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第22話 聖女、他国の神官に“誘惑”される!?
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昼下がりの聖堂。
今日も私は、神殿の光の中でぼんやりしていた。
「ふぁぁ……昼寝日和……。」
あくびをかみ殺しながら、ベッドではなく長椅子に寝転がっている。
「聖女さま!」
扉を開けて飛び込んできたユウヒの声。
今日もいつもどおり――と思ったら、様子が違った。
「今日、他国から使節団が参ります。
その中に“神官長補佐”がいるそうで……」
「へぇ。偉そうな人?」
「とても優秀で、貴族出身の美形だとか……」
「ふーん。……ん? なんでちょっと顔ひきつってない?」
「い、いえ! 別に!」
◇ ◇ ◇
数時間後。
聖堂の中央に、淡い灰色の法衣をまとった青年が現れた。
金の瞳に、銀髪。
その佇まいはまるで“絵画から抜け出した天使”のよう。
「初めまして、聖女殿。私はエリアス=ノルドと申します。」
「ども、ぐうたら聖女です。」
「……?」
一瞬、ぽかんとする彼。
その表情がなんだか面白くて、つい笑ってしまった。
「冗談です。よろしくお願いします、エリアスさん。」
「こちらこそ。……あなたがこの国を癒やす“安らぎの聖女”ですか。
想像よりずっと――可憐だ。」
「え?」
まっすぐな視線。
その距離、ちょっと近い。
その声、やたら甘い。
(あ、これ、たぶん“口説いてる”やつだ。)
「そ、その……あの、褒めても何も出ませんよ?」
「いいえ、微笑みをいただけるだけで十分です。」
(うわ、慣れてる!)
◇ ◇ ◇
部屋の隅で、ユウヒが固まっていた。
笑顔は張りついたまま、目が笑っていない。
「エリアス殿、こちらへどうぞ。ご案内いたします。」
「ありがとう。……だが、もう少し聖女殿とお話を――」
「儀礼の順序に従っていただけますか?」
声が少し低い。
いつものユウヒとは違う。
(……あ、これ怒ってる。)
◇ ◇ ◇
使節団が去ったあと。
静まり返った聖堂で、私はそっとため息をついた。
「……ねえ、ユウヒくん。」
「はい。」
「怒ってる?」
「怒ってなどいません。」
「嘘。眉間のシワ、ばっちりだよ。」
ユウヒは耳まで赤くなって俯いた。
「……あの男、あまりに軽率でした。
聖女さまにあのような態度を取るなんて、失礼です。」
「ふふ、嫉妬?」
「ち、違います!」
「うそつけ~。あれ完全に“やきもち神官”の顔だったよ。」
「っ……!」
彼は言葉を詰まらせたあと、
少しだけ小さく呟いた。
「……だって、怖かったんです。」
「怖い?」
「もし、あなたがあの人の言葉に惹かれて、
僕の知らない場所に行ってしまったら――って。」
その言葉に、胸がぎゅっと鳴った。
「バカだなぁ。」
「え?」
「そんなこと、あるわけないじゃん。」
私はそっと彼の腕に触れた。
「私がいるのはここだよ。
君のそば。……それ以上、どこにも行かない。」
ユウヒが目を見開き、
やがて、安堵のように微笑んだ。
「……本当に、ずるい人です。」
「なにそれ、褒め言葉?」
「はい。僕の世界でいちばん、ずるくて優しい人です。」
◇ ◇ ◇
その夜。
聖堂の外では風が吹いていた。
窓辺に立つユウヒが、月を見上げながら小さくつぶやく。
「……たとえ誰が現れようと、
僕はあなたを守る。誰よりも強く。」
その祈りのような言葉が、
夜の風に溶けていった。
次回予告
第23話 「聖女、ヤキモチ神官をなだめる(手をつなご)」
――お楽しみに!
今日も私は、神殿の光の中でぼんやりしていた。
「ふぁぁ……昼寝日和……。」
あくびをかみ殺しながら、ベッドではなく長椅子に寝転がっている。
「聖女さま!」
扉を開けて飛び込んできたユウヒの声。
今日もいつもどおり――と思ったら、様子が違った。
「今日、他国から使節団が参ります。
その中に“神官長補佐”がいるそうで……」
「へぇ。偉そうな人?」
「とても優秀で、貴族出身の美形だとか……」
「ふーん。……ん? なんでちょっと顔ひきつってない?」
「い、いえ! 別に!」
◇ ◇ ◇
数時間後。
聖堂の中央に、淡い灰色の法衣をまとった青年が現れた。
金の瞳に、銀髪。
その佇まいはまるで“絵画から抜け出した天使”のよう。
「初めまして、聖女殿。私はエリアス=ノルドと申します。」
「ども、ぐうたら聖女です。」
「……?」
一瞬、ぽかんとする彼。
その表情がなんだか面白くて、つい笑ってしまった。
「冗談です。よろしくお願いします、エリアスさん。」
「こちらこそ。……あなたがこの国を癒やす“安らぎの聖女”ですか。
想像よりずっと――可憐だ。」
「え?」
まっすぐな視線。
その距離、ちょっと近い。
その声、やたら甘い。
(あ、これ、たぶん“口説いてる”やつだ。)
「そ、その……あの、褒めても何も出ませんよ?」
「いいえ、微笑みをいただけるだけで十分です。」
(うわ、慣れてる!)
◇ ◇ ◇
部屋の隅で、ユウヒが固まっていた。
笑顔は張りついたまま、目が笑っていない。
「エリアス殿、こちらへどうぞ。ご案内いたします。」
「ありがとう。……だが、もう少し聖女殿とお話を――」
「儀礼の順序に従っていただけますか?」
声が少し低い。
いつものユウヒとは違う。
(……あ、これ怒ってる。)
◇ ◇ ◇
使節団が去ったあと。
静まり返った聖堂で、私はそっとため息をついた。
「……ねえ、ユウヒくん。」
「はい。」
「怒ってる?」
「怒ってなどいません。」
「嘘。眉間のシワ、ばっちりだよ。」
ユウヒは耳まで赤くなって俯いた。
「……あの男、あまりに軽率でした。
聖女さまにあのような態度を取るなんて、失礼です。」
「ふふ、嫉妬?」
「ち、違います!」
「うそつけ~。あれ完全に“やきもち神官”の顔だったよ。」
「っ……!」
彼は言葉を詰まらせたあと、
少しだけ小さく呟いた。
「……だって、怖かったんです。」
「怖い?」
「もし、あなたがあの人の言葉に惹かれて、
僕の知らない場所に行ってしまったら――って。」
その言葉に、胸がぎゅっと鳴った。
「バカだなぁ。」
「え?」
「そんなこと、あるわけないじゃん。」
私はそっと彼の腕に触れた。
「私がいるのはここだよ。
君のそば。……それ以上、どこにも行かない。」
ユウヒが目を見開き、
やがて、安堵のように微笑んだ。
「……本当に、ずるい人です。」
「なにそれ、褒め言葉?」
「はい。僕の世界でいちばん、ずるくて優しい人です。」
◇ ◇ ◇
その夜。
聖堂の外では風が吹いていた。
窓辺に立つユウヒが、月を見上げながら小さくつぶやく。
「……たとえ誰が現れようと、
僕はあなたを守る。誰よりも強く。」
その祈りのような言葉が、
夜の風に溶けていった。
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第23話 「聖女、ヤキモチ神官をなだめる(手をつなご)」
――お楽しみに!
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