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放課後(攻めタッグの相談会後半戦)
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「で、ひいなの方はどんな感じなの?」
「あこれ今度私のターンなんですか」
「順番的にそうでしょ」
詩弦と自分の件について区切りがついたので、彩里はひいなと蓮の恋事情に話題を変えた。
冷めたポテトを口に運びながら、ひいなの言葉を待つ。
「いやー実は私も彩里先輩に聞いてほしいことがあるんですよ」
「お、どんとこい」
大人びた返答をしてくれた先ほどとは打って変わって、ひいなは頬を赤らめやや俯いた。
「彩里先輩と似たような感じなんですけど、私も、蓮とそういうことがしたいんですよね」
「へーえ?」
初めて見るひいなの雰囲気に、彩里はニヤニヤしながら言葉を待った。
「だけどほら、蓮って___めちゃくちゃ純粋アンド天然じゃないですか??」
「そうだねそうだね」
彩里は強く何度もうなづいた。
ひいなと付き合う前、蓮には1人元彼がいると聞いた。しかし、それなりに長く付き合ったのに、キス未満の関係で終わったらしい。
ひいなと出会ってキスを覚えた蓮だが、そもそも蓮はその次を知っているのだろうか。
「だから、まずそういう空気自体にならないしできないし、仮になったとしても、私、純潔な蓮を汚してしまいそうな気がしてなにもできないんですよ!」
額に手を当て天を仰いでそう嘆くひいなは、かえって大人のように見えた。
相手があの蓮だからこそ生じる「罪悪感」から成る悩みだろう。
「あーもうマジで、なんであんなに蓮って純粋無垢なんですかね。キスはしますけど、まだ唇触れるだけのやつですし」
「はぁ?!まじ?!ベロ入れてないの?!」
「でっかい声ですね」
ひいなに言われて彩里は慌てて両手で口を塞いだ。
思い返してみれば、自分、詩弦、蓮の全員に、ひいなはキスをしている。それに、文化祭の時の「見せつけ」では、作戦といえど私とほぼゼロ距離だった。詩弦にも抱きついたことがあるって聞くし。
___ってことは。
「関係性だけ見てみれば、あんた全員と付き合ってんじゃん」
「ぐああああ!!!」
彩里の言葉に、ひいなは頭を抱えて机に突っ伏した。
うすうす自分でも気づいていたのだろう。蓮が1番特別で大切なはずなのに、行動は十分に伴っていない。
「本音を言いますとね?私かって!濃厚なキスだの前戯だの本番だの!したいんですよ?!性欲かってちゃんとありますし!人間ですしね?!」
堰が切れたように、勢いよく顔を上げたひいなは彩里に噛み付く。
「だけどっ、だけど!なんか、蓮にはそーいうのしちゃいけないって思っちゃって!そう思ったらなんか!本人を前にするとしたいって気持ちなくなっちゃって!なんかもうっ、ほんとどうすればいいのかっ___」
そこまで言ってひいなは口を閉じた。
そして、深呼吸をして椅子に座り直した。
「…拗らせてるのはお互い様だったんだね」
「…そうですね」
しばらく空いた沈黙の後、彩里の静かな言葉にひいなは肯定を返した。
お互い、愛する人と一線を超えたいという欲と、でも相手を壊したくないという想いから生じるジレンマに苦しめられていることは共通していた。
しかし、そのジレンマによって「加虐心」を抱く彩里と、「罪悪感」を抱くひいなとでは、悩みの種はまったく別なのである。
「あ、もう8時だ」
彩里の言葉にひいなもスマホの時刻に目を落とした。
「…時間も時間ですしそろそろ帰りましょうか」
「そうだね。遅くまでありがとう」
「こちらこそ」
話もそこそこに、最寄駅に向かう彩里と、直接実家に向かうひいなは反対方向の帰路に着く。
外は、すっかり暗くなっていた。
「あこれ今度私のターンなんですか」
「順番的にそうでしょ」
詩弦と自分の件について区切りがついたので、彩里はひいなと蓮の恋事情に話題を変えた。
冷めたポテトを口に運びながら、ひいなの言葉を待つ。
「いやー実は私も彩里先輩に聞いてほしいことがあるんですよ」
「お、どんとこい」
大人びた返答をしてくれた先ほどとは打って変わって、ひいなは頬を赤らめやや俯いた。
「彩里先輩と似たような感じなんですけど、私も、蓮とそういうことがしたいんですよね」
「へーえ?」
初めて見るひいなの雰囲気に、彩里はニヤニヤしながら言葉を待った。
「だけどほら、蓮って___めちゃくちゃ純粋アンド天然じゃないですか??」
「そうだねそうだね」
彩里は強く何度もうなづいた。
ひいなと付き合う前、蓮には1人元彼がいると聞いた。しかし、それなりに長く付き合ったのに、キス未満の関係で終わったらしい。
ひいなと出会ってキスを覚えた蓮だが、そもそも蓮はその次を知っているのだろうか。
「だから、まずそういう空気自体にならないしできないし、仮になったとしても、私、純潔な蓮を汚してしまいそうな気がしてなにもできないんですよ!」
額に手を当て天を仰いでそう嘆くひいなは、かえって大人のように見えた。
相手があの蓮だからこそ生じる「罪悪感」から成る悩みだろう。
「あーもうマジで、なんであんなに蓮って純粋無垢なんですかね。キスはしますけど、まだ唇触れるだけのやつですし」
「はぁ?!まじ?!ベロ入れてないの?!」
「でっかい声ですね」
ひいなに言われて彩里は慌てて両手で口を塞いだ。
思い返してみれば、自分、詩弦、蓮の全員に、ひいなはキスをしている。それに、文化祭の時の「見せつけ」では、作戦といえど私とほぼゼロ距離だった。詩弦にも抱きついたことがあるって聞くし。
___ってことは。
「関係性だけ見てみれば、あんた全員と付き合ってんじゃん」
「ぐああああ!!!」
彩里の言葉に、ひいなは頭を抱えて机に突っ伏した。
うすうす自分でも気づいていたのだろう。蓮が1番特別で大切なはずなのに、行動は十分に伴っていない。
「本音を言いますとね?私かって!濃厚なキスだの前戯だの本番だの!したいんですよ?!性欲かってちゃんとありますし!人間ですしね?!」
堰が切れたように、勢いよく顔を上げたひいなは彩里に噛み付く。
「だけどっ、だけど!なんか、蓮にはそーいうのしちゃいけないって思っちゃって!そう思ったらなんか!本人を前にするとしたいって気持ちなくなっちゃって!なんかもうっ、ほんとどうすればいいのかっ___」
そこまで言ってひいなは口を閉じた。
そして、深呼吸をして椅子に座り直した。
「…拗らせてるのはお互い様だったんだね」
「…そうですね」
しばらく空いた沈黙の後、彩里の静かな言葉にひいなは肯定を返した。
お互い、愛する人と一線を超えたいという欲と、でも相手を壊したくないという想いから生じるジレンマに苦しめられていることは共通していた。
しかし、そのジレンマによって「加虐心」を抱く彩里と、「罪悪感」を抱くひいなとでは、悩みの種はまったく別なのである。
「あ、もう8時だ」
彩里の言葉にひいなもスマホの時刻に目を落とした。
「…時間も時間ですしそろそろ帰りましょうか」
「そうだね。遅くまでありがとう」
「こちらこそ」
話もそこそこに、最寄駅に向かう彩里と、直接実家に向かうひいなは反対方向の帰路に着く。
外は、すっかり暗くなっていた。
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