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7.歓迎
しおりを挟む馬車が止まり、降り立つ。
久しぶりの侯爵家だ。
半年しか経っていないのに、なんだか寂しい雰囲気になったのは気のせいだろうか。
「フィオナが出て行って、屋敷の者は皆悲しんでいたよ。さあ、フィオナが顔を見せるときっと喜ぶだろう。」
屋敷へ入ると、先に遣いをやったからか全員が出迎えてくれた。
「フィオナ様…!!お帰りなさい!!」
「皆さま、ご無沙汰していました…。その、また会う機会があると思いますのでよろしくお願いします。あら?侍女のエリアナの姿が見えませんね…。」
エリアナは、私がここにいた時の私付きの侍女で、歳も近くとても仲が良かった。
「エリアナは、別宅の方へ行って貰ったよ。フィオナもその方が嬉しいと思ってね。」
ニケ様が言う。
「そうですよー!エリアナずるいって、皆で言っていたんです。ニケ様が別宅へ使用人を何人か連れて行かれるという話になった時、皆志願していましたわ。」
使用人達が笑いながら教えてくれた。
「まぁ、ありがとうございます。」
「さあさあ、旦那様にも顔を見せてあげてください。フィオナ様が出て行かれてとても気落ちされていましたから…。」
ニケ様が私の顔を見て頷き、エスコートしてくださった。
扉をノックする。
「父上。ニケです。」
「おお、ニケ!入れ!」
扉を開くと、一回り小さくなったお義父様がいた。
「フィオナ…!!あぁ、もっとこっちに来てくれ。元気そうで良かった…。フィオナ、ゴードンの奴が本当に申し訳無かった…!私は床に伏せているだけで何もできなかった…!助けてやれず申し訳無かった。」
「お義父様、謝って貰うために会いに来たのではありませんわ。お義父様のお元気な姿を見たくて来たのですから!そんな悲しい顔をなさらないでください。」
「フィオナ…。ありがとう。ニケ…!何があってもフィオナを幸せにするんだ。良いな?」
「父上、もちろんです。」
「あぁ。ニケが長男だったら良かったと何度思った事か…。私にできる事なら何でもしよう。いつでも相談してくれ。」
この国では長らく、家継問題が深刻だった。家継問題で兄弟同士の争いが絶えず、この国が滅びるかもしれないという所まで事態は深刻化した。
そのため、この国の法律で余程の理由が無い限り、長男が家を継ぐ事が決まりになっている。
「はい。ありがとうございます。父上もゆっくり休んでください。今日はこれで失礼します。」
礼をして部屋を出る。
「フィオナ、父に顔を見せてくれてありがとう。ここの屋敷に来るのは嫌な思い出も思い出されて辛くは無いか…?」
「いいえ、ゴードン様はほとんど屋敷におらず顔も合わせませんでしたし、お義父様は私を大切にしてくれ、屋敷の者は皆私によくしてくれたので楽しい思い出ばかりですわ。」
「それならば良かった。さあ、別宅の方へ向かおう。」
そう話をしている時に、
「あっ!!ニケ様ぁ~~~!!」
聞き覚えのある猫撫で声が聞こえてきた。
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