王子がカエルにされた理由(ワケ)

羽衣野 由布

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 「…………」

 「?…なんだ?」

 「しゃ……しゃ……しゃべったあぁぁぁぁぁ!!!」

 ラナの声が部屋中に響き渡った。

 聞きつけたモナルダ達がバタバタと駆け込んできた。

 「どうしましたラナ様?!」

 ラナはハッとして、表情を繕った。

 「あっ…ご、ごめんなさい。何でもないの。あ、あの、カエルさんの素晴らしさに驚いてしまって」

 「は、はぁ…そうですか。それならよろしいのですが…」

 「本当にごめんなさい。来てくれてありがとう」

 モナルダ達は、腑に落ちないまま寝室を出ていった。

 扉が閉められたのを確認すると、ラナはずいっとカエルに顔を近付けた。

 「うおっ!何だよ?」

 「あなた、人間の言葉が分かるの?!」

 「当たり前だ。なぜなら俺は──」

 「すごい……すごいすごいすごいすごい!なんて素晴らしいの!!」

 ラナは目をキラキラ輝かせ、興奮状態に陥った。

 「これは歴史的な大発見だわ!まさかカエルの中に、人の言葉が分かる種類がいるなんて!」

 「おい!人の話は最後まで──」

 「発表したら世界中の皆が注目するに違いないわ!そうなったら、今までないがしろにされがちだったカエルの研究が飛躍的に進歩するはず!」

 「こらっ!聞け!」

 「そして彼らの事をもっともっと知る事ができて!それで、それで……ああー!考えただけで──」

 「人の話を聞けぇぇぇ!!!」

 「ひあっ!!」

 耐えかねたカエル王子が、絶対に聞き逃さない音量で吠えた。

 「ラナ様?!何です、今のは?!」

 「あっ!な、何でもないの!ごめんなさい!」

 「ま…またですか…?」

 モナルダ達は渋々下がっていった。

 「ごめんなさい、カエルさん。私、なんだか取り乱しちゃったみたいで…」

 「全くだ!俺を無視する女はお前が初めてだ」

 「でも本当に素晴らしいわ。こうしてお話ができるなんて夢みたい!」

 「夢だなんて綺麗なものじゃない。これは呪いだ」

 「??……呪い?」

 「俺は、魔女に呪いをかけられカエルにされた人間だ」

 「…………え?」

 カエルの予想外の発言に、ラナは目をしばたたかせた。

 「え?え?そ、それってどういう…」

 「つまり、お前の言う新種とやらではないという事だ」

 「え……ええぇぇぇえええ!!!?」

 三度みたび大声が響き渡る。

 「ラナ様?!」

 「何でもないのごめんなさいっ!!」

 入ろうとしたモナルダを勢いのまま扉ごと押し戻した。

 閉めるとすぐさまカエルに駆け寄る。

 「本当に?!本当にあなたはカエルではないの?!」

 「何度も言わせるな。俺は人間だ」

 「じゃ、じゃあ……新種の発見は…?」

 「してないな」

 「研究の発展は…」

 「しないだろうな」

 「そ、そんなぁー…」

 ラナはへなへなと座り込んだ。

 「やっと…やっと見つけたと思ったのに……」

 何度も何度も城を抜け出して苦労して手に入れた結果が、まさかこんなだなんて。

 発見の喜びを感じてしまったがために、真実を知った辛さは相当なものだった。

 これなら崖から突き落とされた方がまだ良かった。

 「残念だったな。おい、これベーコン切ってくれ。これじゃ食えん」

 「…………」

 悪びれもせず指図をしてくるカエルを、しばし力なく見つめる。

 「おい、早くしろ。あと、今はこれで我慢してやるから、次は出来たてを出せ」

 「…………」

 「おい、聞いているのか?」

 「…………」

 見てたら何だか怒りが湧いてきた。

 スクッと立ち上がると、ラナは机から小型のナイフを取り出しベーコンエッグをザクザク切った。

 「お前さぁ、もう少し丁寧に切れないのか?」

 「んもう!私はラナよ!『おい』とか『お前』なんて名前じゃないわ!」

 「お前だって、俺を『カエル、カエル』って!俺はカエルじゃない!」

 「じゃあ一体どこの誰なのよ?!」

 「俺はレッド王国第一王子のイベリスだ!」

 「な、何ですって?!」

 ラナはナイフの汚れを拭う手を止め、カエル王子を凝視した。

 レッド王国は、グリーン王国の隣に位置する大国だった。

 「あなた、本当にイベリス王子なの?」

 「そこで嘘をついてどうする」

 「本当にあの?傲慢で、女にだらしなくて、自意識過剰な、あのイベリス王子?」

 「お、お前っ……本人を目の前によくもそんな悪口を…!」

 「あら、だって本当の事でしょ?」

 「なんだと?!」

 イベリスが凄味を効かせて睨むも、カエルのキョロッとした目では何の迫力もなかった。

 「そういえば…3日ほど前から行方不明になってるらしいって、朝モナルダが言っていたわ」

 「何?!それは本当か?捜索隊は出てるんだろうな?」

 「そこまでは分からないわ。…でも、どうしてあなたはカエルにされてしまったの?」

 「そんなの知るか!魔女が来て、いきなり呪いをかけたんだ!俺は何もしていない!」

 「本当にそうかしら…?きっと何か理由があったんだと思うのだけど…」

 「俺は悪くない!悪いのはあの魔女だ!そんなに気になるならお前が直接魔女に訊け!」

 訊けるものならな!と言おうとしたら、ラナの口から驚くべき言葉が発せられた。

 「そうね。そうしてみるわ」

 「訊け…何だって?!」

 「今夜にでも行ってみましょう」

 「お、お前っ、その魔女を知っているのか?!」

 「ええ、多分ね」
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