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20.後門の狼
先日神殿長が神殿に戻ったと連絡があり、いよいよ今日、1ヶ月になったフルールの聖女検証がされる日だ。
当たり前だが、ほとんど外出した事の無いフルールの初めての外出が聖女検証になるなんて…。
聖女検証の日だというのに、ニケ様は皇子護衛の仕事らしい。
皇子も聖女検証の場にいるそうなので一緒には立ち会えはするらしいが、少し寂しい気持ちもある。
神官に案内され、神殿へ向かう。元気になった義父も一緒にだ。
「こちらでお待ちください。」
そう言われ、神殿の中にある少し囲われて窓から様子が見える場所へ通される。
窓から覗くと、神殿入り口付近に見覚えのある顔を見つけた。
マーガレットとゴードンだ。
今日の聖女検証に来たのだろうか。
少し嫌悪感を感じるものの、すやすやと腕の中で眠る我が子を見て癒される。
その時、
「神殿長、御祭壇です!」
神殿長が祭壇へ登る。
そして、周りの者が頭を下げた。
「陛下、皇后、皇子のおなーりーー!!」
ニケ様も皇子の側に仕えている。
「ただ今から、聖女の検証を始める。では、ゴードン・サンダーム!マーガレット・サンダーム!こちらへ!!」
「はいっ!」
「はい…。」
ゴードンは鼻の穴を膨らませ、嬉々として立ち上がる。
マーガレットは明らかに怯えて、立っているのが精一杯な様だ。
「神殿長。この子が聖女候補でございます。」
神官が神殿長に子どもを渡す。
明らかに神殿長の顔色が変わる。
「これは……。神や皇族への冒涜か…!?どういうつもりか分からぬが…まぁ良い。聖女で有れば、この女神像の前へ立てば光照らされ、祝福をいただけるはずだ。」
そう言って、神殿長が子どもを抱いたまま、女神像の前へ立つ。
が、何も起こらない。
「ど、どういう事だ…!?」
ゴードンが慌て始める。
「検証の結果、この子は聖女では無い事が証明された。この事をゴードン、マーガレット。どのように説明するのか。聖女の名を名乗り偽った事…大罪にあたいする!!」
「こ、これは何かの間違いです!!もう一度!もう一度検証してください!!」
ゴードンが慌てて言う。
その時、
「陛下、神殿長。私の護衛騎士の発言を許して貰えませんか?」
皇子が口を開いた。
「良かろう。」
陛下が発言を促す。
すると、皇子の隣にいたニケ様が一歩前へ踏み出す。
(ニケ様っ!?)
「陛下、神殿長。僭越ながら発言させて頂きます。そこにいる子どもは、聖女でも侯爵家の子どもでもありません。マーガレットと誰か分からぬ男との子どもでございます。髪色や目の色から、その事がバレる事を恐れたマーガレットが聖女と偽ったのです。」
「ニッニケ!!何だと!?それは本当か!?」
ゴードンが慌てふためく。
「ふむ。マーガレットやら。それは真か?」
陛下が問う。
「そっそれはっっそのっっえと…。」
マーガレットは答えられずガタガタと震えるだけだ。
「額の十字もマーガレット自ら描いたもので、検証される前に子どもを殺してしまおうと企んでいたのです。」
「ちっ違いますわっ!!そのっこの子の額に突然刻印が浮かび上がり、てっきり聖女と思っただけですっ!」
「メラニー。証言を。」
ニケ様が発言を促す。
「はい。メラニーと申します。その子の乳母でございます。マーガレット様は産後、子どもに興味を示さず名前も付けなかったので、"ノエル様"と私がつけました。ところがノエル様が3ヶ月になった頃突然額にペンで十字の印を描き、その印に触れてはいけないと言われました。湯浴みなどで印が消えてしまった時にはマーガレット様に強く叱られました。」
「ほう。それならやはりマーガレットは子どもが聖女では無い事を知っていて、偽っていたという事になるな。」
神殿長が言う。
「ち、ちがっ…。」
「はい。そもそも聖女である事はあり得ません。だってノエル様は……。男の子ですもの…。」
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