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敵は必ずいる

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第3騎士団が南方の地に出た魔物の討伐に
成功したと連絡が入ったのはつい先日の事。



遂に、サーシャリア・アルベル無しで
第3騎士団が成果を出した。


今回はサーシャリアには王都に残るようにと
陛下から命が下され
彼女は王都でのんびりしていたらしい。

第一騎士団や第二騎士団と共に訓練もしたが
『遅い。魔物が相手なら死んでますわよ』
と言って、部下のプライドをズタボロにしてくれた。

第三騎士団と共に討伐に出向く事もある第二騎士団はまだマシだが普段王城を守っている
第一騎士団への扱きは凄まじく容赦がなかった。

飛龍を相手にしているがの如く
ビュンビュン飛んで動き回り、騎士達がやられていき
本物の弓を使えと指示してきて
公女様に使えるわけがないと説得に精神をやられ
散々だった…………

マーク・ガーランド第一騎士団長は
二度と御免だ。と強く思う。

だが、第3騎士団の功績が面白くないのも事実

サーシャリア無しで魔物討伐が出来るという事は
出来ない第一騎士団よりも優れているということ
ルイス殿下は今回の事で、第3騎士団に褒美を取らせるとも……

なぜそこまで、あの少女を討伐に行かせたくないのかが解らない。
実力があるのだから使えるものは使えばいいでは無いか。
本人が嫌がっているわけでもあるまいし。

血を見るのが好きなんだろうに


このままでは、我々も魔物の討伐に駆り出されかねん。
それだけは遠慮したい。


大体、今まで第3騎士団とばかりあの女サーシャが訓練してきたんだから実力に差が出て当然だろう。

マークは、ニヤリと笑う

そうか、第3騎士団にはもう、公女は要らないんだ。
ならば、全ての遠征をアイツら第3騎士団だけに行かせれば良い。

今いる兵が、_ダグラス・リードンが負傷すれば、我々の地位は脅かされはしない。
















「本気度が足りない。」


学園の裏庭にて、シャーロンがサンドイッチを
ルイスに渡しながら言う。

いつもはリリーと食べている昼食
今日は彼女が風邪でお休みなので裏庭にやってきた
そしたら何時かと同じようにルイス殿下に会った。


「……本気度?」

「ええ、お姉様が」

ルイスもシャーロンも、何故姉は第3騎士団と訓練しているのだろうと不思議に思っていた。
ダグラスとの縁談が持ち上がる前から
彼女は第3騎士団に良く入り浸っていた

もしかして……と乙女な妄想を膨らませた
シャーロン

姉は密かにダグラス・リードン騎士団長を……と
思ったが
昨晩の姉からの返答は全く違った。

『本気度が足りない』

第一騎士団、第二騎士団は貴族の子息が多く
後がない者も魔物に襲われた経験がある者も少ない。
対して、第3騎士団は平民が多い。
大切な人を魔物に傷付けられ、失った者も多かった。

サーシャは第1、第2騎士団の時にもだが、第3騎士団の時にも真剣と弓矢を打つように指示した。
動かない的を狙う練習も大事だが、目が慣れている事も戦闘に置いて重要だからだ。

最初は躊躇っていたが

『魔物は躊躇いません。何故なら殺す一択だから』

この一言で彼らは目の色を変えた。

『あなた方程度の矢も剣も、当たるわけないでしょう?怪我をさせて頂きたいものですわ』

その時

『本当に、よろしいのですね?公女様』

当時、副団長だったダグラスがサーシャに問いかけた

『ええ。さあ、早く準備を
言っときますが、魔物より私の方が強いですから
と戦っていると思わない方が良いですわよ』


ニコッとサーシャが微笑み、開始1分で騎士達も団長も片付けた。

『もう1回……もう1回、お願いします!!』

1人の兵が身体を震わせながら言った時に__



「ここを鍛えようと決めた、とお姉様が」

他の騎士団はどうしてもサーシャの身分故に攻撃をしてこなかった。
どちらも正しい判断なのだろう
だから、サーシャの価値観に従い
サーシャは第3騎士団のみ見込みがあると判断したのだ。

「……そうか」

ルイスはシャーロンの話を聞いて
目を閉じて考える

希望者を募る必要がありそうだ。

本気で戦いたくとも上官に逆らえないから
我慢している騎士も居るはずだ。

「感謝する、シャーロン。」

「へ?」

「ああ、我々も負けていられないからね」

「……お役に立てたなら光栄です…」


何にだろうか?姉に?まさか!!と
思いながら、サンドイッチを齧るのだった。


    
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