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大切

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リリーと姉の話題で盛り上がった後
馬車に揺られて帰りながら
私は考える


姉はなぜ、私に何でもくれるのか

「物欲しそうな顔してるのかしら……」

「シャーロン?」

無意識に呟いた言葉に姉が反応し、私は姉を見つめた。

「どうしたの?」

「お姉様はどうして私に何でも下さるの?」

「あげたいからよ」

シンプルな答えである。

「じゃあ、私が殿下と結婚して、と言ったら
お姉様は嫁ぐの?」

「……シャーロン、貴女私が嫌い?」

私の質問に姉の瞳にじわりと涙が浮かぶ

「嫌いなわけないわ!!」

「だって、出ていけって……うう」

「違っ!!幸せになって欲しいのよ!
出ていけなんて思ってないわ!!」

「私の幸せは貴女が幸せになる事よシャーロン」

私が差し出したハンカチで涙を拭いながら
答える姉に私まで胸がいっぱいになる

「お姉様……」

「シャーロン……っ!!」

馬車の中で抱きしめ合う私たち
あぁ、私も独身を貫いて一生二人で生きていくの有りかしら、何て考えが浮かぶ

「………あの、到着致しましたが」

「空気読みなさいよ!!」

「ほんとに!台無しだわっ!!」

「ひイイっ申し訳ありません!!!」



シャーロンは自覚していない
自分も中々姉に対して拗らせて居ることを



****






「返事は来たか?」


シンプルだが1級品ばかりで
揃えられた部屋は主のセンスと気品を感じさせる


ルイス・ハミルトン

ハミルトン王国
第一王子で、サーシャとシャーロンの従兄弟でもある
サラサラ金の髪と深い海の様な青い瞳
王子としての威厳と聡明さを持つ
優しい彼には悩みも多い。

「それが、どうも……」

宰相が渋い顔をするのを見て
断られたのだろうと察する

「サーシャだからな。シャーロンを選べば
協力してくれたのだろうが」

「アルベル公爵も困って居るようです」

「叔父上も大変だ」

私は別に、サーシャを愛している訳では無い
ただ、力のあるサーシャが国から出てい来やしないかと貴族達が恐れているから
私との縁談を父が打診したのだ

確かに、サーシャを失うのは痛いが
一体それでは何の為に魔道士団と騎士団に
税金をかけているのか解らない

1人の少女におんぶにだっこ等、恥ずかしくは無いのだろうか

父と叔父上はとても仲が良く、アルベル公爵家が
王族を裏切るとは思っていないが
それを良く思ってない奴が居るのも確かだ

「ダグラスを呼んでくれ」

「第3騎士団団長のですか?」

「ああ。俺よりもサーシャに相応しい気がする」

そもそも、国に繋ぎ止める=王族との結婚が
間違いなのではないか

「殿下より相応しい方など!!」

「卑下しているのではない。サーシャは
守りたい物がはっきりしている。だからこそ強い人間に惹かれるはずだ」

「……殿下」

サーシャは従姉妹で魔力が発動した原因を
私も知っている

「父には私から話そう。これはサーシャと私、互いの為だ。」

自分が弱いとはこれっぽっちも思っていないが
サーシャに椅子に座って国を守れというのは
無理がある

大切な従姉妹だ

出来れば幸せになってもらいたい。

ダグラス・リードン
異例の若さで騎士団長まで登り詰めた
その男はきっとサーシャの支えになるはずだ




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