(完結)相談女とお幸せに!(なれるものならの話ですけども。)

ちゃむふー

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29.祝賀会3(エミール視点)

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(はあ…。せっかくミレイユ様が話しかけてくださったのにその場から離れるなんて失礼だったかしら…。)


しかし、自分にはあのままあの場にいる事は出来なかった。


人がいない会場の端の壁にもたれかかりながら、水を飲む。

(それにしても私も馬鹿にされたものね。婚約解消しておいて許して貰ったら無かった事にできると思われていただなんて…。)

自分のこれまでを否定された気分にもなるが、喉を通る冷たい水が心を落ち着かせてくれた。


「お隣よろしいでしょうか?」


気配無く近付かれ、ドキッとして顔をあげる。


「……リュカ様。」


そこにはリュカ様がいた。


「お隣失礼します。」


リュカ様がそう言ってスパークリングワインのような飲み物を差し出す。


しかし正直お酒は苦手だ。
そう思って少し躊躇してしまうと、それを察したかのようなリュカ様は、


「大丈夫。これはアルコールの入っていないものをお願いしましたから。」


そう言って私の手に握らせた。
そう言われれば…と口をつける。


「……美味しい…。」


しゅわしゅわっとして喉越しが良く、フルーティな味わいがとても美味しい。
思わず口を抑える。


「良かった、ちょっと笑ってくれた。」


そう言うリュカ様と目が合い、心がドキッとする。


「ありがとうございます。気を遣っていただいて…。その…先程は恥ずかしい場面をお見せしてすみません…。」


「恥ずかしい…?あぁ、確かにジョセフ殿は謝れば自分の過ちが全て無かった事にできると思っていた所は恥ずかしい事だったかもしれません。」


ははっとリュカ様が笑う。


「でも…エミール嬢は…。あんな事があったにも関わらず、常に相手の事も考えていた。改めて貴女は芯のある素晴らしい女性であると感じました。」


「そ、そんな…。買い被りすぎですわ…。」

思わず火照る頬を両手で包む。


「買い被ってなんていない。エミール嬢は魅力的な女性です。だから…私も貴女に惹かれたんです。」


「そんな……、って……えっ?惹かれた……?えっ…?」


貴族はいつでも冷静沈着で落ち着いて行動しなければならない……そうやって幼い頃から教えられて来た。

しかしそのような教えが全て飛んでいってしまう程今私は動揺している。


(惹かれるって…?深い意味では無いわよね…?いやでもリュカ様はこのような事を意味なく言う方では……。)


私が混乱していると、その様子を見たリュカ様が微笑みながら、しかしその目は真剣そのもので…。


グラスをテーブルの上に置いたかと思うと私の前に跪き、私の前に手を差し出した。


「貴女に出逢った時から、貴女に惹かれずにはいられませんでした。どうか、私と結婚してくださいませんか?」


想像もしていなかった言葉に、うまく言葉が出てこない。


先程あんな事があったのに、リュカ様の求婚を心から喜んでいる自分がいる…。


自分の気持ちに正直でありたい。


そう思い、リュカ様の手を取る。


「……はい。よろしくお願い致します。」


その瞬間リュカ様の顔に笑顔が溢れ、私の心がキュッとなる。


「本当ですか?嬉しいな…。今日、絶対にエミール嬢に自分の思いを伝えようと決めていました。しかし…先程あんな事があって…。伝えるべきでは無いかもしれないとも思ったのですが、言わなければ必ず後悔すると思い…。伝えてしまいました。」


「私も、あのような事があった後ですが、自分の気持ちに正直でありたいと思い、お返事させて頂きました…。」


「ははっ!私たちは似た者同士なのかもしれませんね。」


この、クシャッとなる笑顔が誰よりも素敵だ。


「エミール嬢。必ず貴女を幸せにしますから。」


「…はい。よろしくお願い致します!」



祝賀会で会場が盛り上がる中、2人でひっそりと微笑み合うのだった。




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