迷惑なわけないじゃない!よし、決まりね!」

と私の背中をポンと叩いた。
その温かい手のひらが、私の心に勇気を灯してくれた。
それは、内気な私にとって、人生の中でも大きな決断の一つだったかもしれない。
美依先輩がいなければ、私はきっと、この一歩を踏み出せなかっただろう。

週末、私たちは地図を頼りに、電車とバスを乗り継いだ。
都会の喧騒は、やがて遠いざわめきとなり、窓の外の景色は、高いビル群から緑豊かな山々へと変わっていく。

美依先輩は、道中もずっと、冗談を言ったり、地元の情報を教えてくれたりして、私の緊張を和らげてくれた。
そのふんわりとした笑顔を見ていると、自然と心が落ち着く。

バスを降り、さらにタクシーに乗り換えて、舗装されていない砂利道を登っていくと、スマホの電波は途切れ、街の灯りは見る見るうちに遠ざかっていった。
あたりは漆黒の闇に包まれ、空には、今まで見たことのないほどの数の星が瞬き始めていた。
こんなにも星が見えるのは初めてだ。

タクシーの窓から夜空を見上げ、その美しさに息を呑む。
不安と期待が胸の内で渦巻き、心臓がトクトクと高鳴る。
本当にこの先に、天文台なんてあるのだろうか?

しばらくして、タクシーは小さな砂利道を登り切り、ぽつりと明かりを灯した古びた洋館の前に停車した。
蔦が絡まる石造りの壁。
どこかアンティークな佇まい。
まるで、この場所だけ時間が止まっているかのようだった。
ただ、星明かりと、玄関から漏れる微かな光だけが、この場所に存在していることを告げている。

玄関の前に立つと、かすかにジャズの調べが聞こえてきた。
落ち着いた、少し古いジャズだ。
耳に心地よく、私の緊張を少しだけ和らげてくれる。

美依先輩が緊張をしている私の顔を見て、

「大丈夫だよ、葵ちゃん」

と優しく微笑んでくれた。
美依先輩はそっと木製の扉をノックした。
コツ、コツ、と小さな音が、静寂な夜の山に響き渡る。
蝶番が軋む音とともに、ゆっくりと扉が開いた。
そこに立っていたのは、私たちと同世代だろうか、長身の男性だった。

私が思った彼の第一印象は、「夜そのもの」だった。

深い夜空のような瞳。
少し長めの髪が、夜風に微かに揺れる。
そして何よりも、どこか遠い宇宙を見つめているかのような静けさを全身に纏っていた。

彼は何も言わず、ただ私たちを見つめる。
その視線の奥に、私は一瞬、計り知れないほどの孤独を見た気がした。
それは、私が普段、人との間に感じている孤独とは、少し異なる、もっと深く、切ない種類の孤独だった。

「こんばんは。都内のプラネタリウムで解説員をしております、山口と申します。
こちらは星野です。こちらの天文台について、ぜひお話を伺いたくて…」

美依先輩が、淀みなく流れるような言葉で、挨拶をしてくれた。
私が話そうとすると、きっとひどく上ずるだろうから、本当に助かった。

彼はゆっくりと瞬目し、まるで長い眠りから覚めたかのように、ようやく口を開いた。

「観月蓮(みづき れん)です。ようこそ、星降る夜の天文台へ」

彼の声は、低く、穏やかで、しかしどこか響くような不思議な響きがあった。
その声は、深淵な夜空の囁きのように、私の心を捕らえた。


私たちはその声に、誘い込まれるように彼の案内に従って中へと入っていった。

そこから私の、そして観月さんとの運命が、静かに、しかし確かに回り始めたのだった。

観月さんの天文台は、私の想像をはるかに超えていた。
古い洋館の屋上には、巨大な白いドームが備え付けられており、中には鈍い光を放つ最新鋭の反射望遠鏡が鎮座していた。

その存在感に圧倒されつつも、私の視線はすぐに、望遠鏡の隣に立つ観月さんに向けられた。
彼は、夜空に溶け込むかのような黒いセーターを身につけていた。
その長い指が、望遠鏡の微調整を行う様は、まるで熟練の職人のようだった。

その日の夜、観月さんは私たちを望遠鏡へと案内してくれた。

標的は、オリオン大星雲。
観月さんが準備してくれた望遠鏡をのぞき込むと、そこには肉眼では決して見えない、ガスや塵が渦巻く壮大な姿が広がっていた。

私の眼鏡の奥の瞳は、その光景に釘付けになった。
それは、私がプラネタリウムで見てきたどの映像よりも、鮮やかで、息をのむほど美しかった。

「その星雲は、新しい星が生まれる場所です。
ガスと塵が重力によって集まり、やがて核融合反応を起こし、輝き始める…まるで、生命の誕生そのものですね」

観月さんは、静かに、しかし情熱を込めて解説してくれた。
彼の言葉は、専門的でありながら詩的で、星々への深い愛情と、どこか切ない響きを帯びていた。
彼の言葉を聞いていると、私はまるで、宇宙の壮大な営みの中に、私自身も存在しているかのような一体感を感じた。

「すごい…言葉にできないくらい、綺麗です」

私は震える声で呟いた。
美依先輩も、

「これはすごい!プラネタリウムじゃ、ここまで見られないものね!」

と感嘆の声を上げていた。

美依先輩は、私よりもずっと社交的だ。
観月さんが望遠鏡の調整をしている間も、

「この天文台は、いつからあるんですか?」
「管理は、お一人でやってらっしゃるんですか?」

などと、穏やかな口調で次々と質問を投げかけていた。
観月さんは、私たち二人に等しく応じているように見えたが、美依先輩の明るい問いかけには、わずかに口元を緩ませて応じているように見えた。
彼の寡黙な表情の中に、微かな笑みが浮かぶ瞬間、私はその横顔を見て、胸の奥に、少しだけ、形容しがたい感情が芽生えるのを感じた。

それは、美依先輩が羨ましいような、観月さんがもっと私にも話してくれたら、というような、なんとも言えない「もやもや」とした感情だった。
しかし、その時はまだ、それが何なのか、私自身にも分からなかった。

「観月さん、ハーブティーでもいかがですか?私、好きで結構こだわりがあるんですよ」

美依先輩が、持参していたハーブティーが入っているであろう水筒を取り出して提案した。

観月さんは少し驚いたような表情を見せたが、すぐに、

「ありがとうございます」


と微笑んだ。

美依先輩は、慣れた手つきでハーブティーを淹れ、私と観月さんに手渡す。
美依先輩と観月さんは、湯気の立つカップを手に、星の話題で盛り上がっていた。

「へえ、この星雲は、肉眼では見えないんですね。でも、こうやって望遠鏡で見ると、まるで絵画みたいで綺麗ですね」

「ええ。宇宙は、私たちの想像を超える美しさで満ちています。
特に、肉眼では見えない色や形が、望遠鏡を通して初めて現れる瞬間に、私自身もよく感動させられます」

「そうなんですね!私も昔、小さい頃に図鑑で見た星の絵が大好きで、いつか本物を見てみたいって思ってたんです。
まさかこんな素敵な場所で、観月さんの詳しい解説を聞きながら見ることができるなんて、夢が叶ったみたいです!」

美依先輩の明るく屈託のない言葉に、観月さんの表情がさらに和らぐのが分かった。

二人の会話は、途切れることなく続いていく。
私はその様子を、少し離れた場所から眺めていた。
彼の瞳は、星の話をしている時以上に輝いているように見えた。

私の胸の奥の「もやもや」は、少し大きくなった気がした。
ただ、彼の隣に美依先輩がいる光景が、妙に気になった。

帰り道、バスに揺られながら、美依先輩が楽しそうに話しかけてきた。

「いやー、あの天文台、すごいね!観月さんも、ミステリアスだけど、話すと面白い人だったね!」

私は、どこか上の空で、

「そうですね…」

と曖昧に答えた。

「葵ちゃん、元気ない?もしかして、体調が悪い?」

美依先輩が、心配そうに私の小柄な顔を覗き込む。

「いえ…そんなことは…」

私はその心配そうに眉を寄せている、可愛らしい顔から視線を逸らし、窓の外を見る。

「ふーん、ならいいんだけど。
あ、そういえば葵ちゃん、観月さんってどうだった?
観月さんが話してる時、葵ちゃんの目、いつもの何倍も目がキラキラしてたよ?
もしかして、葵ちゃんの好きなタイプ?」

美依先輩は、私の心を見透かしたように、茶目っ気たっぷりに言った。

私の頬は、カッと熱くなった。

(そうか、私、観月さんのこと…?)

美依先輩の観察眼には、いつも驚かされる。
私自身が感じていた「もやもや」。
そんな気持ちを、容易く見抜いてくる。

私は急に恥ずかしくなって慌てて否定しようとしたが、言葉が出てこなかった。
美依先輩は、私の様子を見て、クスッと笑った。

「無理に否定しなくてもいいんだよ。葵ちゃん、あんまり自分の気持ちを表に出すの得意じゃないもんね。
でも、そういう葵ちゃんが、誰かに夢中になるかもって、私、ちょっと嬉しいな。なんだか、輝く星が一つ増えたみたいでさ」

その言葉は、私の心を温かく包み込んだ。
美依先輩は、いつも私の味方だ。

「また行きたいなら、付き合うよ。でも、次は一人で行ってみたら?
意外と、二人きりになった方が、話せることもあるんじゃないかな?
きっと、彼の心の中にも、葵ちゃんという星が、輝き始めるはずだよ」

美依先輩の言葉に、私はドキリとした。
一人で、観月さんと。

それは、考えただけで、緊張で胸が締め付けられるけれど、同時に、彼ともっと深く繋がりたいという、漠然とした願いが湧き上がってきた。
美依先輩の優しい後押しがなければ、私はこの一歩を踏み出す勇気を持てなかっただろう。

それからというもの、私は仕事の休みを見つけては、一人で観月さんの天文台を訪れるようになった。

最初はものすごく緊張したけど、美依先輩が、

「頑張ってね! 報告待ってるからね!」

と、明るく送り出してくれたから、頑張れた。

最初のうちは、観月さんの目の前ではうまく話すことができず、ただ望遠鏡を覗かせてもらい、彼の星の解説を聞くばかりだった。
しかし、何度か通ううちに、私は少しずつ彼に話しかけることができるようになってきた。

「観月さんは、どうしてこの天文台で、一人で星を見ているんですか?」

ある夜、勇気を出して尋ねた私に、観月さんは少しだけ迷うような表情を見せた。

「…そうですね。誰かに見せるため、というよりは、自分自身が星と向き合うために、ここにいるのかもしれません」

その言葉に、私は彼の深い孤独を再認識した。
同時に、彼の隣にいることが、私にとっては何よりも心地よい時間になっていることに気づき始めていた。
彼の寡黙さも、私にとっては静かで落ち着けるものだった。

観月さんは時折、お茶を淹れてくれた。
香り豊かなカモミールティー。
湯気の立つカップを両手で包むと、じんわりと温かさが伝わってくる。

その温かさに、彼の内に秘められた優しさを感じた。
彼の瞳の奥に宿る孤独や人柄に、私はますます惹かれていった。
それは、私が抱える人付き合いの苦手さや、内気な性格とどこか共鳴するような、切なくも温かい感情だった。

彼が稀に見せる優しい笑顔は、私の心を深く揺さぶり、もっと観月さんのことを知りたいと強く願わせた。
彼の口元が、ほんの少しだけ緩むその瞬間を、私は密かに心待ちにするようになっていた。

季節は移ろい、訪れるたびに空の表情は変わっていった。

ある夜、月明かりが特に美しい晩だった。
私たちは望遠鏡を使わず、ただテラスのベンチに座って夜空を眺めていた。
都会では決して味わえない、澄んだ空気と、虫たちの囁き。
私は、この静かで穏やかな時間が、ずっと続いてほしいと願っていた。

「この天文台に来てから、私、本当に変わった気がします」

と、私は独り言のように言った。
私自身、こんな風に自分の気持ちを素直に口にするのが得意ではなかったはずなのに、観月さんの前では、不思議と素直になれていた。

観月さんは隣で、静かに耳を傾けている。

「プラネタリウムの解説も、以前よりずっと、星の温かさや、宇宙の深さを、心から伝えられるようになったんです。
それは、観月さんの星への愛情に触れたからだと思います。
…私、前は、星の知識を伝えることに一生懸命で、もっと大切な何かを見落としていたのかもしれません」

観月さんは何も言わず、ゆっくりと私の方へ顔を向けた。
月光が彼の顔を照らし、その瞳が微かに潤んでいるように見えた。
その視線は、私の言葉の奥にある、私の心の変化を読み取ろうとしているかのようだった。

「葵さんは…流れ星に、どんな願いをかけますか?」

と、観月さんはかすれた声で尋ねた。
彼の声と表情には、いつもより少し、感情がこもっているように感じられた。

私は一瞬戸惑った。
私の願い?
それはきっと、観月さんの心の奥底にある傷が癒えること。
そして、この秘密の場所で、彼と共にずっと星を見続けられること…。

しかし、そんな個人的な願いを口にするのは、まだ私には早すぎる気がした。

「私の願いは…もし、星に言葉があるのなら、その言葉を聞いてみたい、ですかね。
どんな声を、どんなメッセージを、送っているんだろうって」

私はそう言って観月さんを見つめる。
それは、解説員としての純粋な好奇心と、観月さんの心の扉を開くきっかけになるかもしれないという、かすかな期待が混じった言葉だった。

観月さんは、ゆっくりと目を閉じ、そしてまた開いた。
彼の表情は、一瞬だけ、張り詰めた糸が緩んだように見えた。

「星の言葉、ですか…面白い願いですね。私は…考えたこともありませんでした」

「そうですか…じゃあ、もし、星が語りかけているとしたら、どんなことを伝えてると思いますか?」

私は、彼の答えを知りたかった。

観月さんは、再び夜空を見上げ、深く息を吐いた。

「…きっと、過去を後悔するな、と…そう言うかもしれませんね。あるいは、もっと、未来を見ろ、と」

彼の言葉に、私の胸は締め付けられた。
やはり、彼の過去には、深い後悔があるのだ。
その時、私は彼の心に、私が少しだけ触れることができたような、そんな感覚に包まれたのだった。

彼は何も言わなかったけれど、私を見つめるその漆黒の瞳は、確かに私に何かを語りかけているように見えた。

天文台から戻ったある日。
私は美依先輩に、いつものように天文台での出来事を報告していた。

観月さんが話してくれた星の知識や、淹れてくれたハーブティーのこと、そして、彼が「流れ星」という言葉を口にした時の切ない表情のこと。
私の話しぶりは、いつもよりもずっと熱を帯びていたと思う。

美依先輩は、私の話を、いつものようにふんわりとした笑顔で聞いてくれた。

「へえ、観月さんってそんな一面もあるのね。
葵ちゃんの話を聞いてると、なんだか私も、もっとあの天文台に行きたくなっちゃう」

「そうなんです。観月さんは…とても素敵な人です」

私がそう言うと、美依先輩は急に真剣な表情になって、私の眼鏡の奥の瞳を覗き込んだ。

「ねえ、葵ちゃん。
最近、観月さんの話をする時の葵ちゃんって、いつも以上に目がキラキラしてるわ。
そして、なんだか、とっても楽しそう。でも、ちょっと寂しそうにも見える」

私の胸の中にあった「もやもや」が、美依先輩の言葉で一気に膨らんだ。
寂しそう…?

「あのね、葵ちゃん。前に私と観月さんとが話してた時、葵ちゃん、ちょっとだけ、拗ねてるみたいに見えたの。覚えてる?」

その言葉に、私ははっとした。
あの時感じた、胸のチクリとした痛み。
美依先輩と観月さんが楽しそうに話しているのを見て、なぜだか気になったあの感情。

「私…あの時、なんだか、もやもやして…」

私は正直に打ち明けた。

美依先輩は、にっこり笑って、私の頭を優しく撫でた。

「うん。それがね、葵ちゃん。恋って言うのよ。
葵ちゃん、観月さんのことが好きなんだよ」

美依先輩の言葉が、私の心に、稲妻のように走った。

これが…恋?
私、観月さんのこと、好きなんだ…。

私がずっと感じていた「もやもや」の正体。
彼の隣にいたいと願う気持ち。
彼の孤独に寄り添いたいという衝動。
彼の笑顔を、一番近くで見ていたいという願い。
すべてが、繋がった。

私の頬は、カッと熱くなり、心臓がバクバクと音を立て始めた。
内気な私が、こんなにも強く誰かに惹かれるなんて、今まで経験したことがなかった。

「私…私、観月さんのことが…?」

「うん、知ってたよ。だって、私には葵ちゃんのことなんてお見通しなんだから」

美依先輩は、私の手をぎゅっと握りしめてくれた。

「ね、よかったじゃない。自分の気持ちに気づけて。
それって、すごく大切な一歩なんだよ。だから、その気持ち、大事にしてあげて。ね?」

美依先輩の言葉は、私の背中を温かく、力強く押してくれた。
自分の気持ちに気づくことができた喜びと、これからどうすればいいのかという不安が、私の胸の中で入り混じった。
でも、私には美依先輩という心強い味方がいる。
そのことが、私の心を勇気づけてくれた。

ある日、ニュースで、数十年に一度という大規模な流星群が観測されると報じられた。
私はそのニュースを見て、胸の奥がざわめいた。
美依先輩の言葉で自分の気持ちに気づいたばかりの私にとって、この流星群は、観月さんと向き合うべき、特別な夜だと直感していたのだ。
もしかしたら、私の願いが、ほんの少しだけ叶う夜になるかもしれない。

翌朝、私は美依先輩に、流星群の夜に天文台へ行きたいことを打ち明けた。

「私、行きたいんです。観月さんの、悲しみの理由が、もしかしたら、あの夜にわかるんじゃないかって…そして…私の、気持ちも…」

私の声は、少し震えていた。
美依先輩は、私の話にじっと耳を傾けてくれた。
その柔らかなウェーブの髪が、朝日に揺れている。

「そっか。葵ちゃんの直感、当たる気がする。きっと、そういう夜なんだよ、二人にとって。
でも、一人で行くの、怖くない?」

「大丈夫です。私、今度こそ、観月さんのそばにいたいです。
彼の悲しみを、少しでも…分かち合いたくて。そして、私の、この気持ちを…伝えたいんです」

私の決意に満ちた言葉に、美依先輩は優しい眼差しを向け、私の手を取り、ぎゅっと握りしめてくれた。

「わかった。頑張ってきて。葵ちゃんの言葉が、きっと彼を救うはずだから。
そして、彼の心を、温めてあげて。
葵ちゃんならできるよ、だって、最近の葵ちゃんの解説、一番、星への愛がこもってるもの。
その愛で、観月さんの心もきっと温まるはず」

その言葉が、私の背中を強く押してくれた。
美依先輩がいなければ、私はきっと、この大きな一歩を踏み出す勇気を持てなかっただろう。
私は美依先輩に、心からの感謝を込めて頷いた。

山道はいつもよりひっそりとしていて、空は不思議なほどに澄み渡っていた。
まるで、宇宙全体が、これから起こる奇跡を見守っているかのようだ。

天文台に着くと、観月さんはすでに屋上のドームを開放し、望遠鏡の調整をしていた。
彼の横顔には、いつになく緊張と、そして深い悲しみが宿っているように見えた。
普段の落ち着いた観月さんからは想像できないほど、彼の肩は微かに震えていた。

「観月さん…」

彼の元へと駆け寄って声をかけると、彼はゆっくりと振り返った。

そんな彼の瞳は、まるでこれから起こる何かに怯えているかのようだった。
その瞳の奥には、幼い頃の傷ついた少年が隠れているように見えた。
私は、彼のそんな姿を見て、胸が締め付けられる思いがした。

しばらくして、流星群は、予報通りに始まった。
初めはまばらに、しかし次第にその数を増やし、夜空いっぱいに光の筋が奔った。
漆黒のキャンバスに、無数のダイヤモンドが散りばめられ、それが一瞬の煌めきを残して消えていく。

息をのむような美しさ。
私の眼鏡の奥の瞳は、その光景に吸い込まれていた。
しかし、その圧倒的な光景を目にしても、観月さんの表情は硬いままだった。
むしろ、彼の全身から、苦痛のような震えが伝わってくる。
両手をぎゅっと握りしめ、顔は蒼白だ。

「すごい…」

私の隣で、観月さんは小さく、しかし深く、息を吐いた。
彼の視線は、夜空を縦横無尽に駆ける流星の一つ一つを、まるで何かを探すかのように、あるいは、何かから逃れるかのように、懸命に追っていた。

やがて、ひときわ大きく、長く尾を引く流星が、空を横切った。
その瞬間、観月さんはひゅっと息を呑み、その場に膝をついた。
まるで、その光の筋が、彼の心を直接抉り取ったかのように。

「ああ…」

彼の声は、苦しみに歪んでいた。
その声は、小さな子どものうめき声のようだった。

私はすぐに彼の肩に手を置いた。
彼の体は、氷のように冷たかった。

「観月さん、どうしたんですか?大丈夫ですか?」

私が声をかけると、彼は震える声で、絞り出すように語り始めた。
その声は、途切れ途切れで、言葉を探しているようだったが、一度溢れ出した感情は、もう止めることができなかったようだ。

「…私には、妹がいました。
私よりも三つ年下で、星を見るのが大好きな、可愛い妹でした。
幼い頃、よく私と二人で裏山に登って、流れ星に願いをかけていました。『お兄ちゃんと、ずっと一緒にいられますように』って…」

観月さんの声がかすれた。
彼の瞳からは、とめどなく涙が溢れ落ちていた。
流星群の光が、その涙を煌めかせた。

「ある日、あの子は…突然、病に倒れました。
助からないと、医者から告げられたとき、私は…必死で、神に、星に祈りました。
医者が言うには、奇跡が起きなければ助からない、と。
その夜、私はあの子を連れて、この天文台の前身だった、古い観測小屋へと向かいました。
そして、夜空に現れた、あの日と同じくらい大きな流星に…『妹を助けてほしい』と、心から願ったんです。
この身を犠牲にしてでも、妹を助けてほしいと…」

観月さんの言葉は途切れ途切れだったが、彼の胸に深く刻まれた痛みが、痛いほど伝わってきた。
彼の震える肩に、私はそっと手を添えた。

「でも…願いは、叶いませんでした。
妹は…次の朝、私の腕の中で、息を引き取りました。
私は…星に裏切られたと思った。
流れ星は、願いを叶えてくれると信じていたのに。
あの時、空を駆け抜けた流星は、私の願いを嘲笑うかのように、輝いていた…
私は、あの流れ星のせいだと思った。
そして、同時に…私がもっと強く願っていれば、私がもっと星に詳しかったら、妹は助かったんじゃないかと…自分を、責め続けたんです。
ずっと…ずっと、この流星群の夜が来るたびに、妹のことを思い出して、苦しんできました」

彼の瞳からは、とめどなく涙が溢れ落ちていた。
流星群の光が、その涙を煌めかせた。
彼は、幼い頃から、この流星群の夜に、妹の死と、自身の無力感を重ね合わせ、深い絶望の中にいたのだ。
だからこそ、彼は星に惹かれ、星を深く知ろうとしながらも、同時に星への深い傷と、罪悪感を抱えていたのだ。
その孤独は、私が感じていた孤独とは、比べ物にならないほど深く、重いものだった。

「観月さん…それは、違います」

私は震える声で言った。
私の胸も、彼の悲しみに引き裂かれるようだった。
彼の苦しみが、まるで自分のことのように感じられた。

私は、彼の冷たくなった手を、両手でそっと包み込んだ。
私の小柄な手の中に、彼の大きな手がすっぽりと収まる。

「星は…星は、私たちに願いを叶えるためにあるわけじゃありません。
星の光は、何億年もかけて、宇宙の果てから私たちに届く、遥かなる過去のメッセージ。
それは、途方もない時間の流れを、命の循環を、そして、宇宙の途方もない美しさを、教えてくれるんです」

私は、目の前でひどく傷つき、打ちひしがれている観月さんを、抱きしめたい衝動に駆られた。
しかし、今は言葉で、彼の心を温めるべきだと思った。

「流れ星は、その一瞬の輝きで、私たちが宇宙の一部であること、そして、限られた命の中で、何を大切にするべきかを、教えてくれるんだと思います。
観月さんの妹さんは…きっと、観月さんと一緒に見た星を、誰よりも愛していたはずです。
その愛は、星の光のように、今も観月さんの心の中で輝き続けている。
だから…自分を責めないでください。
星は、裏切ったりなんてしません。ただ…そこに、存在しているだけなんです。
その存在が、私たちに希望を与えてくれる、それだけなんです」

私の言葉は、プラネタリウムでいつも語る、星の解説とは違っていた。
それは、星の光が私に語りかけてくる「言葉」を、観月さんに伝えようとする、精一杯のメッセージだった。
私の声は、震えていたけれど、私の心は、彼を救いたいというただ一つの想いで満たされていた。

「流れ星が、本当に言葉を放つとしたら…それはきっと、『君は一人じゃない』という、温かい囁きだと思うんです。
宇宙は広大で、孤独な存在に思えるけれど、その中に存在するすべてのものは、繋がり合っている。
観月さんの妹さんも…きっと、その光の一部として、今も観月さんを、この空から、見守っているはずです。
彼女は、観月さんがこの天文台で星を見続けていることを、きっと喜んでいますよ」

私は、観月さんの目を見つめ、まっすぐに伝えた。
私の言葉の一つ一つが、彼の心に届くように、願いを込めて。

観月さんは、私の言葉を聞きながら、ゆっくりと顔を上げた。
その瞳は、涙で濡れてはいたが、絶望の色は薄れ、わずかな光が宿り始めていた。

「…葵さん…」

彼は、まるで幼い子供のように、私の名前を呼んだ。
その声は、もう苦しみではなく、ただ、深く、深い悲しみと、そして、かすかな希望が入り混じったものだった。
その声が、私の心に、温かく染み渡っていく。

「僕が、ずっと…ずっと、勘違いしていたのですね。
星は、僕を裏切ったわけじゃない…ただ、そこに、あっただけ…」

観月さんは、私の手を握り返す力を強めた。
彼の指先は、まだ少し冷たかったけれど、確かに温かさが宿り始めていた。

「妹は…僕が星を見るのを、本当に好きだった。
だから…だから、僕が星を見ることを、決してやめてほしくないって、思っているはずだ…」

彼の言葉に、私は深く頷いた。
彼の心が、少しずつ、過去の重荷から解放されていくのが分かった。

「ええ、きっとそうですよ。
観月さんが見る星は、妹さんの瞳にも、届いているはずです。
だから、これからも、一緒に見上げましょう。
そして、妹さんにも、観月さんが幸せに星を見ていることを、伝えましょう」

私は、彼の顔に触れたい衝動を抑え、ただ彼の瞳を見つめ続けた。
夜空には、まだ流星が降り注いでいる。
その光は、もう彼にとって、悲しい思い出の象徴ではなく、過去と未来を繋ぐ、希望の光に見えているだろうか。
彼の瞳が、夜空に瞬く星々を、以前とは違う、穏やかな眼差しで見つめているように見えた。

「ありがとう、葵さん…本当に、ありがとう」

観月さんは、私の両手をそっと包み込むように握りしめた。
その手が、私の心を、温かく、じんわりと満たしていく。
この手の温かさが、ずっと私の中にあったらいいのに、と私は思った。

そして、私は意を決して、観月さんの瞳をまっすぐに見つめた。
私の心臓が、耳元で激しく鳴っている。

「観月さん…私、観月さんのことが、好きです」

私の声は、震えていたけれど、不思議と力強く響いた。
夜空を駆け抜ける最後の流星が、私たちの言葉を祝福するかのように、長く尾を引いた。

観月さんは、一瞬、驚いたように目を見開いたが、すぐに優しい笑みを浮かべた。
その笑顔は、今まで見た中で、一番穏やかで、一番温かいものだった。

「葵さん…」

彼は、私の名前を、もう一度、大切に呼んだ。
そして、私の小柄な体を、優しく抱きしめてくれた。
彼の腕の中で、私は安心感と、これ以上ないほどの幸福感に包まれた。
彼の胸の鼓動が、私の心臓の音と重なる。
冷たかった彼の体温は、私の体温と混じり合い、じんわりと温かさを増していく。

「僕も…葵さんのことが、好きです」

彼の優しい声が、私の耳元で囁かれた。
その言葉が、私の心の中で、満天の星のように輝き始めた。

流星群は、夜明けとともにその輝きを終えた。
空にはまだ、名残惜しそうに薄明の星が瞬いていたが、観月さんの瞳には、夜が始まる頃の深い影はなかった。
まだ完全に癒えたわけではないだろうが、彼の表情は明らかに穏やかになっていた。
彼の口元には、微かな笑みが浮かんでいるように見えた。

「本当に…ありがとう…ございます、葵さん」

観月さんは、かすれた声で言った。
その言葉には、今まで彼が私にかけたことのない、深い感謝と、そして、確かな愛情が滲んでいるように感じられた。

私は何も言えず、ただ、彼の隣に座っていた。
彼の握り返した私の手は、もう冷たくはなかった。
むしろ、私の手のひらに、彼の温かさがじんわりと伝わってくる。

夜が明け、太陽が山々を照らし始めた頃、私は天文台を後にした。
バス停まで送ってくれる観月さんに、私の小柄な体で何度も振り返り、手を振った。
天文台の屋根に、朝日が当たり、キラキラと輝いている。
それは、観月さんの心に宿った、新たな光のようだった。
彼の背中が、以前よりも少し、軽やかに見えた。

職場に戻ると、美依先輩が私の顔を見るなり、満面の笑みで抱きしめてくれた。

柔らかな髪が私の頬に触れる。

「葵ちゃん、おかえり! 顔、すごくすっきりしてるね! 何かあったでしょう?」

私は、美依先輩の温かい腕の中で、こっそりとあの夜のことを話した。
観月さんに告白したこと、そして彼も同じ気持ちだったこと。
美依先輩は、私の話を全て聞き終えると、優しい眼差しで私の頭を撫でてくれた。

「よかったね、葵ちゃん。自分の気持ちに素直になれて。
それが一番大切なことだよ。
うん、うん、やっぱり葵ちゃん、あの人を見てる時の星の輝きが違うもんね」

そして、美依先輩は、少しだけ悪戯っぽく微笑んで言った。

「やっぱり、観月さん、葵ちゃんのタイプだったんだ。
ほら、私の言った通りでしょ?
私も、ちょっと観月さんとの会話、楽しかったけど、やっぱり葵ちゃんの隣にいる観月さんの方が、なんだか素敵だったわ。
よかったら、今度は私も一緒に、みんなでお茶しない?
きっと観月さんも喜んでくれるよ!今度は、3人で星を見ようね!」

私の頬はまた、カッと熱くなった。
美依先輩は、本当に私の心をよく知っている。

数日後、都会に戻った私を待っていたのは、いつもの日常だった。
プラネタリウムの解説をしながら、私はあの流星群の夜のことを思い出していた。
私の言葉が、観月さんの心を少しでも癒せたなら、それほど嬉しいことはない。

私の解説は、以前よりも深みを増したと、先輩が褒めてくれた。

「葵ちゃんの解説を聞いていると、本当に星が生きているように感じるよ。
なんか、温かいんだよね。眼鏡の奥の瞳が、さらに輝いてるよ。
顔も、なんだか、すごく幸せそう」

私は、心の中で「ええ、本当に生きているんです。そして、私たちに語りかけているんです」と呟いた。
星は、時に厳しく、途方もない存在だけれど、常に私たちに寄り添い、語りかけている。
その「言葉」を聞くことができたのは、あの秘密の天文台で、観月蓮という、孤独な魂と出会えたからだ。
彼の心に触れたことで、私の世界もまた、広がったのだ。

仕事から自宅に帰ると、天文台から一枚の葉書が届いていた。
観月さんからのものだった。

「先日は、本当にありがとうございました。
あなたの言葉は、私の心を救ってくれました。
そして、あなたの気持ちを聞いて、僕の世界は、さらに輝き始めました。
まだ、完全に過去と向き合えたわけではありませんが、今は、妹が見たかったであろう星空を、穏やかな気持ちで見上げられる気がしています。
そして…また、いつでもいらしてください。
あの、流星の夜に、あなたが見せてくれた光を、私も一緒に見つけたいと思っています。
今度は、もっとたくさんの星の言葉を、一緒に聞きましょう。
そして、僕の隣に、ずっといてくれますか?」

短い文章だったが、そこには彼の心の変化が、確かに記されていた。
特に、「僕の世界は、さらに輝き始めました」という言葉と、「僕の隣に、ずっといてくれますか?」という最後の一文が、私の胸を温かく締め付けた。
それは、私にとって、最高のプレゼントだった。
そして、「もっとたくさんの星の言葉を、一緒に聞きましょう」という一文は、未来への希望に満ちていた。

私は、再び天文台を訪れることを決意した。
今度は、仕事の資料収集のためではない。
観月蓮という一人の人間と、深く向き合うために。
そして、共に星を見上げ、まだ見ぬ光を共に探すために。

私はもう、あの秘密の天文台を、孤独な場所だとは思わない。
そこは、私たち二人が、共に新たな光を見つけるための、希望に満ちた場所なのだ。

あの夜、星が私たちに語りかけた言葉は、永遠の絆の始まりを告げる、静かなプロローグだったのかもしれない。

「星降る夜に、君と秘密の天文台」。

それは、孤独を抱えた二人が、星の光に導かれ、互いの痛みを癒し、新たな希望の光を見つけるまでの、切なくも温かい、そして、限りなく続く愛の物語の始まりなのだ。

夜空を見上げると、無数の星が瞬いている。
私はもう、そこに悲しい過去の影を重ねることはない。
ただ、観月さんと共に、その光の言葉を聞き、未来へと続く道を、手を取り合って歩んでいきたいと、心から願っていた。


-fin-
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