2人の秘密はにがくてあまい

羽衣野 由布

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その気持ちの正体は

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 木曜日。駅まで走った日の翌日。いつものように午前8時の少し前に学校に到着。

 靴を履き替えて廊下を歩いていると、周りの生徒達がヒソヒソ話しながらこちらを見ているのに気が付いた。

 ……な…何?

 不審に思いつつ自分の教室の扉を開けると、中にいたクラスメイトの視線が一気に碧乃に集中した。

 「!」

 だっ…だから、何っ?

 あまりの光景に立ちすくむ碧乃に、三吉がスマホを持って近付いてきた。

 「お、おはよう、碧乃ちゃん。あ、あの、これ、碧乃ちゃんだよね…?」

 「…?」

 見せられた三吉のスマホには、駅で小坂が自分と手を繋ぐ所を遠目に撮った写真が表示されていた。正確には、自分は後ろ姿だけで顔は写っていない。

 「あ…」

 瞬時に、自分が置かれた状況を把握した。

 なんだ…。これだったのか。

 ネット上で拡散されるとは思わなかったが、いつかは一緒にいる所を見られて指摘されるだろうと想定していた。昨日のあれも少し懸念していたのだ。したがってたいして驚く事もなく、原因が分かって逆にほっとした。

 「…そうだね」

 三吉の質問に冷静に答える。

 周囲の皆が2人の会話に聞き耳を立てた。

 「え!!じ、じゃあ、その…、2人はつ、つ、付き合って…」

 「ないから。私なんか相手にする訳ないでしょ?」

 恥ずかしさで顔を真っ赤にしている三吉を諭すように、優しく返した。

 妹のおかげというべきか、こういう類の会話には耐性が付いていた。

 「え?で、でも…、手繋いで…」

 「ああ、それは雨の中歩いてたら、向こうが勝手に引っ張って一緒に走らされたの」

 いろいろ省略したが、嘘は言っていない。

 「あ…な、なんだ。そうだったんだぁ」

 全く慌てる様子のない碧乃に、三吉も他の生徒も平常心を取り戻した。どうやら信じてくれたようだ。

 異常な状況は、すぐに終了した。

 「ごめんね。みんなその話してるから、早く訊かなきゃと思って…」

 三吉は、碧乃を席の方へ連れて行きながら謝った。

 「ううん、大丈夫。むしろすぐに解決できて良かった」

 碧乃は素直に三吉に笑いかけた。

 席に着き、かばんを降ろして座ろうとした時、登校したての藤野がものすごい勢いで抱きついてきた。

 「碧乃っちーー!!」

 「うはっ!」

 「ひどいよー!私というものがありながらー!」

 「……」

 今その話終わったって…。





 「はぁー…」

 碧乃は女子トイレの手洗い場に両手をついてうなだれると、深いため息をついた。

 今はまだ3限目が終わった所なのに、もう1日分の体力を使い果たしてしまった気がする。

 写真の件が解決したのは碧乃のクラスだけだった。

 写真は瞬く間に拡散されたのだから、自分の話も早々に広がるだろうと思っていたのに。

 廊下へ出ると知らない生徒にまで声をかけられ、問い詰められた。その度に朝と同じ説明をしなければならず、みるみる碧乃の体力は奪われていった。この女子トイレまでの道のりも、ものすごく長かった。

 こんな事なら、禁止のままにしとくんだった…。

 2人が一緒にいるのは、やはり違和感があり過ぎるのだ。他の子だったら、ここまで騒がれなかったに違いない。

 「……」

 碧乃は鏡に映る自分の姿をじっと見た。

 写真には髪を括る後ろ姿しか写っていない。自分と面識のない生徒は、きっとその特徴を頼りに接触してきたのだ。現に、同じような髪型の人に話しかける生徒も見かけた。

 碧乃はヘアゴムを取って髪を下ろした。

 勉強するには邪魔だが仕方ない。こうしておけば、少しはましになるはずだ。





 教室へ戻ると、碧乃はほっと胸を撫で下ろした。

 碧乃の読み通り、今廊下を歩いてきた限りでは知らない生徒から話しかけられる事はなかった。しばらくはこれで登校した方が良いかも知れない。

 「あれ?碧乃っち髪下ろしたの?」

 早速気付いた藤野が、席についた碧乃に近付いてきた。

 「うん…。あの写真のままでいたら、知らない人にまでいろいろ訊かれたから」

 「あー、さっきの移動教室の時もすごかったもんね」

 碧乃は苦笑いで頷いた。

 「ずっとこのままでいたらー?こっちの方が可愛くて好きー」

 そう言いながら、藤野は碧乃の髪を触りだした。

 「ち、ちょっと、くすぐったいよ」

 「碧乃っちって髪やらかいよねー。ずっと触ってたーい」

 「っひゃっ!そこは髪じゃないっ!」

 碧乃は慌てて耳を押さえた。

 「うふふ。相変わらず反応いいなぁー」

 「うう…」

 もうやだ、この人。



 §



 光毅はものすごく苛立っていた。

 なぜこうも、自分の行動は裏目に出てしまうのだろうか。

 昨日の夜、圭佑から連絡があって写真の事を知った。驚いてすぐに斉川に知らせようとしたが、複数の友達から電話がかかってきて、彼女に連絡するタイミングを失った。

 その友達には何と答えて良いのか分からず、明日話すと言って電話を切ってしまった。

 どうしたものかと登校すると、予想通りいろんな生徒から声をかけられた。

 その度に急いでいるからと逃げていたのだが、自分のクラスメイトにおいては斉川が事を収めていた。

 はっきり『付き合っていない』と宣言したのだそうだ。それを友達から聞いた時、なぜだかものすごくショックを受けた。全くの事実だというのに。

 そして、その言葉を言わせてしまった自分に無性に腹が立った。

 彼女にはそんな邪なものには触れてほしくなかった。純粋に自分を1人の人間として接してくれるのは彼女だけだ。いつまでもそうしていてほしい。

 なのに、自分の中に疼くものがその先に進みたいと足掻き出す。

 どうしたら良いのか、もう分からなくなってしまった。

 今、光毅の目の前では、藤野が斉川にちょっかいを出し続けていた。

 騒ぎが収まるまでは彼女に接触しない方が良いだろうと、止めに入りたい気持ちをどうにか抑えた。しかし目を離すことはできず、頬杖をついて平静を装いながらその光景を見ていた。

 光毅の中に疼くものが、どうしようもない怒りを発する。

 なんであいつは許されるのに、俺はダメなんだよ!…ほんの一瞬触れただけじゃないか。俺だって、本当は…。

 「俺もあんな風に触りてー」

 光毅の耳元で誰かが囁いた。

 「っ!?」

 ガバッと振り向くと、圭佑が腰をかがめて耳打ちの体勢をとっていた。

 「なんだ図星か?」

 体勢を戻し、圭佑はニヤリと笑った。

 「なっ、何バカ言ってんだ!思わねーよ、そんなこと!」

 「俺が気付かないとでも思ってたのか?」

 動揺を露わにする光毅に、呆れ顔が向けられた。

 「は?き、昨日のあれは、別に何も…」

 「バーカ。気付いたのはもっと前だ」

 「え…」

 光毅が絶句していると、次の授業の担当教師が教室に入ってきた。

 「まぁ、詳しくは今日の夜にうちで聞いてやるよ。…秘密の関係みたいだし?」

 「なっ!…」

 不敵な笑みでそう言うと、圭佑は自分の席へ戻っていった。





 午後8時40分。夕食を食べ終えた光毅は、ジャージの上に厚手の上着を羽織って圭佑の家へ向かった。

 光毅の家の近所にある美容室が彼の家だった。いわゆる幼馴染みというやつで、小さい頃からお互いの家をよく行き来していた。光毅が緑星高校に行くと決めた時、どうせなら知ってる顔がいた方が良いと言って、圭佑も同じ高校を受験したのだった。

 美容室は午後9時までの営業なので、店にはまだ明かりが付いていた。

 仕事中の彼の両親に外から軽く会釈をすると、店と併設された家の玄関へ向かった。

 圭佑の出迎えを受け、真っ直ぐ彼の部屋に入った。

 上着を脱ぎつつ、いつものように小さな座卓の前に座ると、早速ストレートな質問が飛んできた。

 「んで?斉川碧乃とはどこまで進んだんだ?」

 「どこまでって…、別にそんなんじゃねぇよ」

 予想通りの内容に、光毅は半ば呆れながら答えた。

 「じゃあどんなんだ?」

 「勉強を教えてもらっただけだ」

 「勉強?いつ?」

 「……中間テストの前」

 気付かれた以上、もう打ち明けるしかない。

 せっかく、2人だけの秘密だったのに。

 「は?そん時って確か………え?まさか、家庭教師って…」

 光毅はこくっと頷いた。

 「はぁー、まじか。さすがにそこまでは気付かんかった」

 驚いた圭佑は、思わず頭に手をやった。

 「…いつから気付いてたんだ?」

 「んー…、気付いたっていうか、疑問を抱いたのは藤野を止めに行った時だな」

 「……」

 やっぱりか……。

 あの時は、自分のせいで起きた事だから、どうしても動かずにいられなかったのだ。

 「んで、お前があいつの事をチラチラ見てるもんだから、絶対何かあると思った」

 「…そうか」

 言われてみると、確かによく見ていたかも知れない。

 「でも、よくあんな奴と関わる気になったなぁ?」

 「…あんな奴?」

 圭佑の言葉に、光毅の目が据わった。

 お前が何を知ってるって言うんだ?

 「なんか、いかにも真面目人間って感じじゃん。冗談とか全然通じなくて、話しても面白くなさそうだしさぁ。あと自分が勉強できるからって、できない奴らと距離を置こうとしている気がするし」

 なんだか、聞いててイライラしてきた。

 「…何も知らないくせに。斉川はそんな奴じゃない」

 苛立ちを露わに、圭佑を睨みつけた。

 「んな怖い顔すんなよ。あくまで俺のイメージだ」

 光毅は、あぐらの上に置いた手に目線を落とした。

 「…確かにあいつは真面目だよ。真面目過ぎるぐらい。だからいつも自分を追い込んで、危なっかしくて…。それが何だか、放っておけないっていうか…。でも、それと同時に安心もさせてくれるんだよ。どんな話でも真剣に聞いて、嘘のない言葉でちゃんと返してくれるから、ずっと話していたくなる。……俺から見れば、斉川はすごい奴だよ。なのに全然自分に自信を持とうとしないから、人ともうまく付き合えないんだと思う」

 「……そんなに熱く語られると、聞いてるこっちが恥ずかしいんですけど」

 「なっ…!べ、別に、俺は本当の事を言っただけで…」

 急に恥ずかしくなり顔を真っ赤にした光毅に、圭佑が笑いかけた。

 「まぁ、お前がどんだけ斉川碧乃に惚れてるかは分かったよ」

 「は?だ、だからそんなんじゃ…!」

 光毅の顔が更に赤くなった。

 「いい加減認めろよ。本当は自覚あんだろ?」

 「う……。それは……できない」

 「なんで?」

 「そんな事したら…今まで付き合った奴と同じになっちゃう気がして、嫌なんだよ」

 「は?…どういう事だ?」

 圭佑は訳が分からないという顔をした。

 「今までのは、お互いにとって得だったから付き合ったんだ。向こうは俺に興味を抱いていたし、俺も悪い気はしなかったから。だから付き合ってほしいって言われた時、素直に受け入れた。んで、向こうが俺に何も求めなくなったら終わりにした。…恋人なんて、下心で繋がってるだけだろって思ってた」

 「ああ…、そういえば前の彼女と別れた時もそんな事言ってたな。お前からは何もしないもんだから、つまんない男だって振られたんだっけ」

 「…でも、斉川は違った。求める求めないの関係じゃなく、ただ純粋にそばにいてほしいって思った。そばで話を聞いてくれるだけで良いって…」

 「それは、やっと本気で好きになれる相手に巡り会えたって事だろ。今までのが異常だったんだ。同じにはならねぇよ」

 「……」

 「なんだ?まだ何かあんのか?」

 未だ自分の気持ちを認めようとしない光毅に、若干苛立ちながら訊いてきた。

 「…一緒にいると、おかしな感情が芽生えるんだよ」

 「おかしな感情?」

 「無性に困らせてやりたくなるんだ。いつも冷静なあいつの動揺する姿が見たくてたまらなくなる。だめだって分かってるのに、いつも抑えられなくて…。そばにいるだけで良いって思ったり、そんなんじゃ全然満足できなかったり……自分がどうしたいのか、もうよく分かんねぇんだよ」

 こんなに心が乱れる事なんて、今まで一度もなかった。いつも誰かしらがこうしてほしいと望むから、自分はどうしたいかなんて考える必要がなかったのだ。

 「…ふーん。お前も一応、健全な人間だったんだな」

 「?…どういう意味だ?」

 顔を上げると、ニヤリと笑う顔が見えた。

 「昔からお前は、人前ではいつもニコニコして優しい人間を演じてる感じだったよな。特に女の前では。下心を持って近付いてくる奴が多かったから、隙を全く見せないようにしてた。恋人として付き合った子にもそうしてたから、てっきりそういう感情が抜け落ちてんのかと思ってたけど、違ったみたいだな?」

 「……」

 そんな風に思われていたのか。

 「しょうがないだろ。イメージと違うって勝手にがっかりされて、無駄に傷付けられるのは嫌だったんだよ」

 「良かったなぁ。普通の人間に戻してくれる人が現れて」

 そう言いながら、圭佑はさらにニヤリと笑った。

 「うう…、俺は普通の人間だ」

 「はいはい。…じゃあ人間さん、これからどうするよ?」

 「え?」

 …これから?

 「さっさと告って自分のものにしちまえよ。気持ちをはっきりさせた以上、いつまでもこのままって訳にいかないだろ?」

 「告ってって…、どうやって?」

 彼の言葉にキョトンとしてしまった。

 「知るか、んなもん。自分で考えろ」

 「自分からした事ないから、分かんないんだよ」

 「…お前それ、自慢にしか聞こえない」

 「うるせぇな!本当の事だからしょうがないだろ!」

 「あーはいはい。モテる男は大変ですねぇー」

 むきになって返すと、肩をすくめて軽くかわされただけだった。

 「ああ、じゃあ今の騒ぎに乗じて、このまま付き合っちゃおうかとでも言ったらどうだ?」

 「そんなの、絶対嫌がられるに決まってる」

 「じゃあどうすんだ?」

 圭佑は苛立ちを募らせながら訊いた。

 「ど、どうって…」

 「モタモタしてると、他の男に取られちまうかも知んないぞ?」

 「うっ……、だ、だからって焦って失敗したら、どうすんだよ!」

 「そん時は潔く諦めるんだな」

 「それは絶対嫌だ!」

 今の関係を壊して終わりだなんて、死んでも御免だ。

 「うわ、わがまま全開だな。そんなに嫌なら、確実に手に入れる方法を考えろよ」

 「だから分かんないんだって!…第一、あいつはきっと俺の事なんて何とも思ってない」

 ああ、しまった。自分で言って悲しくなってきた。

 彼女はいつも、どんな気持ちで接してくれているのだろうか。

 シュンとして黙り込んだ光毅を見て、圭佑は顔を手で覆って大きなため息をついた。

 「経験あるくせにうぶって、どんだけだよ…」

 「うるさい。好きでこうなった訳じゃない」

 「…ったく、しょうがねぇなぁ。じゃあ俺が、あいつの気持ちをそれとなーく探っといてやるよ」

 「え…」

 光毅は不審そうな目で、前にいる男を見た。

 気持ちは知りたいが、こいつを斉川に接触させて大丈夫だろうか?

 「なんだ、俺じゃ不満か?」

 「…ちょっと」

 「安心しろ。斉川碧乃は俺のタイプじゃねぇよ。俺は三吉ちゃんみたいなふわふわが好みなの」

 「……」

 女子であればタイプ関係なくせまるような奴なので、いまいち不安だ。

 「じゃあ情報収集は俺に任せて、お前はあいつの印象に残るようにアタックしまくっとけ」

 「え?……アタックって?」

 再びキョトンとした顔を見せられた圭佑の頭の中で、何かがプチッと切れた。

 「んな事まで俺に訊くなーーーー!!」
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