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12.淡い恋心(クロード視点)
しおりを挟むハーブス伯爵家から帰る馬車の中で考える。
(何が、"ミレイユ嬢なら信頼できるからこの話をしに来た"だ…。)
ふふっと、
自分で自分を嘲笑する。
私はクロード・タバリア。
侯爵家の嫡男だ。
学園を去年卒業した。
しかし、あと一年遅く産まれていれば…と何度そう思っただろうか。
あれは2年生になった時にあった、在学生として参加した入学式の時の事だ。
新入生の代表挨拶で、壇上に上がる1人の令嬢に目を奪われた。
代表の挨拶は、例年入学試験の主席がする。
ストレートに下ろされた青色がかった銀髪、エメラルドのような瞳、どこか儚げで恐ろしい程美しいその姿に一目で心奪われてしまった。
「新入生代表、ミレイユ・ハーブスです。この度は………」
(ミレイユ嬢か………)
思わず名前を知る事ができて、更に胸は高鳴った。
その後の学園生活でも、ミレイユ嬢の名前はよく目にした。
試験はいつもトップでよく名前を張り出されていたし、学年代表ディベートも素晴らしいものだった。
私はいつの間にか目でミレイユ嬢を追ってしまうようになっていた。
しかし程なくしてミレイユ嬢が侯爵家のガスパルと婚約した事を知った。
(同じ侯爵家なら……。私がミレイユ嬢と婚約したかった…。)
しかし、貴族間の派閥などの理由により自由な婚約結婚はできない事など、とうの昔から理解している。
胸の痛みを感じつつも、
この想いはこれからもずっと自分の中にだけ秘めておこう。
ミレイユ嬢を見つめつつ、始まってもいない恋に終わりを告げたのだった。
そしてそれから半年程経ち、ある日事件が起きた。
ある夜会の帰りに、父が何者かに襲われたのだ。
馬車の前に突然現れた者達に斬りつけられたらしい。
たまたまそこを通りかかったダーソン子爵とその護衛達が、怪我をしつつも何者かを追い払い、父は事なきを得た。
父は数日後に、ダーソン子爵の見舞いへ行った。
子爵は肩を斬りつけられたものの傷自体は浅く、すぐ治るとの事だったが父は責任を感じ、何でも望みを叶えてやると言った。
すると、子爵は娘のリリアンと私の婚約を望んだのだった。
"何でも望みを叶えると言ったのだ。一度口にした事は覆す事はしない"
と、父はその話を了承した。
私も、初めは父を助けたダーソン子爵に感謝をした。
しかし、婚約相手のダーソン子爵の娘、リリアンを見て驚いた。
私には知らない内にファンクラブ(私はもちろん非公認…)というものができていた。
同じ学園に通う1つ下のリリアンは、そのファンクラブの中でもいつも私に熱心に付き纏い、断っても断っても執拗に私を追いかけ回していた、いわばストーカーのような存在だったからだ。
なるべく関わらないようにしていた為、名前すら知らなかったその"リリアン"という令嬢は、ダーソン子爵の隣でウットリと私を見つめている。
私はその何とも気味の悪い笑顔を見て背筋に冷たいものが走った。
証拠は無い。
証拠は無いが、確信に近いものがある。
リリアンは私を手に入れる為に、何かをした。
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