淡色に揺れる

かなめ

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後章

学園祭準備(フィナーレを目前に)

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学園祭を翌日に迎えた最後の準備の日。

ちょうど、各団がそれぞれ明日の本番に向けて応援歌を熱唱し士気を高め合っってすぐ。

教室に戻る途中で、蓮はぽつんと一人座っている姿を見つけた。

「……彩里先輩」

声をかけると、彩里は振り返った。
笑顔を作ろうとして、でも作りきれず、どこかぎこちない表情だった。

蓮は胸の奥がずきっと痛んだ。
あの日、あのトイレで自分が吐き出した言葉を思い返して。

「……ごめんなさい」

深く頭を下げる。

「私、勝手に誤解して、ひいなと彩里先輩のこと、ちゃんと聞きもしないでひどいこと言って……」

しばらく沈黙が落ちた。
蓮の心臓は今にも破れそうに高鳴っている。

やがて、彩里はため息をつきながらも、穏やかに言った。

「顔、上げて。私も、あの時うまく説明できなかった。悪かったよ」

蓮が恐る恐る顔を上げると、彩里は苦笑いを浮かべていた。

「大丈夫、怒ってなんかないよ」

「!!彩里先輩…」

安どの表情を浮かべる蓮の目じりには、透明な雫が一滴たたずんでいた。
そんな後輩の顔を見て、彩里はいつもの調子を少しだけ取り戻し、くすっと笑った。

「そんなことより、名前」

「へ?」

彩里に言われて、蓮は何のことかわからず困惑した。

「呼び捨てになってんじゃん、あの後輩のこと」

「!!」

蓮はうつむいて、顔を赤く染めた。

「あはは!まったく、素直だね君は」

そう言って彩里は蓮の頭を優しくなでてあげた。

日が傾き始める静かな外。
彩里は、その蓮をなでる手に、「お幸せに」とあたたかく願いを込めた。
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